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読書感想 よしもとばなな 王国 その3 ひみつの花園

昨日本棚を整理していたら、懐かしい本が出てきました。
よしもとばななさんの「王国その3」です。
王国は、その1からその4までの四部作で構成されています。なかでも私はその3が大好きです。昔、「キッチン」とともに本当に何度何度も繰り返し読みましたねえ……。

王国はその3は、失恋のお話です。
したがって失恋したときに読むとマジもんの痛みをヒリヒリと感じ取ることが出来ます。一人称で綴られる心理描写が秀逸なのです。

 失恋したときの自己肯定感が下がっている心模様や、心に穴が空いてしまったような虚無感など、そういった扱いにくいものを本当にきちんと文章で表現してくれています。
素晴らしいと思います。

 どうやったら、こんなふうに心にピタッとくっつくような(寄り添うような)言葉が出てくるのだろう?と思います。

 これは論理的思考から出てくるものではなくて、感情から湧き出た生(なま)の言葉なのだろうな、と思います。

 失恋なんざ、もうしたくても出来ないですよね。その時は辛くても、おばちゃんになれば良い思い出になるんですね。笑

 胸が痛くなるのは、恋している時だけです。もう胸の痛みなんてすっかり忘れてしまいましたが、この本を再読したら、なんとなく胸のあたりが苦しくなりました。

 こういった恋愛小説って、たとえその人の経験から導き出されたものであっても、真っ最中の経過報告ではなくて事後報告の場合、
どうしても筆の勢いが弱くなってしまうと思うのですよ。でも、まさしく今その経験をしているかのようなみずみずしい文章を書ける作家さんて、本当に凄いです。村上春樹さんとかもそのタイプですよね。

 もし失恋することがあったら、ぜひ読んでみてくださいね。麻痺した心を、ほんのり温めてくれます。

失恋して、誰も本当の自分をわかってくれない、と思うことがありますよね。
でも、本の世界には自分と同じような想いを抱えた人間が確実に存在します。
ああ、自分だけではないのだな、と思います。
すると、ほんのいっときだけだとしても、自分の世界は救われるのです。
自分の心の奥の思いが文章にあらわされているのを発見した時、ほんの少しかもしれないですが自分の世界は救われるのです。

何故読書をするかというと、現実逃避したいのです。(わたしはね)
読書はこころの栄養なのです。

なんか自分の意見が唯我独尊を極めている気がして恥ずかしくなってきたので、このへんにしておきます。

今日も忙しかったけれども平和な一日でした。明日もどうか平和でありますように。





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