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読書感想 漫画版風の谷のナウシカ③

ナウシカは、人種や宗教の垣根を越えて、目の前の命を救うために懸命に動きます。
そこには損得勘定は全く存在しません。ナウシカは、王蟲や腐海を含めたありとあらゆる生命の尊さを魂の底から理解しているように思います。
そんな姿が、血なまぐさい戦場でも周囲の人々に希望を与え、やがて神のように崇められていきます。

最終的に、ナウシカは巨神兵を伴い土鬼の首都にあるシュワの墓所という場所にたどり着きます。

このシュワの墓所というのは、なんでしょうね……先の巨大産業文明が作った「人類入れ代わり計画の要」みたいなもんなんですかね?


以下は私の考察なので、間違っていたらごめんなさい。

崩壊した巨大産業文明は、生命体を意のままに作り変える技術すら持っていたのですね。

火の7日間という最終戦争の前、人類はもうどうにもならない段階まできていたようです。

「数百億の人間が生き残るためにどんなことでもする世界だ 有毒の大気 凶暴な太陽光 枯渇した大地 次々と生まれる新しい病気 おびただしい死 ありとあらゆる宗教 ありとあらゆる正義 ありとあらゆる利害 調停のために神まで造ってしまった」とあります。 

神とは、巨神兵のようです。
つまり、世界中で戦争が起こり、どうにも止められなくなったとき、超強力な破壊力を持つ存在が調停しない限り、誰も言うことを聞かないという判断がくだされ、やむなく巨神兵という世界を簡単に滅ぼすような生物兵器が作られたということなんですかね。

核兵器のような力を持つ生命体ってことですよね……確かに、そのくらいの威力を持つ存在が「もう戦争はやめろ」と脅さない限り、人々は言うことを聞かなかったということですね。

先の巨大産業文明は、腐海という人工の生態系を浄化装置として作り出し、浄化の際に作り出される瘴気にある程度は耐えられるよう人間すら作り変え(遺伝子操作)たのですね。

そして、何千年かたったのち、浄化が終わった頃をみはからって、人類を瘴気がなくても生きていける、二度と戦争など起こさない穏やかに種族に作り変えるよう「シュワの墓所」にはプログラミングされているみたいです。

これ30年前に書かれた漫画ですよ?
すごくないですか??


今読むと、十分有り得そうですよね。
絵空事とは思えない、私達が辿る可能性のある未来のひとつのように思えます。


そして、物語のクライマックス。
ナウシカはシュワの墓所を巨神兵を使って破壊してしまうのです!!!

墓所の主は、自分の存在がないと人類は滅亡してしまうと主張します。
一方ナウシカは、人間は清浄と汚濁をあわせ持つ存在であって、清浄なだけの人間など意味がない、苦しくても生き抜いて、それでも滅びるのならしょうがないじゃないか、みたいなことを主張します。

これ、どちらも正しいと思います。正しいですが……が。


私はシュワの墓所の主張に賛成するかもしれません。
みんながみんな、ナウシカのようにはなれないと思うのです。
 

この作品は、まず舞台設定がすさまじく緻密に練り上げられていると思います。
そして、物語も人物描写も、素晴らしいですよね。

1000年後の人間が、どのように生活しているかなんて、科学者などごくひと握りの人間を除いて、普段考えないと思うのです。
みんな、自分と家族を養うことで精一杯だと思うのです。


ですが、ほんのちょっと気をつけるだけでいいと私は思うのです。今自分に出来る、ほんの少しのこと。
例えば水を無駄遣いしないとか、節電を心がけるとか、ゴミはきちんと分別するとか、
そういう当たり前のことを意識することから始まると思います。
ある日突然、きれいな水が水道から出なくなったり、燃料代が爆上がりしたり、ゴミが簡単に出せなくなったりする前に。
 

今の時代、「漫画版風の谷のナウシカ」は私達に大切なことを投げかけてくれていると思いました。

最後までお読みくださり本当にありがとうございました。










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