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読書感想 小泉八雲 術数

小泉八雲は、「耳なし芳一の話」、「雪女」を書いた作家ですが、日本生まれではありません。
Wikipediaによると、
小泉八雲は現在のギリシャで生まれ、世界各国を旅して紀行文を書いた新聞記者だそうです。日本人女性と結婚し、帰化したのですね。もとの名前は、パトリック、カディオ、ハーンだそうです。

よって、この作品も、耳なし芳一も雪女も、もともとは英語で書かれています。それをほかの人間が日本語に翻訳したものが出回っているということなのですね。

なんていうか、不思議な感覚を覚えますよね。こんなゴリゴリのジャパニーズホラーが英語で書いてあるなんて。翻訳者の腕の見せどころですね。

さて、こちらの「術数」ですが、とても短い小説です。短いけれども、これはどういうことなのだろう……と作者に問い詰めてみたくなるような、ドスンという鈍い痛み(のようなもの)が胸に迫ってくる感じの作品です。
胸に突き刺さるような痛みではなくて、鈍い痛みです。鈍痛です。この感覚が、わたし的にはたまらないのです。(?)
短いのに、妙に存在感があるなあ、と思いました。

罪人が侍に処刑されるお話です。
罪人は、後ろ手に縛られながら、
「自分が罪を犯したのは生まれつき愚鈍な性質が備わっているせいであるのに、処刑されるなんてひどい」と言います。さらに、侍に向かって復讐してやると言い放ちます。
「お前の訴えはわかりにくい、お前の恨みの証拠に、首を落としたあとに庭の飛石を噛んでみせろ」
と侍は言い返します。
で、処刑直後、ほんとに生首は飛石をかんだのです……。

 そのあと、怪奇現象が多発するのがお決まりだと思うのですが、この作品は何も起こらずアッサリと終わります。

 侍は、馬鹿で愚鈍な人間は、飛石を噛むという目の前の復讐に全集中すれば、それを果たしたと同時に力尽きて自分への復讐を忘れちゃうだろう、と見越して、そんなことを言ったのか?
と思いました。
つまり飛石をかんでみせろ、と言ったのは罪人への情けだったのか?とも思ったのですが、それはわたしの考え過ぎ?

 大昔は冤罪も多かったようですし、「末代まで祟ってやる!」みたいなお話は多いですね。根が深いですね。 
 
 実際に処刑される直前なんて、ましてや首を落とされる直前なんて、
恐怖で歯がガチガチいうと思いますし、体も縮こまると思いますし、
よっぽど肝が据わった人間か、もしくは「末代まで祟ってやる」、みたいな激しい念にかられた状態でない限り、まともな言葉を発することなんて出来ないと思うのですね。 

処刑直前の人間が発する言霊は、相当な威力を持っていると想像します。
それを受け止める人間も、相当な胆力を持っていないとやられちゃうんだろうな。 

死ぬ直前に何かに対して激しい恨みや執着を持つと、死後もその感情に支配されてしまうらしいので、日頃からやりたいことはやろう、と思う今日この頃です。

 だってなんだかんだいっても今の日本は平和だもの。そのことに感謝して毎日楽しく過ごしたいですね。










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