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渡邉有
2023年12月24日 15:13
数え四つになる子をおぶっている。やっと生まれた長男であったが、この子は今だ言葉を喋らず、おそらくは唖なのだろうと舅や姑に罵られていた。その子の口元にはほくろがあった。 五位鷺の鳴き声が響く畦道を子守唄を口ずさみながら歩いた。茜色に染まったこの虚しい空の色合いを私は生涯忘れないだろう。 雑木林へ入り、草葉の生い茂る難路をひたすら進む。すると道祖神の祀られているひらけたところへ出た。道祖神の隣
2023年12月19日 16:23
触らぬ神に祟りなし、という言葉を時折耳にするが、まさしくその通りだと思う。一度始めた信仰は途中で放棄することが出来ない。たとえそれが先祖が祀った神であったとしても、自分たちが意思を持って始めたものではなかったとしても、一度始めたら永遠に身も心も捧げなければならない。何故ならば神を粗末に扱うと障りがあるからだ。だから僕の一族は若い娘を生贄に捧げ続けなければならなかった。そうしないとこっちがやられて
2023年12月18日 14:12
※この作品は夏目漱石の「永日小品」の中の「蛇」の二次創作です。 僕は時々瞼の裏に焰が見える。目を閉じると、朱とも橙ともつかない火影が絶えず揺らめいている。その焰はちっとも熱くない。幻想的な色彩を帯びながら、静かに、規則的に、冷酷に、揺らめいている。 これは一体何なのだろう。 僕の眼底に刻まれたその焰は、間違いなく僕に何かを告げている。次はお前の番だと警告している。僕はその焰の色彩を感じる