【読書記録】夜明けのすべて/瀬尾まいこ
こんにちは!
本日は、つい最近読んだこちらの作品をご紹介します。
PMSを抱える女の子と、パニック障害を抱えるその同僚の男の子の物語。
瀬尾まいこさんは好きな作家さんの1人でもあり、今回は映画化をきっかけに先に原作に触れておきたいと、手にとりました。
経験あるから共感できる?と思いきや・・・
PMS(=月経前症候群)。
程度こそ人によりますが、私も生理前には訳もなくイライラすることはよくあるので、同じ女性として美紗の気持ちには共感できるんじゃないかな、と読み始めました。
ところが、美紗のPMSは異常なほどに激しい。
美紗の場合、生理が始まった頃からこのPMSに悩まされ、母親と一緒にあらゆる手を尽くしてきても、それでも自分でのコントロールが利かず、職場の上司に対してでさえも感情が爆発してしまう様子に、私自身のそれとは程度が違い過ぎて言葉を失いました。
こんなに重度のPMSがあるのだろうかと思ったのでした。
また同様に、パニック障害を抱える山添の苦しみも、壮絶なものでした。
時と場合によって、自分の体が自分でコントロールができない、こんなにも生きづらいことはないでしょう。
友情でも愛情でもない、2人の不思議な関係性
小さな会社で働く、同じような体の悩みを抱えた同世代の男女。
自然と距離が縮まる2人ですが、この2人の関係が非常に微妙なんです。
お互いに、お互いのことを「友達」でも「恋人」でもないと思っている。
でもお互いの家を行き来し、美紗の家で映画のサントラを聴いて過ごしたり、美紗が入院したときは山添が毎日お見舞いへ駆けつけたりと、親密であることには変わりないと思うんです。
このとき読者として期待してしまうことの一つとして、この2人の間に「友情」が生まれ、そして「恋愛」に発展していくことがあると思います。
でも、この2人はそうならない。
そのとき気付いたのは、
男女(に限らず全て)の人間関係って、「友達」や「恋人」など、一言でくくれるような、限られたものだけではないのかもしれない。
お互いを必要としているけど友達でも恋人でもない、美紗と山添のような、こんな人間関係も、立派にこの世には存在するのかもしれませんね。
こう思い直してしまうほど、この物語では2人の不思議な関係が成立していたんです。
夜明けのように、人生は苦しみと救いの繰り返しで続いていく
PMSもパニック障害も、すぐに完治が見込めるようなものではなく、彼らが抱えたものとの付き合いも、この先ずっと続いていくんだと思います。
だけど、自分のことをよく分かってくれている誰かがいるだけで、ちょっとだけ人生が楽になる。
1人で塞ぎ込んで生きていたらきっと、今の自分でもちょっと楽に生きられる方法があることに、気付けないのかもしれません。
自分がダメなとき、支えてくれる誰かがいることにも、
こんな自分が誰かを支えられるかもしれないことにも。
日没と夜明けのように、悪くなって、ちょっとだけ良くなってを繰り返して。そんな人生で十分じゃないか。
面倒だと思ってしまっても、それでも誰かと関わり合いを繰り返してしまうのも、また素晴らしいことだと思えます。
生きづらさを抱えている人には、背中を押すでもなく勇気を与えるでもなく、ただ隣に寄り添ってくれるような、そんな作品でした。
映画化されている作品なので、美紗と山添の関係が映像ではどのように描写されているのか気になります…!
とても読みやすくておすすめの作品です。
気になった方はぜひ、手に取ってみてはいかがでしょうか。
読んだことのある方は、コメント欄でぜひ感想を教えていただけるとうれしいです^^
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