前回に続き、本屋大賞ノミネート作からのご紹介です。
今回ご紹介する作品はこちら。
主人公は消化器内科医の「マチ先生」こと雄町哲朗。
かつては大学病院で難しい症例をこなし、医師としては乗りに乗っていた30代で大学病院を退職し、移った先は終末期の患者を多く受け入れる「原田病院」。
原田病院の患者に対し、彼は一体どう向き合っているのか――。
『神様のカルテ』シリーズに続く、現役の医師が描く、温かみに包まれた医療物語です。
それぞれの立場で医療と向かい合う二人の医師
かつては大学病院で、その確かな技術力で多くの患者の命を救ってきたマチ先生。終末期の患者を多く抱える原田病院でも、日々戸惑いながら「命」と向き合っていました。
「無理はしなくてもいい」「頑張らなくてもいい」
だけど、あまり急がなくてもいい。
迷いながらも、それでも彼が患者にかける言葉の数々からは、相手への配慮が伺えて、医師である以前の、一人の人間としての素晴らしさを感じます。
その対照的な存在として登場する、大学病院時代の同僚、花垣。
彼もまた医師としては素晴らしい腕を持っていて、大学病院で多くの症例を重ね、近年の医療技術の発展に大きく貢献する人物です。
大学病院という大きく複雑な組織に長年身を置きながらも、彼の患者と向き合う姿勢もまた素晴らしい。
花垣もまた、彼なりに「命」と真正面から向き合っていることができました。マチ先生に引けを取らない素晴らしい医療従事者です。
この二人の他にも、目の前の命と向き合い続ける素晴らしい医療従事者が数多く登場する、この物語。
命を扱うお仕事なので「完璧」を追求されることは当然。
だけど「医師」という肩書きを持つだけで、彼らもまた一人の人間で、戸惑いながら日々「命」と向き合い続けているんですよね。
現役医師である著者による、医療物語
『神様のカルテ』シリーズで有名な同著者。
彼自身もまた、医療の現場に立つ人物であるということで、彼の見たこと、経験したことに基づいて、この作品が生まれたのではないでしょうか。
この本の刊行にあたり、作者から寄せられたメッセージが私はとても心に残っています。
このメッセージに込められた思いもきっと、決して綺麗事なんかではなく、医師である彼の率直な声だと、私は受け取りました。
マチ先生の感じる戸惑いも、迷いも、信念も、夏川さんの体験と重なっていることでしょう。
ぜひ多くの人に、夏川さんの思いが届いてくれるといいな…
また一つ、すばらしい作品に出会いました。
ありがとう、本屋大賞!
まだ本屋大賞ノミネート作全て読了したわけではないのですが、より多くの人に読んでほしい、大賞を獲ってほしい、推し作品です!
こちらの作品、気になった方はぜひ手に取ってみてくださいね。
読んだことのある方は、コメントで感想を教えていただけると嬉しいです^^