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【読書記録】なれのはて/加藤シゲアキ

3月一冊目に読了した本を早速ご紹介します!
今回の作品、本当にすごすぎて・・・読後の感想冷めやらぬ間に、読書記録をしたためています。

第170回直木賞候補作!

一枚の不思議な「絵」から始まる運命のミステリ。
生きるために描く。それが誰かの生きる意味になる。

ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員・守谷京斗(もりや・きょうと)は、異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)から、祖母に譲り受けた作者不明の不思議な絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談を受ける。しかし、絵の裏には「ISAMU INOMATA」と署名があるだけで画家の素性は一切わからない。二人が謎の画家の正体を探り始めると、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた業に繋がっていた。

1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。
芸術が招いた、意図しない悲劇。
暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。

長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。

戦争、家族、仕事、芸術……すべてを詰め込んだ作家・加藤シゲアキ「第二章」のスタートを彩る集大成的作品。

「死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物のなれのはてだ」

Amazon概要より

骨太で読み応え抜群!重厚ミステリー作品

テレビ局員の男女が一枚の絵の存在をめぐり、その作者にまつわる真相を追いかける・・・というストーリー。
この絵をめぐっては、著作権・戦争・石油化学、そして報道の在り方など、あらゆる要素が含まれていて、骨太なミステリー作品となっています。

こんなにたくさんの要素が一つの作品に詰め込まれているのに、そのどれに関しても中途半端なところは一切なく、現代に生きるわれわれが知り得なかった事実にも、たくさん触れられています。

作家であり人気アイドルでもある著者ですが、その裏に隠された知性と苦労を伺い知りました。
直木賞候補に入ったときの加藤シゲアキさんのインタビューを見ました。彼が広島で生まれたことは何かで知っていたのですが、今作品の舞台となった秋田県にもルーツがある方だったようです。

ページをめくる手が止まらない、巧妙な構成

400ページを超えるこちらの作品。扱っている内容的にも、初めに手に取ったときは、読むのに時間がかかりそう・・・という印象がありました。
だけど、いざ読み始めると読み進める手が止まらず、あまり読書ペースが早くない私ですが、時間を忘れて没頭し、2~3日で読み終えてしまいました!

物語は守谷と吾妻が一枚の絵の真相を調べ、徐々に事実が明らかになっていくという形で、全七章で構成されていますが、この各章の間に、物語のキーパーソンともいえる過去の人物たちの回想が挟み込まれています。

過去と現在を行ったり来たりしながら、謎が明かされていく展開がたまらなく面白くて・・・気付いたら貪るように本を読んでいました。

このように、「続きが気になって読むのをやめられない」構成になっているので、いっき読みは必至の作品です!

余韻にひたり、考えさせられる読後感

戦前戦後から現在までの約100年を描いた超大作。
辛い事実も明らかになってしまいましたが、最後は少しだけ希望の灯る結末となり、ほっとした自分がいました。
読後は本の装幀をじっくりと見返し、作品の余韻にひたっていました。

特に、第二次世界大戦終戦直前の土崎空襲については今作品を通して初めて知ることとなりました。
あのとき壊滅的な被害を受けたのは広島と長崎だけではないこと、もう一日早く日本が降伏宣言することで、失われずに済んだ命もあったことを、改めて胸に刻み直しました。

終戦から80年がたとうとしている今、彼のように若い作家が戦争を描くことには、大きな社会的意義があると感じます。
戦争を語り継ぐことは、その時代に生きた者でなくてもできるし、これからはどうしても、そうしていかなければなりません。

惜しくも直木賞受賞は逃してしまいましたが、同じ悲劇を繰り返しつつある今、このような作品がもっと広まることを願ってやみません。

われわれ読者も「いい本だったな」で終わるのではなく、作品から多くのことを感じ取り、考え、誰かに伝えたり、行動する必要がありますよね。

改めて本の素晴らしさを再認識するきっかけとなった作品でした。
本当に、多くの人に手に取ってほしいなと思います。

こちらの作品、気になった方はぜひ手に取ってみてください。
読んだことのある方は、コメントで感想を教えていただけるとうれしいです^^

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