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ヴィッセル神戸マッチレビュー│FSCvs川崎F

開幕を前に行われたスーパーカップ(FUJIFILM SUPER CUP)は0-1の敗戦。戦前には川崎は繋いでくると予想していましたが、蓋を開けてみればゴミスを起点に長いボールを使用。やはりJ1王者へのマークは厳しく、しっかりリスペクト「された」試合でした。対する神戸も大迫へのロングボールを軸に、対角の佐々木を活用。両者がコンパクトな布陣の中で、タフに競り合うゲームとなりました。



【レビュー】

結果から言えば、キーマンは井出でした。彼がIHでプレス役とFW役を務め、大迫や佐々木の負担を軽減。クレバーなプレーが際立っていただけに、開幕前の負傷交代は痛手です。

もう1人気になるのが武藤。マイアミ戦に続きベンチ外とあって、何かしらのコンディション不良はありそう。ただSNS等では姿が確認できるため、開幕へ万全を期す決断とポジティブに捉えたいところです。ただこのゲームは武藤の不在により、大迫、佐々木の負担が増し、井出のアクシデントで歯車が狂ってしまいました。

交代で投入された宮代は不慣れな役割に忙殺され、彼のポジションで明らかにノッキングを起こしていました。古巣相手にややナーバスなシーン散見され、川崎の試合巧者ぶりにハマってしまった印象です。

ただ覆面さんが指摘するように、個人よりもチームとしてのタスクを明確に出来なかったのが敗因。もちろん開幕前で手の内を隠す意図やゲームでのコンディションを整える考えもあり得ます。タイトルを1つ失った悔しさはありますが、最後までロングボールで攻め続けた吉田さんには、昨年同様の覚悟が窺えました。

一方で、その性格を逆手に取ってくる相手にどう向き合うか。例えば、したたかにベンチとの駆け引きに引き摺り込む名古屋や広島、町田や東京Vといった相手に真正面から挑むだけでよいのか。あるいは立ち位置(4123)で、がっぷり4つのタレント力を試される横浜FMや浦和に対して、真正面から挑むだけでよいのか。リーグを制した指揮官を倒そうと策を練るライバル達の姿をみれば、今季もタフな1年になるのは間違いないでしょう。

さて話をゲームに戻すと、気になった点がいくつかあります。まずは左WGのパトリッキ。この日は使われる立場からクロスを上げる立場でしたが、スピードを活かせたシーンはわずか。爆発的なスピードは魅力ですが、やはりジョーカーとして使われる役目が一番怖さを発揮します。試合終盤の足が止まる時間帯に、ラフなロングボールに追いつきゴールに迫れる推進力は貴重です。となればスタートは汰木で後半からパトリッキですが、吉田さんが話すFW起用も面白い策です。

頑固な一面がフォーカスされがちな吉田さんですが、広瀬のWG起用といった独特の感性に、勝負師らしさを感じます。後手を踏んでいた相手SBの三浦に対して、引いて守るのではなく押して蓋をする。オシムさんも好んだ戦い方ですが、神戸のスタイルにもヒントになるアイデアが隠されていそうです。

引くのではなく押し込む。その圧力を高めて、相手がロストしたボールを奪い一気にゴールに迫る。キャンプから繋ぐ意図を試しながらも、あくまでスタイルをブラさない姿勢は好感を持てます。個のタレントだけでなく、指揮官の新シーズンにも要注目です。

もう少しゲームの話を。中盤で気になったのは山口と扇原の位置。横並びかアンカーか。井出が下がり4411気味になってから、扇原がバランスを取るのに苦慮していました。彼は食い付いて散らす選手ですが、ゴミスが神戸ラインを押し留めたため、バイタルがフリーに使われていました。勇気を持ってラインを上げコンパクトに保つのか、ある程度は横並びで佐々木やパトリッキがBOXに飛び出す形にするのか。このあたりを開幕までに意思統一したいところ。一発勝負のゲームだけに、菊池を終盤ターゲットで起用するアイデアもありかもしれません。

いずれにしても、開幕へ向けて悲観的になる内容とは感じませんでした。むしろこれだけ大迫のキレが良いと、決め出したら止まらない姿も想像できます。サッカーの格言にもあるように、ゴールはケチャップのようなもの。唯一心配するなら、無得点を過剰に意識し、疑心暗鬼に陥ることです。

ただ、前述したように指揮官はブレていません。神戸サポにとってACLシーズンは鬼門ですが、今季はネガティブなジンクスを打ち払う逞しさを期待しています。さあいよいよJリーグが開幕です。選手達の躍動を心待ちに、しっかり名鑑で予習しておきます。

【公式ハイライト動画】

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