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現役整備士が教える!学校では教えてもらえない自動車整備の現場

はじめに

この記事は自動車整備士を目指す方へ向けて、現役整備士の私が学校では教えてもらえない整備工場の現実を書いています。マイナスに捉えられる面が多めですが、現実のためよろしくおねがいします。
※あくまで個人の主観であり、全ての現場がそうとは限りません。

『自動車整備士』
一口に言っても何級にも分かれ、種類もある職業。

最近の自動車整備士への道といえば、『自動車整備専門学校』を経て、1年に100万円以上の学費を2年以上払い、『実技免除』をもらって、『学科試験』を最後にパスすれば『自動車整備士』の資格をもらえます。

そして在学中に多くの学生がディーラーや、民間整備工場に内定し、卒業後に右も左も分からない状況で働くことになります。

私の場合は、『一級自動車整備士』の資格を取得するため、4年間学校に通い、4年次に『インターンシップ(職場体験みたいな)』ものをカリキュラムの一環として行いました。

私の場合は、とあるディーラーに内定しそちらへ研修に行っていたわけですが、その過程で『説明会とは全然違う』現実に嫌気が差し、内定をなかったことにしてもらいました。
そして今は民間の指定整備工場で働いています。

私のようにディーラーでそういった苦い思いをせずに『自動車整備士』を目指す方たちにとって『自動車整備士』が楽しい職業でやりがいのあるものになってくれることを願います。

働くまでわからなかったこと

その1 学校で覚えた作業はあまり役に立たない


1年に100万円以上も支払う学校ですが、授業はあくまで自動車の基本構造など『基本』を教える場でしかなく、実技免除のための費用と内容、学科試験対策のための費用だと私は思います。


実習に於いても、教科書に出てくる部分だけを実習でしてみたりしますが、実務になると全然違う動きになるので、全くと言っていいほどに役に立ちません。


例えば車検や、12ヶ月点検の実習です。今はわかりませんが、私のときは1輪外して、そこのこことこことを点検して、次のタイヤを外してそこをまた点検して。。。という風なスタンスでした。


ですが、実際に働くことになって、そんな段取りの悪いことをしていると、『何してるの??』と言われます。


現場では一切そういうやり方をしないからです。現場上がりの先生方が多い中、カリキュラムでのマニュアルがそうなのか、なぜそう教えるのか不思議です。


現場では、ライト類、車内、エンジンルームをみて、ジャッキアップ。ハブなどのガタを点検しつつ、空気圧をみて、タイヤを『全て外し』チェック、ブレーキを『全て開けて』各部チェック、リフトを下回りが点検できるまで上げて下回りチェック。そして見積もりからの作業。という流れが一般的かと思います。なぜそうするかというとそれが1番効率がいいからです。


また、学校ではタイヤ組み換えや、オイル交換、先ほどの点検、ブレーキキャリパーやホイールシリンダーのオーバーホール、ヘッドカバーガスケットの交換など1年目からすることがあるであろう作業の実習時間が圧倒的に少なすぎます。


特にブレーキ系統のオーバーホール(分解リペア)や、ヘッドカバーガスケットの交換に関しては私の学生時代は実習すらありませんでした。


タイヤ組み換えに関しても時間が少なかったですし、バランス調整の練習はやった覚えすらほとんどないぐらいです。


なので、新卒で整備学校あがりだから即戦力!というわけにはいかないわけです。最初の1年は完全にお荷物でしょう。


変に癖がないから良いという考えもありますが、学校で変な癖はもうついてるわけです。


であれば何か1つでも強みがある方が私は即戦力として活躍できると思いますし、会社としては利益に繋がると思います。


在学中のアルバイトはできれば整備や接客を経験できる職種がおすすめですね。


その2 工具は基本的に自腹

自動車整備士の魂とも言える『工具』。
私は当時、工具は基本的に会社が必要経費として受け持ってくれるものだと思っていました。

ディーラーに内定したときは、トルクレンチ・エアゲージが貰えますと聞いていました。
大手ディーラーであれば、こういう風に入社時にプレゼントがあったり、『工具手当』として毎月お金が出たり、会社から貸与があったり、支給工具がある程度あったりします。

ただ、やっぱり『必要最低限』のものしかありませんので、学校で購入した工具などを合わせても様々な車種の作業には全然工具が足りません。
ですので足りない分は『自腹』で購入するしかありません。
整備で使う工具って、何百円のものから何万円するものまで様々です。

揃えていくととんでもない金額になっちゃうんですよね。

でも揃えないと仕事にならないので揃えざるを得ない。。

私のように民間の工場で働いている場合、『工具手当』なんてものは出ませんし、工具は特殊なもの以外全て『自腹』です。
工具箱も工具も全て自腹。。。
全部で何十万、何百万の人もいるでしょう。

おまけに給料が安い。。
ツライものがありますね。。

その3 給料が思っていた以上に低い

自動車整備士の給料はざっくり聞いたことがあるかと思いますが、低めです。

  • 国家資格(二級以上)がないと就職先はなかなかない

  • 車が落ちてきて命を落とすかもしれない

  • 怪我をするかもしれない

  • ネジを締め忘れたら、車や部品が飛んでいってとんでもないことになる

  • 休みは少ない

  • 土日祝休みが少ない(全部休みのとこはまずない)

  • 残業が多めのところが多い

  • 縦社会の会社が多い

  • 検査員でミスをすると刑事責任が問われることもある(よくニュースになってますよね)

など、あんまり良い条件でなかったり、資格取得までの道のりが長かったり、人の命を左右してしまったり、車のいわば『医者』だったりするわけですが、人間の医者とは月とすっぽんの給料の違いです。

同期のディーラーの整備士に聞いたことがあるのはひと月の手取りが一桁だったことがあるそう。
一桁ならバイトしてるほうがいいやん。。と思ったのは言うまでもありません。。

ディーラーの整備士の場合、役職がついたり位が上がらないと基本的に安月給から逃れることは難しいようです。

役職がついたからといって他の職種と比べると給料はかなり安い部類ですね。

私の働く民間企業の場合ですと、入社したては手取り20万ぐらい。(妻子あり)

7年目の現在は、自動車検査員や、コーティング責任者などになり、月の手取りは25万から26万ほど。年収は約450万(こちらは税込で手取りではありません。)

ディーラーでも民間でも満足のいく給料をもらうにはかなり大変な思いをしないと難しいのが現実です。

いつか自動車整備士も国が給料を上げてくれるようになるといいですね。

その4 上下関係が厳しい

学校でもある程度この話はされるかと思います。
大手ディーラーなんかは特にですが、未だに体育会系で、上下関係は厳しく、でかい声が出せないやつは使えないやつ。と見られます。

私が経験した10年ほど前の話ですが、モラハラ・パワハラ・叩いたり蹴ったりは当たり前。ここは昭和ですか。と思いました。
陰口叩かれるほど働きに来てないのでコソコソ言っていたり、あからさまに気の悪くなる態度を取られたり。
他にも色々ありで嫌気が差してしまったわけです。

その会社は社長や副社長はとても気の良い人で辞めますといったときわざわざ家まできて優しく話を聞いてくれたりしてくれる心穏やかな方々でした。
しかしながら現場の中間層や、現場の整備士たちは皆が皆そういう人ばかりではありませんでした。
また、営業とサービス(整備)で派閥があったりします。

では、今現在働く企業はどうかというと、温かい人柄の人ばかりで仲間内は気兼ねなく働くことができています。

民間の整備工場の場合は結構現場の雰囲気が良いところが多いなという印象です。バイト含め3社民間は経験してますが、人間関係は良好です。

長く働く上で人間関係は非常に大事ですね。

その5 やり方をあまり教えてくれない

学校ではもちろん先生が手取り足取り教えてくれます。

どんな仕事でも言えるかもしれませんが、実際働き始めると1から10まで教えてくれる会社はなかなかないでしょう。

特に私がディーラーにインターンシップに行ったときは、インターンシップ研修なのに自分で見て覚えろ。何をすればいいのかは自分で考えろ。スタイルでした。

いやいや、右も左も分からんのに冷たすぎません??となりましたね。

ゲームみたいにきちんとチュートリアルはしていただかないとどうすればいいのかなんてわからないですよね。攻略本を渡してもらってるわけでもないですし。

ただ実際、こんな時代になっても昔ながらのスタイルが残る会社もあるんですね。

私の今働いている会社ではきちんと誰かがついて指示してあげてというのを始めのうちは行います。

できるようになってきたな、ここのやり方がわかってきたなと思ったら付くのをやめていくようにしています。

育成の体制が大きな企業だから安心、小さいところは心配と思っている方がいるならそういった心配は入ってみないと正直わからないということになります。

ただどの会社でも言えることは、作業を楽にかつ速く、かつきちんと行うには先輩の作業を見て自分のものにしていく他にありません。

良いやり方、悪いやり方もありますが、是非良いやり方で自分をスキルアップしていきましょう。

最後に

さて、マイナス面がやはり目立ってしまうこの業界ですが、好きなことが仕事でないと続けられない人いると思います。

私もそうで、この関係の仕事以外で何をしたら良いのかもわかりませんし、車が関係してないと続かないんやろなと感じています。

もちろん好きな作業ばかりあるわけではありませんが、単純に『車が好き』『工具を使って整備が好き』これが原動力です。

そして結果、会社に利益をもたらし、給料をもらう。

いたってシンプルです。

給料に関しても、安月給という話をしました。
たしかに全体的な職業からすると肉体的・精神的にかなり疲労感のある仕事であることに大して、報酬は少ないのは認めざるを得ません。

しかしながら、私の場合、専門学校で『奨学金』という名の多額の借金(返済額約800万)を背負い、整備士生活をスタートし、

結婚をし、息子が産まれ、家を買い、車を買い、太陽光をつけ、蓄電池をつけ、娘が産まれ、車を買い。。など毎月カツカツどころか足りてなくてボーナスを毎月に充てる生活をしています。

そんな生活ですが、『幸せ』かどうかで言えば『幸せ』です。

家族がいて、みんな笑顔で毎日を過ごせています。

お金があるにこしたことはありませんが、大切なことは自分が何をしたくて、その結果笑顔でいられるかどうかだと思っています。

お金があってもずっとこの先笑顔でいられないならそれは何のために頑張ってるのか。

自動車整備士を目指す方々にとって、目指す前となったときのギャップが大きすぎればそれに絶望してしまう人もいるかもしれない。

話がちゃうぞと辞めてしまうかもしれない。

そうならないようにどんな業界でもそうですが、あんまり飾りすぎず、できるだけ赤裸々にその職を目指す人に対して呼びかけていくことがもっとできればいいのかなと思う今日この頃です。          
                おわり

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