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ハンチバック 読感文

ハンチバック 市川沙央著 ネタバレあり

 障がいのある主人公のお話です。私の身体は生きる為に壊れて来た。とあるように、背骨は湾曲し肺は潰れ歩くことは出来ない重度の障がい者の日常の話でもあるので、分かりやすい文章で分かりやすい言葉で出来ていた。
 そして短編なのでサクっと最後まで読めます。しかし、重度障害でも妊娠中絶をしたいと望む主人公の釈華(しゃか)の話なので重く感じる人もいると思います。Twitterで生まれ変わったら高級娼婦になりたとか、クラウドソーシングで風俗のライターをしていたりTLの小説を書いていたりと、性に関する事をパソコンで作業をしています。
 生活は親が遺したグループホームで暮らしています。遺産は億単位でまだあり、安心安全な生活を確保できています。大学の通信制にも通っています。
 釈華は障がいのせいで紙の本が読めない事に、怒りや苛立ちを感じています。単純に読めないから怒っているのではなくて、健常者中心の世の中に怒っています。障がい者はいないものとされる日本の社会。恥ずかしながら私もその一部です。何にも考えていません。おっしゃる通りですと、ごめんなさいと頭を下げました。きっと本に書かれていない事も沢山の怒りがあるんだと思いました。とにかく怒りと妬み嫉みを強く感じます。私(障がい者)は存在するんだよとそれはとても激しく訴えかけてきます。最初から最後までずっと強いメッセージを発信しているように感じました。
 私の抱える内面の問題と同じで、誰しもコンプレックスを抱えて生きているし、個人の価値観によって重いかの軽いか、もう歩けないのか走れないのか、立っていられないのかすごく個人差があってどう言ったらいいか迷いますが、この釈華さんは立っている人だとは思いました。時折混ざるユーモアと最後のゾクッとする感じが良かったです。

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