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告白雨雲【#毎時ショートショートnote】

雨が降る。
それはあの日と同じ寒雨だった。


学校の帰り道での出来事だった。私はふと段ボールに入れられた子猫を見つけた。子猫は段ボールの中で弱々しくミャンミャン鳴いていた。子猫にとってそれは悲鳴であり、哀願だったのだろう。
ふいに子猫と目が合う。いつもならとても可愛らしく思うはずなのに、その目からはぐにゃぐにゃとした恐怖を感じた。
理由は簡単だ。うちでは動物を飼うことが出来ない。だから私は目の前の小さな命を今から見捨てなければならない。なぜか私は蛇に睨まれた蛙のようにその場から動くことが出来なかった。

ポツリ

頬に水滴が落ちる。
「雨…」
私はハッとして、すぐその場から逃げ出した。

翌朝、雨はまだ降り続いていた。
傘を指していつもの通学路をビクビク歩く。そして、昨日と全く同じ場所に段ボールを見つけた。
私は怖くて、その段ボールの中を見ないように走って通りすぎた。

帰り道。あの場所から段ボールはなくなっていた。私は安堵したが、すぐ拭えない罪悪感に飲まれた。
雨は当分の間止むことはなかった。


あの時、私はどうしたらよかったのだろうか。
私は雨雲に向かってポツリ、「ごめん」と呟いた。
声は雨音に紛れ、そして、消えた。(496)

これは告白なのでしょうか?笑内容は気に入っていますが、お題に沿っているかと言われたら首をかしげてしまいますね。

子供の頃のトラウマってすごい残りますよね。

お毎度たらはかにさんお疲れ様です。

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