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映画 perfect days ~おじさんとトイレとVelvet Underground~

perfect days。
主人公を演じた役所広司さんがカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した映画を鑑賞。

この映画、気になっていたものの、映画館で鑑賞するひと押しが自分の中になかった。
それが海外の友人から今すぐ観に行ってほしいと連絡が入った。
日比谷でまだ上映してるから。と、会場まで教えてくれたので、これは行かないと悪いなとそういう気持ちで観に行った。

心は穏やか。小さな幸せに感謝できる。
心温まる映画だった。

初老の男性平山さんは渋谷区の公共トイレの清掃員。
毎朝近所のおばあさんのホウキを掃く音で眼ざめ、
歯を磨き、植物に水をやり、着替え、家を出る。
缶コーヒーを1本買い、車に乗り込む。
その日聴くカセットテープを選び、エンジンをかけて、出発する。
昼食は牛乳とサンドイッチ、それをいつもの公園で食べ、合間に木々を撮影。
仕事が終わったら、近所の銭湯で体を洗い、温め、いつもの居酒屋で一杯。
寝る前は読書し、うとうとしたら寝る。
これを繰り返す。ルーティンの生活。

それは毎日が同じように見えるけど、
天気は違うし、季節も変わる。
迷子の子どもを助ける日もあれば、
若い女の子に聞いてる音楽を気に入ってもらえた日もある
ルーティンだからこそ小さな変化に気づけるのかもしれない。

そんな穏やかで、小さな幸せを共有してもらっている気持ちになる。
良い映画だった。

それでも初老のトイレ清掃員のおじさんの日常で終わってしまいそうだが、
この映画が良いのはその清掃員のおじさんが聴いている音楽と、読んでる本のセンスがとにかく良いということ。
日常を切り取って見せてもらっているようでそこに非現実感がある。

もし、私なら
平山さんが聴く音楽はオフコースか、中島みゆきか、サザンか、いずれにしても王道にしてしまうし、読む本も池波正太郎の鬼平犯科帳とかにしてしまう。

映画の平山さんは違う。
映画の冒頭、初日に彼が選曲したのは
The Animals - House Of The Rising Sun
ちあきなおみの方ではない、Animalsの方だ。
朝日を浴びながら車を走らせる平山さんが聴くHouse Of The Rising Sun。
たまらない。

ちあきなおみバージョンは、映画では居酒屋のママを演じる石川さゆりが披露している。

またある日は
Velvet Undergroundのpale blue eyes
ウォーホールが描いたバナナのアルバムジャケットで有名なあの曲。
この曲をさらっとかけてしまう平山さん。

Velvet UndergroundのボーカルLou Reedの曲も。
これが映画のタイトルになっている。

そのほかにも私にはどんぴしゃな選曲が続くのだが
唯一聴いたことのない曲が日本人が歌う曲だった。

金延幸子の青い魚
わたしは金延さん自体存じ上げず、この映画で初めて知ることに。
短調のようで、短調ではない、ユニーク。少しこぶしがはいってる?独特な雰囲気の曲。
一人のドライブのときに聴きたい曲。

読んでる本は
ウィリアム・フォークナー 「野生の棕櫚」
幸田文 「木」
パトリシア・ハイスミス 「11の物語」
11の物語は、すっぽんの話を映画で姪っ子と会話する。
読んだことないけど、読んでみたくなった。

もしこんなおじさんが浅草の飲み屋で一人飲んでいたら、
絶対に話しかけてしまう。

最後に、
平山さんが掃除する渋谷区の公共トイレ
どれもしゃれたデザイン。
そこで調べてみるとデザインした人たちがすごい。

安藤忠雄
隈研吾
小林純子
坂倉竹之助
佐藤可士和
佐藤カズー
NIGO
etc・・・


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