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「シティポップ」、都会で聴くか?海辺で聴くか?

シティポップだけでなく昭和歌謡の再評価もそうだし、90's古着やレトロ喫茶/純喫茶ブームも、ワンダーJAPAN(現JAPON)復刊もそうだ(そうなの?)が、近年の若者達による懐古主義的な嗜好については、80年代後半から90年代に幼少期と思春期を過ごしたオッサンの私としては、「うんうん、やっぱ良いよね」みたいに、自分の手柄でも何でもないのになんだか嬉しかったりする。

この懐古主義は、今の30代・40代(まさに私の世代)が下の世代に押し付ける 「 “無地のTシャツ着てコンクリート打ちっぱなしのカフェでiPhoneイジる” みたいなオシャレ感」に対する若者達の拒絶反応のような気がしている。
バブル〜平成初期によく見られた、お皿やコップのチープな絵付けとか、床や天井の謎の幾何学模様なんかを、「この凹凸って使う?」「この模様ダサくない?」って私の世代がどんどん機能的に不要なもの、非合理なものとして排除してきた結果が、味気ないモダニズムデザインで溢れかえる現代の風景なのだが、それに晒されて育ってきた現代の若者達がその「無駄なものがない息苦しさ」に気付き、一昔前の「非合理だけど必要なもの」を掘り起こそうとする気持ちに私は全面的に同調するし、感心しきりなのである。

「City Pop(シティポップ)」は字面のとおり「都市・都会のポップス」で、70〜80年代のフィリー/アーバンソウル、フュージョンやAOR(adult oriented rock)の流れを汲む日本独自の音楽ジャンルである。アーティストやアルバムによってはライトなディスコ要素を押し出していたり、ベースは「夜の都会の大人のための音楽」を志向している。とりわけ日本全体が前向きですこぶる元気だった70年代後半〜80年代に最盛を極めた。
やっぱり人っていうのはネガティブな人の隣にいたらネガティブになるし、ポジティブな人の隣にいたらポジティブになるわけで、ネットニュースも広告もSNSもネガで覆い尽くされた現代において、ポジの象徴たるシティポップのリバイバル現象というのは、時代が求めた必然だったのだろうと感じる。


シティポップにはアーバンミュージックという要素の他にもう一つ、サマータイム/シーサイドミュージックとしての側面がある。

別に逗子や葉山みたいにブランド化された海辺の街じゃなくても、日本という国はどこに住んでいようが少し車を走らせれば海に辿り着く。
シティポップのサマーソングの数々は、都会に暮らさない人々にとっても実現可能な「理想の夏」を明示してくれる。田舎者の私にとってシティポップは「都市の音楽」ではなく「夏の音楽」なのである。
シティポップがしきりに作られていた時代の前向きな空気と、夏に向かうの開放感をダブルで楽しめるなんて、なんたる贅沢。

そんなわけで、今年の夏にあなたを、海と砂浜へ駆り立てるシティポップナンバーをご紹介。


SPARKLE(1982) / 山下達郎

ご存知。菊地成孔氏の伝説の前口上とともに。


一本の音楽(1983) / 村田和人

山下達郎全面プロデュースによる2ndアルバムより、maxellのカセットテープのCMタイアップソング。爽快な歌声とアレンジが光る開放感あふれるナンバー。


太陽の下のストレンジャー(1984) / 河合奈保子

シティポップというよりはアイドルソングの風合いが強いけど、れっきとした八神純子作曲のナンバー。ちょっと安っぽく感じるアレンジも時代を感じられて良いです。


SUMMER BREEZE(1983) / PIPER

村田和人作品のギタリスト、山本圭右のバンド、パイパーより極上サマーチューン。冒頭のキラキラアレンジが素敵です。



二番目のaffair(1982) / 杏里

「夏ソングの女王」杏里の4thアルバム『Heaven Beach』より。
角松敏生作曲だから、もう、チャーシュー味玉全部乗せって感じ。最高です。



Solider Fish(1983) / 二名敦子

村田和人、国分友里恵も参加した3rdアルバムより一曲。サマーリゾートといえば二名敦子、二名敦子といえばサマーリゾート。


恋の横顔(1983) / 国分友里恵

ご存知『真夜中のドア~Stay With Me』でおなじみ林哲司プロデュースの名盤『Relief 72 Hours』より一曲。心がウキウキするようなイントロからもう素晴らしい。何より国分さん歌が超上手い。


WINDY SUMMER(1983) / 杏里

杏里さんからもう一曲。大名盤『TIMELY!!』から、選べないけど敢えてこの一曲。
これにビビッと来たらアルバム全部聴いて。もうお腹いっぱいって感じで夏だから。



あぁ、夏が待ち遠しい。

今年も暑くなるみたいだね。

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