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N響 ゴールデン・クラシック 2024 にて、NHK交響楽団生演奏初観覧


東京・上野の東京文化会館 着

大宮鉄博での活動行程を終え、上野駅へ着きました。GWの後半初日ということもあり、密さを感じるほどに上野駅から動物園、恩賜公園のエリアは大変な賑わいようでした。
当然、公園内にあるカフェなどは、会館併設のそれも含めて、30分待ちのようなお店ばかりのため、かろうじて空いていた木陰の大理石ベンチにて、水分補給はしておきました。

今回の会場。サントリーホール等より古参のホールですが、国内外の有名クラシックアーチストも多数公演に訪れる、上野エリアにおける音楽文化の殿堂です。

プログラムは、旧ソビエト連邦を代表する作曲家(ハチャトゥリアン、ショスタコーヴィチ)による2作品。N響を指揮するのは、今回初共演の若手指揮者:坂入健司郎さん。前半パートの客演は、クラシック音楽TV番組などでも出演の多い話題のヴァイオリニスト、木嶋真優さんがソリストです。
開場してすぐに、先着特典(サイン色紙同封)の木嶋さんのアルバムCDを購入。勿論、EXTONのDSDレコーディングのプレスです。

SACDハイブリッド盤"Rise"(Extonレーベル発)、同アーチスト直筆サイン色紙

エンカの友人と、最近それぞれで観覧したコンサートの内容や感想、今後の二人の音楽世界&理論の深め方などを語らっているうちに、開演定刻の1530となりました。
ホールは強めの傾斜があり、私たちは一階最後列付近のシート予約でした。
N響のメンバーが、ステージ両袖から続々と入場してきます。最後の方になって、我らが「まろ」(N響バイオリン特別コンサートマスターで、看板ミニ番組等も持たれている篠崎史紀さんの入場時には、会場内の拍手がひときわ大きくなりました。
指揮者の坂入健司郎さんも、颯爽と入場。黒の襟なしスーツです。一番最後に、客演ソリストの木嶋さんが登壇。初夏らしい若葉系ライトグリーン上着と、パステルイエローのロングスカート、というお召し物でした。

前半:ハチャトゥリアン/ヴァイオリン協奏曲 二短調

全体から鋭く入る序盤前奏の後、木嶋さんのソロ・ヴァイオリンが段階的ともいえる音階で絡んでいきます。私自身、ロシア・ロマン派の代表格・チャイコフスキー以降の作品は、ラフマニノフやショスタコーヴィチあたりを抑えてはおりましたが、ハチャトゥリアン鉄板曲の「剣の舞」以外の交響楽作品を生演奏にて拝聴するのは初めてでした。
しかし、坂入さんの軽やかなタクトや、N響初共演に向けて連日の練習を積まれたN響・木嶋さんの面々は、非常に完成度の高い演奏を提供して下さいました。「この作品のバイオリン・ソロは、音階・音場の移動が細かい為、ともすれば弦楽器の「性」である、若干の音色の歪みがあるのでは」と心配していましたが、そんなものは全くの杞憂で、全3楽章を通して、オーケストラ・ソリスト・指揮者が三者一体となった完璧な仕上がりでした。
演奏が終わると、木嶋さん・坂入さんが何度もお辞儀をされて会場内の拍手に謝意を表わしていらっしゃいました。

後半:ショスタコーヴィチ/交響曲 第5番 ニ短調 作品47

後半は、この「ウクライナ戦争下」だからこそ拝聴したかったショスタコーヴィチの大本命「交響曲第5番」です。幕間時、隣席のフレンズが「山猫さん、第四楽章でストリングスが荒ぶるブラスパートに打ち克っていくことにより、作曲家ショスタコーヴィチの苦悩が歓喜に変わる瞬間を是非、その耳と目に焼き付けていって下さい」との解説を頂きました。
事前の予習トラックとして、昭和中盤に同じ演奏:N響、指揮:クレーゲル(東独の名指揮者、故人)のトラックや、他の国内録音での演奏:読売交響楽団、指揮:スクロバチェフスキ(ポーランド)などで理解は深めておきました。
指揮者・坂入さんが、公演再開後のホール内が静まるのを待って、タクトを振り始めます。予習分の2公演は曲調がロシア国内を代表する交響楽団による演奏(指揮:ムラヴィンスキー、演奏:レニングラード交響楽団等)に比べ、今回の生演奏よりもかなりゆっくりめであったため、今回のような迫力ある速いテンポでの立ち上がりは私にはむしろ、新鮮に感じられる演奏でした。
第四楽章開始後、20秒ほどで挿入される演出(トゥッティ・総奏)である、映像の世紀~バタフライエフェクトや、クラシックTVでも取り上げられた『A(ラ)音の連続動機』が登場します。前時代の歌劇「カルメン」の内の歌詞では、「ご用心」や「信じない」、つまりこの部分に当時のソビエト全体を独裁・強権政治にて牛耳っていた同国の権力者、書記長・スターリンに対して、「俺はお前を信じないからな!」という強いメッセージが込められているのです。
現在、ソビエト崩壊後のロシア連邦にて、その独裁者スターリンを上回る期間(約30年)での権力者の座を狙う、国際戦争犯罪被告人・同国大統領プーチンによって引き起こされた、ウクライナ侵略戦争での数々の蛮行に日々、怒り、絶望していた私は、この前世紀の偉大な作曲者が残した強烈な音像による「反骨の暗喩」に拍手喝采を送りたくなりました。
開始後序盤のストリングスの展開は壮絶です。「まろ」特別コンマスを含め、先頭の数名の第一ヴァイオリンパートの方々は、仰け反らんかのばかりのような体勢にまでなって、坂入さんのタクトに忠実に演奏されていました。N響と坂入さんとの共演は今回が初回であるのに、演目が演目であるだけに何か鬼気迫るものがあったことを、観客の私も如実に理解できる演奏風景でした。
そして、最終部分。荒ぶるブラスが、ゆっくりめのフルストリングスの編成にゆっくりと押し戻されていき、私とフレンズは「作曲者ショスタコーヴィチの苦悩が歓喜に代わった瞬間」の音像を、確かにその耳と目で感じ取ったのです。
アンコールは、同じショスタコーヴィチのおしゃれな小品「二人でお茶を」を室内楽風にアレンジした、小粋な作品でした。

総評

初めてのエンカでの都内コンサート観覧、また初めてのN響生演奏での迫力に圧倒されました。普段、NHK教育テレビの「クラシック音楽館」や4K BS番組、またNHKーFMの「ベストオブクラシック」での録音・収録ばかりを見ておりましたが、地方公演等も多数開催しているようなので、フレンズとの今後のエンカも合わせ、足繁く通ってさらに耳を肥やしたいと思います。

再現プレイリスト

今回もプログラム代わりのプレイリストをコンパイルしました。
後半の演目は、レニングラード交響楽団✕20世紀ロシアクラシック界最強と言われる、ムラヴィンスキー指揮での演奏を乗せました。


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