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東京芝アークヒルズ・サントリーホールにて、東京フィルハーモニー交響楽団「三大ピアノ協奏曲の響宴(指揮:三浦文彰、ピアノソリスト:清水和音)」を聴く

新型コロナ5類移行発表前から楽しみにしていた公演

GWも終盤に差し掛かった土曜日の朝、長野から新幹線で東京芝・アークヒルズのサントリーホールを目指しました。
チケットはローチケの予約手配で、S席を4ヶ月以上前から確保しておきました。プログラムも普段、交響曲として書斎でよく視聴する演目ばかりであり、日本を代表する清水和音さんのピアノがソリストとして東フィルと拝聴出来るという、またとない機会に恵まれました。
サントリーホールに到着する前の東京街歩きは、更新後に掲載致します。

サントリーホール到着

開場の30分ほど前には、舞台となるサントリーホールに到着しておりました。

溜池山王駅側入口から入城。初夏の強い日差しに映えていました。
モニュメントと正面エントランス
モニュメントの足場に埋め込まれた、帝王カラヤンの直筆サインモノリス。
当日分の公演予定が、電光掲示板にて公開されています。

実はこの道すがら、「モバイルバッテリーに繋げられる充電ケーブルを持参し忘れた」と勘違いし、気が少々動転・焦っていました。
ただ、開場までは大分時間があったので、前回の初来訪の時のように、ホール上部のアークヒルズの空中庭園で、初夏の花々を愛でました。

アークヒルズでのイングリッシュ・ガーデンめぐり

摩天楼の中の、癒やされる穏やかな新緑。
アークガーデンの入口
ツインアークタワーが屹立する空中庭園
前回は見逃していた、さらに上階の庭園も今回は愛でてきました。
たおやかに咲く、「ルリマツリ」の花。
青空・生命力溢れる新緑・鮮やかな花々のコラボが映えます。
紅白のボタン
アリウム・アフラチュネンセ。
可憐に見えますが、ネギ坊主のフレンズです。
新緑のトンネル
イングリッシュ・ガーデンの代表選手、ジギタリス。

20分ほどの散策を終え、中央エントランス前に戻ってきました。
1315、いよいよ開場です!

開場時間になると、中央上部からヨーロッパ風の機械式大型オルゴールが登場・演奏します。
非日常空間・体験の幕開けです!

直販CDを購入

入城を果たし、予約した指定席を確認・設営すると、直販CDを購入しに行きました。
今回の座席は、最前列から三番目の向かって右翼寄りの位置でした。ストリングスの低音パートを集中的に堪能するのに有利です。
事前に Spotify のカタログにないアルバムを調べておいたので、今回はこちらを選びました。

自宅にてロスレスリッピング(ALACフォーマット)して、収録曲の秀逸さに震えました。
モーツァルト:ピアノ交響曲第23番・第二楽章は、薬師丸ひろ子さんの「花のささやき」のベースメロディになっています。
TRITONレーベルの音質にこだわったマスタリングも、音楽ファンには堪りません。

ここでもあるミスがありました…。
ホールに入場する前、コンビニなどでお茶・ミネラルウォーターを事前に購入しなかったため、それらのおよそ2倍の額のサントリー天然水をホールロビーのドリンクスタンドにて購入しなければなりませんでした。
軍資金を浪費したくないトラベラーの方は、事前に周辺コンビニで購入しておきましょう…。

本日のピアノは、名機・Steinway & Sons での演奏です!
これから始まる演奏に、胸が高まります!

松田華音さんのソリスト公演と、同じメーカーのグランドピアノでした。

第一部:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 Op. 73 「皇帝」

東フィルの皆さんが登壇し、コンマスの方の指示でチューニングが完了すると、まず指揮者の三浦文彰さんが指揮台に登壇しました。バイオリニスト出身の、これからの日本クラシック界を担う気鋭のコンダクターです。
髪は濃いめのブロンドにブリーチされ、ゆったりめのオールブラックのスーツ、という出で立ちでした。
次に、ピアノソリストの清水和音さんがピアノ席に着座しました。くっきりとした眉、がっしりとした体躯に、ピアノの日本版マイスターといった印象を受けました。こちらも黒いスーツに、襟なしの黒ワイシャツ、というお召し物でした。
ステージのど真ん中に設置されたピアノの鍵盤蓋に隠れてしまい、三浦さんの指揮する手元が、なかなか具には見れません。
しかし、かの「皇帝交響曲」の華々しいオープニングから朗々と聴かせる、清水さんの男性的な力強さと、鍵盤の高低音の大部分を縦横無尽に精緻に弾き切る、調和・均整の取れた演奏スタイルは圧巻の一言でした。
時折、鍵盤蓋越しに見られた、三浦さんの指揮の指示も、緩急の利いた伸びやかで明朗なタクトを振っていらっしゃいました。
初大賀で拝聴した、若い女性ピアニストの松田華音さんの演奏(指揮は尾高マエストロ)での同交響曲と比較すると、ご年齢と数々の国際的舞台での経験を重ねた清水和音さんの方は、やはり音像の味わいや深みが増していました。
東フィルのオーケストレーションも、大賀ホールの容積の10倍以上ある会場内に心地よい壮大なハーモニーを奏でる大迫力でした。

第二部:チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op. 23、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op. 18

第二部は、ロシアの鉄板作曲家による超有名ピアノ交響曲の二本立てでした。
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op. 23 は、「高校時代に数学でお世話になった個人指導・専科塾の先生が、ピアニストを目指したがこの曲の超難度で挫折した作品」という、曰く付きのピアノ交響曲でした。
私が高校生当時、「指の間が上手く開かずに、この曲を演奏するために、指間の切開手術まで指導者から提案された」と、塾での指導の合間に仰っていました。
今回の清水さんは、この高低音を同時に何重もの和音の連続で弾く、という荒行にも近い演奏技術を、見事にこなしきっておられました。
私の座席からは、時折顔を若干しかめながら朗々と演奏するソリストの表情の変化を、如実に見て取ることが出来ました。
ロシアの作曲家、とはいうものの、重要なパートにはウクライナの民謡からの引用が使われるなど、ここでもウクライナ音楽が、ロシア・東欧地域のみならず、世界のクラシックに大きな影響力を及ぼしていることが聴き取れました。
最終演目は、 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op. 18 です。第一楽章は、かの優勝候補だった浅田真央さんがバンクーバー冬季五輪(2010)での、ショートプログラムでのまさかの失敗の際に使用されていた音楽、としてご記憶のクラシックファンの方も多いでしょう。
私もあの場面は良く覚えていたので、演技終了後に悔しさのあまり泣き崩れた浅田さんを想起して、涙が出そうになりました。
壮大な重厚感のあるストリングスと、ソリストの流れるようで、かつ要所要所で力強く弾きこなされるスタインウェイは、まさに最終曲の至福に相応しいセレクトでした。
第二楽章は、エリック・カルメンの名曲ポップス "All by Myself" のモチーフメロディになったり、国内外の名作恋愛映画・ドラマなどによく、挿入歌として使用されている、私たち令和の日本人にも馴染みの深いものです。
一番有名な旋律の部分では、先ほどのポップスをよく聴いていた高校生当時の青く、まだ幼かったハイティーンの恋愛等を思い出し、思慕にふける中でこの大舞台での演奏を、深く心酔しながら拝聴しておりました。

延べ2時間半ほどの演奏が終わると、惜しげの無い満場での大きな拍手で大ホール全体が満たされました。

私も、案内して下さったスタッフにお礼を述べて、夢のようなひとときを過ごした会場を後にしました。
退出で会場が混雑していたため、大ホール内のプレートを撮影したりして、感動覚めやらぬ、心地のよい余韻に浸っておりました。

サントリー創業者、佐治敬三元会長を顕彰する大理石プレート。
サントリーホール開業に当たり、監修に当たった帝王カラヤンが寄せたメッセージ。
サントリー創業者・サントリーホール設立者:佐治敬三(1919~1999)

再現プレイリスト

完全再現とは行きませんが、当日のプログラムと同じ曲目を、Spotifyプレイリストにてご用意致しました。
当日の華やかで優雅な気分が、少しでも皆さんと共有出来れば幸いです。


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