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2020年に読んだ漫画の感想を雑にまとめる

今年読んだ漫画を雑に振り返る記事です。

概要

小説やノンフィクションを読んだ後には、その感想や要約などを読書メーターに投稿して、自動でTwitterにも投稿されるようにしているのですが、漫画は一部を除いて、そういったアウトプットをしていませんでした。漫画の性質上、どうしても冊数が膨らんでしまいますしね。

なので今回、ひとつの記事で雑にまとめることにしました。漫画の内容を思い出しつつ、印象に残ったセリフの引用+あらすじ感想という形式で書いていきます。

リウーを待ちながら

「敗北できてるだけいいのかも……戦わなきゃ負けられないものね」

ペストの感染爆発が発生し、ロックダウンされた町を描く漫画です。舞台は、御殿場市をモデルにした架空の市。タイトルの「リウー」は、カミュの小説「ペスト」に登場する医師の名前だそうです。

感染が徐々に広がり、不安がる住民、医療従事者が多忙になっていく様子、そのあたりの描写が非常に緻密で、読み応えがあります。初出は2017年ですが、感染拡大を受けた人びとが動揺する描写は、2020年の日本とそっくりで、漫画でなく現実世界を見ているような錯覚を覚えます。

読んで思うのは、この手の強力な感染症との戦いというのは、基本的に泥臭い敗戦処理なんだなと。プラスになることはなく、マイナスを限りなくゼロに近づける戦い。「勝つ」なんてことは基本的にありえなくて、被害を最小限に抑える努力を着実に積み重ねていくしかない。個々人でできる感染症対策の必要性と、医療従事者へのリスペクトを改めて感じた作品でした。

ブルーピリオド

「悔しいと思うならまだ戦えるね」

東京芸大を目指す高校生を描く文化系スポ根漫画。こういう漫画かなり好きなんですよね。

絵画の世界に魅せられた主人公がゴリゴリに努力して、どんどん上手くなっていく。その過程で、絵画の見方や、デッサンの理論なんかも知ることができます。あと美大受験の世界も、ほとんど知らないことばっかりで面白かったです。

芸大受験という高すぎる壁に何度も挫折して、それでも愚直に自分の絵を高めていく主人公から熱量をもらえる漫画です。今後も続けて読んでいきたい。

葬送のフリーレン

「50年も100年も彼女にとっては些細なものなのかもしれないね」

魔王を倒した勇者一行の後日談にフォーカスを当てた漫画です。魔王を倒したあと、勇者のパーティは解散し、やがて勇者は老いて死んでいきます。しかし、パーティの一員だった魔法使いのフリーレンは長寿なエルフなので、勇者が死んだあとも世界中を旅して、新しい魔法を集めたり、勇者のやり残した仕事をこなしたりしていきます。

このエルフが、徐々に勇者たちとの旅の思い出に価値を見出していくのが、めちゃくちゃ印象的です。勇者たちと旅をしたのは10年間。1000年以上生きるエルフからしたら、ほとんど一瞬のようなものでしょう。しかしその一瞬の思い出が彼女を変え、彼女は「もっと人間を知りたい」と願うようになります。

この作品の面白さは、このエルフが人間と比べてほとんど不老不死であることから生まれていると思います。人間がどんどん老いて死んでいくなかで、彼女だけはほとんど変わらず、思い出を持ち続けている。そんな不変のエルフが、魔王を倒した80年後の世界を旅することで、勇者たちのことを次々と思い出していく。このへんの描写がなんとも魅力的です。

あと「勇者が魔王を倒しに行く」という文脈は、かなりすんなり飲み込めました。このあたり、ドラクエの影響力の偉大さを感じずにはいられませんね。

推しの子

「捏造して誇張して都合の悪い部分はきれいに隠す ならば上手な嘘をついてほしい」

アイドルオタクが、推しの人気アイドルの子に転生する、というちょっと突飛な設定の漫画。自分はアイドル業界にまったく詳しくないのですが、作画の横槍メンゴさんの名前を見て手を出しました。横槍さんが以前に書いた「クズの本懐」もめちゃくちゃ刺さる漫画でしたね。

主人公が「前世の記憶を持っている」という設定がうまく活かされていておもしろいです。赤ん坊がヲタ芸を打ったり、幼稚園児が京極夏彦のサイコロ本を読むシーンは思わず吹きましたw

直近では、恋愛リアリティショーの闇を描く新章に突入しており、続きが気になる作品です。

違国日記

「彼女はたびたびわたしの知らないまるで違う国の言葉で話した」

35歳の女性小説家が、姉が亡くなったことをきっかけに15歳の姪を引き取って共同生活をする漫画です。

主人公は人見知りで社交性にかなり難があって、家事などの生活能力も低めなので姪との生活がしんどくて仕方がない。いっぽうの姪は人見知りとはかけ離れた性格で、叔母が何に苦しんでいるかさっぱり理解できない。

このように、二人はなかなか噛み合いません。しかしこの漫画は、二人がわかりやすく仲良くなって家族になっていく…みたいな安易なことはしません。噛み合わない二人を、二人の公約数の中に押し込めることもしません。「そもそも理解しあえないんだ」ということを前提に二人の距離感を丁寧に描いていて、それがすごく誠実な漫画だなーと感じています。

その意味で、タイトルの「違国」というワードは秀逸ですね。二人はそれぞれ違う国の住人で、二人の共同生活は異文化コミュニケーションそのものです。

生き残った6人によると

自分が愛してやまない山本和音さんの新連載です。

千葉県でゾンビが大量発生して、とっさにショッピングモールに立てこもった若者6人。男3、女3の即席シェアハウスと化したモール内で、若者たちのややシュールな恋愛と、ゾンビとの戦闘が絶妙なバランスで描かれています。今のところ、文句なしに面白い。

まだ単行本は出てませんが、十何年かぶりに漫画雑誌を定期購読しています。月刊誌なので、毎月毎月うずうずしながら待っています。感想を読者ハガキに書いて送るのが習慣化してきていて、自分の感想が掲載されて嬉しくなったり。

購読のきっかけは以下の記事に書きました。

まとめ

今年読んだ漫画を、雑に振り返りました。こうして見ると、なんか流行りの漫画ばっか読んでるな…。たぶん漫画に対するアンテナが低いので、有名な作品しか引っかからないのでしょうね。知らざる名作がまだまだたくさんあるに違いない。

振り返って思うのは、やはり漫画の表現力は凄いなと。自分は小説も人並みに読みますが、漫画には小説とは全く違う質感と迫力があります。

昔読んだ「バクマン。」という漫画に「漫画より小説のほうがどう考えても文化的に上」みたいなことを言うキャラクターがいたのですが、文化的に上だの下だの論じることがそもそもナンセンスだなと思います。

面白い漫画は文句なしに面白いし、小説もまた然りです。来年も食わず嫌いせずに、面白いものは小説でも漫画でも貪欲に読んでいきたいと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました!