自殺をするならこんな日だろう
清々しく晴れた空。雲一つない世界が私を見下している。
昨日のように大雨が降っていて、湿度の高い世界ならば私は今日も部屋の窓から外を見つめ " 嗚呼、憂鬱だ " などとボヤいていたのではないだろうか。
" 嗚呼、死にたい。死のう、今日死のう " そう思った日に限ってこんなにも澄んだ空気だ。
「自殺をするならこんな日だろう」
私はサイズの合わないスーツに袖を通した。
昔昇進した際に、上質な生地で仕立ててもらったものだ。寸分の狂いもなくピッタリと身体にフィットしていたスーツも今じゃブカブカ……
" 肥ったら着れなくなってしまうから、これからはより一層気を引き締めなければな "
なんて冗談を言っていたはずなのに……どうしてこうなったのか。
鏡を見ながら黒いネクタイを締めると、誰かの葬儀にでも行くように見えるが、今日は私が世界へ別れを告げる日だ。
「我ながら酷い顔だ」
頬が痩けて髭の伸びたその顔は実年齢よりもかなり歳を取って見えた。
死んだ後、誰が最初に発見しようが自分には関係はないし、そんな事を気にした所でどうにもならないが、何となく伸びた髭を剃り、髪の毛にグリースをべたりと付けた。伸び切った髪の毛も何とか収まり、少しだけ背筋が伸びた気がした。
「さあ、行こうかな」
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