ヴィトは未だ知らぬ世界へ
青く晴れた空、風も穏やか、今日は絶好の狩猟日和。
今日は幼馴染のリックの弟、ルイの十歳の誕生日だ。
「おい、赤毛。準備出来てんだろうな?」
「あら、今日はいつもよりおじいちゃんに見えるわよ? リック」
リックは昔から白髪が多くて、良く笑うせいなのか顔に皺も多い。そのせいでまだ十四歳だというのに老人に間違えられる事が多い。
「矢は多めに持って行った方が良いかもな。上手く急所に当てられなくて、矢が刺さったまま逃げらるかもしれない」
「ルイはリックが思ってるより弓、凄く上手だよ? もう今日で十歳なんだから、もっとルイの事認めてあげたらどうなの?」
リックにとって可愛いたった一人の弟で、たった一人の家族だからか、少々過保護が過ぎる。今日からルイも大人の仲間入り、一人前になるんだから……これからはルイにももっと沢山の経験を積ませてあげないとならない。
私達の暮らすソレヴラ村では十歳の誕生日に成人の儀として、近くの森でプレグロフォという鳥を狩猟して帰ってくるのが風習になっている。
プレグロフォは私達にとって贅沢な食べ物で、普段の主タンパク源になっている養殖のヴィアンプーとは脂の乗りが天と地の差だ。
ただ、このプレグロフォは希少価値が高く、見つけるのも一苦労……
そして何より気性が荒く、人間を見ると襲いかかってくる事も少なくない。
なので、もう成人した狩人を二人護衛に付けて狩猟へ向かう事になっている。
「ヴィト姉ちゃん! 準備できた?」
「ルイ! お誕生日おめでとう。こっちは準備バッチリ。プレグロフォ狩猟、頑張ろうね」
「はあ……今日中に見つかってくれますように。俺は絶対野宿したくねえからな」
リックはこんな感じで嫌な態度を取っているが、本当はルイの事を心配しているから今日中に狩猟してソレヴラ村に戻って来て、家でしっかり休ませてあげたいのだろう。
「僕はヴィト姉ちゃんとリックと野宿でも気にしないよ! 楽しそうだし!」
「まあそれも良いけど、早い所プレグロフォ持って帰って村の皆に安心してもらった方がリックも嬉しいんじゃない?」
「ちげーよ。俺は久しぶりのプレグロフォを早く食いたいだけだ」
リックはそう言うと沢山の荷物を担いで、村の出入り口へ向かって行く。
「はいはい、じゃあ早くプレグロフォ狩って村に帰ってきて、皆でお祝いしなきゃだね」
「頑張るぞー!」
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短編の詩集です。
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