彼女の指先は何を奏でるか ⑦

 彼女が家に帰って来なくなって十日になる。財布は空っぽ。行く場所もない。食べられそうなものも既に底を突き、八方塞がりとはこの事では? と色々な面で不安になっている。
二年と十日程こうして生きてきたツケが回ってきたのだろう。彼女の存在と言葉に甘えて生きてきた男の末路……孤独死?

「帰ってきてくれ……お腹空いたよ……」

お腹が空いた……
それだけなのだろうか。何だかわからないけれど、言葉に出来ない気持ちが胸の奥で蠢いているのを感じていた。

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