ラストレター ⑤

 「そのちっぽけな命で何ができると言うのか。泣こうが喚こうが何も変わりはしない。お前の世界は私の掌より小さいのだから」

「俺は……俺は……」

──

 窓の隙間から優しく涼しい風がこっそり入ってきて、僕の頬を撫でる。
夢の中では大切なものを、大切な人を守る為に必死に船を漕いでいた。
毎日頭の中で反芻する劇の台詞と絡み合うように、最近の僕は夢の中でも大切なものの為に必死になる事が増えていた。
窓の外に鎮座する大きな木に茂る葉もいつの間にやら黄色く色付き、半月前とは違う冷たい風を感じられるようになっている。
心なしか乾いた香りが家の中を満たしている。

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