せめて平穏を

 あの娘が帰ってきて、一年と少しが経った。
 帰ってきたあの子は記憶を失っていたが、先日妻とマギュパイキを作った時に記憶を取り戻したようだ。
 だからといってすぐに色々な出来事を受け入れる事は出来ないのだろう。毎日のようにうなされているヴィトを見ると、代われるものならば私が代ってやりたいと心から思う。
 リックにルイ……君達も無事にこのソレヴラへ帰ってきてくれ。そしてまた三人で楽しそうに笑う姿を見せておくれ。
 それが私の、この村の皆の何よりもの願いだ。
 これだけの時間音沙汰がないという事は、リックとルイも記憶を失っているか……どこか遠くの村で助けられているか……考えたくはないがもしかすると……
 私がこんな気持ちでいては良くないな。
 ヴィト、私はお前の純真無垢なあの笑顔がまた見たいよ。

 「ヴィト……私は釣りにでも行こうと思うが……一緒に来るか?」
 「ごめん、今日は大丈夫」
 「そうか。じゃあ……行ってくるよ」

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