月食

 月が綺麗で空気の澄んだ三日月の夜。香の優しい香りが部屋一面を包む。

「嗚呼……もう半分以上も食べられてしまったのね」

人はいつだってそうだ。いずれ誰しもが死ぬのだというのに、今日もどこかで身を投げる。その決断をするまでにどのような生き方をしてきたのだろう。私がこうして月を見上げている間、どこかの見知らぬ誰かは自分の中の闇と戦い続けているのだろう。
きっと皆何かを失い、喪失感に苦しみ、 " 自殺をするならいつにしようか " と壁を見つめているのだろう。

「嗚呼……月はこんなに美しいのに。闇に貪られていようと」

私は私自身の死を恐れた事は一度もない。いずれくるその時に、身を任せる事しかできないのだから。
それが病か事故か……その時にならねばわからない事。
出来る事ならば、天寿を全うし、貴方の腕の中安らかに眠りたい……もう叶わない事だけれど。

「お月さん、アナタ痛くないの? 日に日に齧られ擦り減って……」

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