見出し画像

2024年を迎えて

 小田玄紀です

 新年あけましておめでとうございます。

 毎年、少なからず社会情勢も人生も変化が起きていますが、昨年は私自身にとっても仕事環境の変化があり、これまでとは違う新しいチャレンジをする機会にも恵まれました。

 この1年がどのような1年になるか、正確に見通すことは出来ませんが、自分自身が動く/動かないに関わらず社会は確実に変化していくので、それであれば自らも変化に対応し、また、変化を創出していきたいと考えています。

 特に、今年は大きな変化の1年になると思います。

 まず、社会情勢ですが今年はロシア・ウクライナ情勢に一定の変化が生じると考えています。世界経済フォーラムはこの3年間はロシアを国際法に反しているとして会員から除名処分をしています。しかし、この流れは今年中に変化が生じると想定しています(このあたりは1月15日~19日で開催されるダボス会議にても状況を肌で感じてきます)。

 特に今年は世界的に選挙の年ですので、主要各国の選挙結果によりウクライナに対する継続的な支援が出来るかどうかが大きく影響をしてきます。早ければ今年の春頃まで、遅くても冬までには状況が変わっているはずです。

 このロシア・ウクライナ情勢に影響してエネルギー問題にも変化が生じてきます。一時的にエネルギー価格が沈静化する可能性が出てきます。ただ、数年前には想定していなかったレベルで様々な製品の電化が進んでおり、また、電気消費量は増加傾向にあります。おそらくこれから数年~10年でさらに飛躍的増加となる可能性があります。

世界の電力消費量推移

世界の電力消費量 | 電力消費量 | Enerdata

 この電力需要を応えること、また、CO2抑制を実現するためには従来の発電方法では限界があるため、今後は高性能な原子力発電や核融合発電などがより大きな意味を持ってくると思います。

 各国の景気を考えた場合、アメリカや中国は景気減速または後退可能性がありますが、中東やインド、アフリカなどは引き続き大きな成長ポテンシャルがあり、このあたりを含めた地政学の変化が2030年頃までにかけて生じてくると思われます。

 このような変化もある中で、2024年をどのような1年にしていくかを考えてみます。

1.暗号資産市場
 暗号資産業界では4年に1度のサイクルで好景気の波が来ると言われています。とはいえ、まだ業界として成立したのが2016年以降なので本当に再現性があるサイクルなのかは何とも言えませんが、それでも2024年は暗号資産業
界にとって大きな1年になることは間違いありません。

 まず、今年4月にはビットコインが半減期を迎えます。半減期になると1回あたりに新規発行されるビットコインの量が半分になります。現在は1回のマイニング(10分程度に1回)にて6.25BTCがマイナー報酬として新規発行される仕組みとなっています。これが次の半減期以降は3.125BTCが新規発行量となります。

 ビットコインの総発行量が2100万BTCに対して既に1958万BTCと93%以上が発行されているので全体的な需給にはそこまでの影響を与えないのではないかという意見もありますが、それでも新規供給量が減るということ、また、半減期=価格上昇という期待感から暗号資産市場に影響を与えることは間違いありません。

 また、1月には現物型ビットコインETFが承認される可能性もあります。これも従来は暗号資産への投資に対して拒否反応を抱いていた機関投資家等が暗号資産への投資に触れるきっかけになります。

 さらに、今後日本国内でもビットコインETFが扱われるようになってきた場合、税制の問題も検討されることに繋がるかもしれません。これまで、暗号資産については自社発行暗号資産については法人が期末時点で保有する暗号資産については未実現(売却せずに暗号資産として保有しているもの)は非課税となり、また、令和6年度税制大綱にて他社発行暗号資産についても長期保有性が認められる分については法人期末保有暗号資産に対して課税されないことになりました。

 しかし、未だ個人においては暗号資産取引における税金はその収益について最大55%が課税対象となり、また、過年度損益通算が出来ないこととなっています。

 これがビットコインETFの場合は金融商品扱いになるために株式同様に申告分離課税となり過年度損益通算も可能になると思われます(現時点では明確に国税庁の見解がある訳ではありませんが、税法を考えた場合にはこの認識になります)。

 なお、暗号資産については未だに『原資産がなく価格形成に合理性がないので投資ではなく投機だ』と考える人が多くいます。金融の根幹にあるのは信用であり、暗号資産の場合は発行量についても残高についても全てシステムで行われており、改竄されない設計となっているため、人為的に発行量が左右されない法定通貨よりも信用を感じる人たちが一定数以上いるために価格形成がされており、その意味では信用の総和として現在の暗号資産市場が形成されています。現在のビットコインの時価総額は120兆円弱であり、イーサリアムの時価訴額は40兆円弱となります。これら2つの暗号資産のみで160兆円の時価総額となります。

 昨年末は東証上場企業の企業で時価総額10兆円を超える日本企業が過去最多の10社になったという報道がされました。

時価総額10兆円超の日本企業、最多の10社 2023年末 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 これら10社の企業の時価総額を合算するとちょうど160兆円となります。つまり、日本の上場企業上位10社の時価総額合算値と暗号資産上位2つの時価総額合算値が同じなのです。

 また、主要暗号資産の1日あたり取引量は10兆円を超えていますが、東証の平均1日あたり取引量は3.8兆円です。以前は暗号資産は非常にボラティリティが高く、たしかに投資対象としてはなかなか対象にすることが困難だったかもしれません。ただし、取引量が増えて流動性が高くなることでボラティリティは自然と抑制されることになります。

 この客観的事実をもって、そろそろ「暗号資産なんてただの投機」という考えを見直す契機になってもらいたいです。

 なお、暗号資産については多くの人がマネーローンダリングやハッキング等により犯罪資金がテロリストや北朝鮮等に流れてしまっているという考えをしている方もいると認識しています。

 しかし、この数年間の業界の取組みにより、大きく状況は変わっています。

 マネーローンダリング対策については、昨年6月に犯罪収益移転防止法が改正され、FATFトラベルルールが施行されました。これは日本および20法域(今年から9法域追加されます)のVASP(暗号資産交換業者およびそれに類する事業者)間の暗号資産の送受金については送付者および受領者の確認が義務付けられ、本人確認が出来ない場合には暗号資産の移転が認められなくなりました。この対応は主要先進国で日本が最初に対応をしました。

 また、暗号資産というとハッキングのイメージが強いですが、実は日本では2020年以降は暗号資産交換業者からのハッキングは1件も起きていません

 顧客資産は分別管理をしており、法定通貨は信託会社に信託をしており、暗号資産も実質100%コールドウォレットで管理をしています。昨年も海外の暗号資産交換業者や無登録業者にてハッキング事件が発生しました。しかし、日本の暗号資産交換業者からのハッキングはこの3年間以上発生しておらず、テロリストや敵対国に資産供与されていません。

 昨年はIVSやWebXなどWeb3に関する国際的なイベントが日本でも開催され、1万人を超える参加者が訪れるなどWeb3に新しい流れを感じさせる1年になりました。

日本の暗号資産交換業者の規制対応状況~冬から熱い夏へ IVS2023~|genki oda (note.com)

 なお、これだけ日本国内の暗号資産交換業者はセキュリティ対応やマネーローンダリング対策などを徹底しているにも関わらず、多くの資産が海外又は無登録業者に流れてしまっていることが現在の業界の問題の1つだと考えています。

 過去の取引量などから考えると本来日本人はより多くの暗号資産を保有しているはずですが、多くが海外移転または無登録業者に移転されてしまっています。暗号資産を取り巻く様々な問題がこうした海外/無登録業者で起きている中で、これらの解決を業界の健全化のためにも実施していく必要があります。

 以前は、日本国内では取引可能な暗号資産数が少なく、海外取引所を使うことの必然性がありましたが、この数年の努力にて日本国内の暗号資産審査およびIEO審査は大きく改善されました。

 既に100銘柄近い暗号資産が日本で売買可能となっており、これは今年もさらに増えると期待されます。

 昨年6月に資金決済法が改正され、法定通貨担保型ステーブルコインの発行及び流通が日本国内で認められるようになりました。ステーブルコインもWeb3市場の拡大に大きく貢献してくることが想定されます。

 攻めと守りの両輪を強化し、今年も暗号資産市場/Web3市場をより魅力的なものにしていきます。

2.半導体市場
 ひょんなことから、昨年からは半導体事業にも関わるようになりました。むしろ、昨年知り合った方は私のことを半導体業界の人と思っている人も多くいるのではとさえ感じています。

PSMCとの日本国内での半導体工場設立に向けた準備会社の設立に関する基本合意について|genki oda (note.com)

半導体事業~JSMCの取組みについて~|genki oda (note.com)

 これらのNoteに半導体事業のことは詳しく書いていますが、勉強すればするほど半導体はありとあらゆる産業に影響を与える事業ですし、また、石油に代わる産業のコメとして多くの国が半導体確保に力を注いでいる理由が分かってきます。

 JSMC(SBIとPSMCが立ち上げたJV)は半導体のファウンドリという位置付けなので、直接的に製品をつくるところまでは関与をしないですが、それでも半導体がないと良質な製品が出来ないので、半導体ファウンドリの果たす役割は極めて大きいです。

サムスン、同時通訳スマホ発売へ まず英語など - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 昨年末にサムスンが同時通訳スマホを発売するというニュースが出ていました。これは、従来のようにアプリベースでの翻訳機能ではなくスマホに専用半導体を入れることでこのようなことが可能となっています。

 自動車が電気自動車化していくことでも半導体は従来の3倍必要になると言われていますが、生成AI市場が成長していく上でも半導体は必要ですし、自動運転においてもドローン産業にも求められます。

 それぞれの用途に最適化した半導体もこれから求められてくるかもしれません。たとえばBlockchain Chipのような特定のブロックチェーン処理をセキュアにかつ高速処理を実現する半導体も出来ていくかもしれないですし、「My Chip」といって特定の人の考えや頭脳を半導体化していくことになると考えている人もいます。

 半導体市場がこれから益々大きくなることは間違いありません。その中で、日本がどのようなポジションを担っていけるのかがこれからの国際社会における競争力確保のためにも重要です。この一端に貢献できるよう、今年も取組みを続けていきます。

3.金融市場
 以前、以下のNoteで日本の強みの1つが家計金融資産であると書きました。

世界経済フォーラムYoung Global Leaders年次総会|genki oda (note.com)
 
 この家計金融資産をどのように適切に活用していけるかが個人にとっても国全体としても大きな意味をもたらすと考えています。

 以前から「貯蓄から投資へ」というスローガンで日本政府としても投資促進を提唱してきました。その結果、どうなったのか・・・

 なんと貯蓄の割合が1995年当時49.0%から2022年54.1%とスローガンに逆行して「投資から貯蓄へ」になってしまっています。これは本当にもったいないことであり、なぜこうなってしまったのかは冷静に考えないといけないと思います。

 個人的には「貯蓄から投資へ」というスローガンを変えるべきではないかと思います。『貯蓄』か『投資』かという2項対立で物事を考えるのではなく、金融資産を増やすことが重要です。政府も資産所得倍増計画という名称で投資促進を図っていますが、「倍増」というのはなかなかチャレンジングな言葉であり、むしろ投資をしていない人からするとリスクを感じてしまうので、「家計金融資産を2000兆円から3000兆円へ」というスローガンを掲げ、これをいつまでに実現するのか、また、どのように実現していくのかを考えていくのが良いのではないでしょうか。その上で、『貯蓄』と『投資』のバランスを考えていくことが大事だと思います。

 実際に過去のFactでも2000年からの20年間で家計金融資産は1.4倍になっています。つまり、これまでのやり方だと20年後には家計金融資産は3000兆円になっている蓋然性は高くあります。

 しかし、米国のように運用リターンを強化することで2030年までに3000兆円を実現できる可能性もあります。
 
 これから人口が減っていく中で、金融資産をどのように効率的に運用していくかは日本全体にとっても重要なテーマです。また、これは個人においても重要なテーマです。

 私も大学生の頃に「金持ち父さん貧乏父さん」を読んで、資産運用の必要性が腹に落ちました。もちろんはじめの頃は投資をする資金はありませんでしたが、それでも仕事をして投資をする資金を貯めてから徐々に投資をはじめていきました。

 如何にして不労所得をつくっていくか、これは多くの人にとって生活をより安定的にしていくために重要なテーマです。少しづつでも投資をはじめていくこと、また、投資に絶対はないので、可能な限りポートフォリオを分散していくことが大事です。

 今年からは新NISAもはじまります。年間最大360万円まで合計1800万円までの新NISA口座取引について課税されないという極めて画期的な制度です。こうした制度も活用し、これまで投資をしてこなかった人こそ投資をはじめてみるタイミングです。

4.2024年をどう活かしていくか
 時間は全ての人に平等ですが、時間の使い方によって得られる結果は非常に不平等です。

 起きていても寝ていても、頑張っても頑張らなくても時間は等しく過ぎていきます。時間の流れは変えられませんが、時間の密度は変えられます。

 2024年をどのような1年にしていき、今後の人生においてどのようにこの1年を活かしていくか、これが大事な心掛けだと思います。

 はじめて投資をしてみる。
 はじめて暗号資産を買ってみる。
 はじめて起業をしてみる。
 はじめて寄付をしてみる。
 はじめて転職をしてみる。
 はじめて海外留学をしてみる。

 はじめての経験は勇気がいりますし、上手くいかないことも多く出てくると思いますが、その経験こそが将来に繋がる財産になるはずです。

 皆さんにとって2024年がより良い1年になりますように!

 2024年1月1日 小田玄紀
 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?