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半導体事業~JSMCの取組みについて~

 小田玄紀です

 7月5日にSBIグループにて半導体事業を取り組むことについて記者会見にて発表を行いました。

PSMCとの日本国内での半導体工場設立に向けた準備会社の設立に関する基本合意について|genki oda (note.com)

 その時の概要が上記のNoteになりますが、この発表をしてから想像を超える目まぐるしい日々となりました。

 半導体工場の誘致をするべく、31の地方自治体から連絡を頂き、多くの自治体の首長から熱意に溢れる、かつ、非常にスマートなご提案を頂きました。

 本日はこの半導体工場の予定地について、政府からの一定水準以上の補助金交付を受けることを前提として、決定をしたことについて、記者会見を実施いたしました。

半導体ファウンドリ設立の進捗に関する記者会見 (sbigroup.co.jp)

 詳細はこちらに開示していますが、今回、宮城県の第二仙台北部中核工業団地をJSMCの半導体工場用地として選考をさせて頂く運びとなりました。

 半導体工場には一定規模の面積に加えて、水や電気、物流など様々な条件が求められます。7月5日に会見をした際には、適した用地が見つかるのかということが不透明な状況でした。

 しかし、この不安はすぐに払拭されました。

 日本は広く、全国様々にそれぞれの魅力や価値ある資産がありました。当初、必要条件としていた項目については満たす適地がすぐに見つかり、そこから先は工場を設置することで当該地域の住民や地域環境に過度にネガティブな影響を与えないかどうか、従業員にとって働きやすい環境かどうか(含むご家族の教育/医療環境)、人材採用・育成においてポジティブかどうか、建設会社の協力体制など十分条件(付加価値事項)を含めて検討をすることになりました。

 これらの点を総合的に加味した結果として、PSMCが最適な用地として宮城県第二仙台北部中核工業団地が選考されるに至りました。

 本日の記者会見で記者の方から、「なぜ、他の候補地がダメだったのか?」という質問もあったのですが、機会があれば他の土地でも半導体工場をやりたいと思っていますし、また、今後場合によっては第2工場、第3工場を今回選考外となった土地で展開をする可能性もあります。

 それ程、日本には適した土地があるということを今回実感しましたし、また、地方自治体のリーダーの方や職員の方が非常に熱意のあるプレゼンをして頂いたことに、地方の可能性を感じました。

 また、収益性があり成長性がある産業を創出していくことこそが、地方創生の要だということを痛感することが出来ました。

 なお、今回の半導体事業においては当初は40nm、55nmの半導体を生産し、第2フェーズで28nmとWoW半導体の生産をしていきます。

 これらは最先端・先端とされるシングルナノ(2nmなど)ではありませんが、車載用半導体は28nm以上が需要の90%以上を締めています。半導体は小さくなればなるほど、特定用途に適した面はありますが、小さくすればするほど技術水準も上がり、その分コストも高くなります

 28nm,40nm,55nmでも十分に需要があり、また、コスト効率を考えた場合に適している市場が確実に存在します(なお、現在は90nmや100nm超えが使われているケースがまだ多いので、28nm,40nm,55nmでも十分に小さいですし、そもそもナノメートルの世界の話をしています)。

 主に上記のような市場においては今後も市場は伸びてくると考えています。
 
 また、JSMCの最大の価値はWoW技術にあります。WoWはWafer on WaferのことでありPSMCが商品として確立している独自の3D積層技術です。

 PSMCは世界で唯一、ロジックとメモリの生産をしている半導体ファウンドリです。このため、WoWを自社製品で完結して作ることができます。

 従来の半導体は配線で接続をしています。WoWにより配線がなくなり、これが消費電力の抑制に繋がります。一般的な製品と比べて1/10に消費電力を抑制することが出来ます。また、Wafer間の接続数が増加するため、情報の高速転送が可能となります。

 省エネという観点と演算能力の高さから様々な用途へJSMCの半導体は活用される可能性があります。ドローンについても、航空時間を延ばすことが可能になるかもしれませんし、スーパーコンピューターにおいても省エネはもちろん演算能力のさらなる向上に貢献できる可能性もあります。
 
 コスト競争力はもちろんのこと、独自の付加価値を提供していける余地があります。

 このような半導体ファウンドリを日本に展開していくことは非常に大きな意義があります。特に28~55nmの半導体は現状は国内需要の5.2%しか国内生産が出来ていませんでしたが、JSMCの取組みを含めて国内生産割合を43.7%にまで上昇出来る可能性があります。

 また、JSMCは半導体の前工程を担うファウンドリになりますが、今回は後工程を担う企業の国内誘致や日本での後工程ビジネスの立ち上げも国内企業と連携して実現していくことも考えていきます。

 半導体の素材や機械は日本国内産が多くあります。ただ、半導体の設計(デザインハウス)や生産(ファウンドリ)は日本国内産業が空洞化してしまい、台湾・韓国など海外に移転してしまっていました。
 
 さらに、生産された半導体を商品に組み入れる部分(後工程)も海外で実施されるケースが大半であり、ここで組み立てられたものが自動車メーカーなどに納品されるというフローになっていました。

 原材料となる素材や最終製品の生産拠点は日本国内にあっても、半導体の生産や商品に組み入れる段階が海外にある現状では、半導体不足による国内産業のサプライチェーンの安定が脅かされるリスクが常にあります

 今回、JSMCの取組みにより前工程の国内生産化には寄与していきますが、ここで後工程が海外にいってしまうとサプライチェーンが断絶してしまいます。後工程を含めて国内生産化していくことで、真の意味でサプライチェーンの安定化に繋がっていきます。これも今回我々がチャレンジしていくことの1つです。

 さらに、これだけでなく「半導体の生態系」を創出していこうというのが本日のプレゼンで一番伝えたかったことです。ここにチャレンジすることが非常に大きな社会的意義があることです。さらに、これを日本国内だけでなく海外にも展開していくことが出来れば、日本が世界に貢献できる取組みに繋がっていきますし、産業のコメと言われている半導体のグローバルサプライチェーンの拠点を日本が担うことが出来れば、日本の地位向上にも繋がっていくのではないでしょうか。

 過去に国内外に多くの半導体関連企業に投資をしてきましたし、今後もこの流れを加速させていきます。

 本日の発表は用地選定の結果だけではなく、こうしたチャレンジを表明していくための場であったことを伝えるべく、Noteにまとめさせていただきました。

 2023年10月31日 小田玄紀


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