見出し画像

サスティナビリティからランニングを考える 3

 私は1995年にマラニックと出会った。Hendersonが言う「永らく続いてくれるランニング」という点では、マラニックも同類のような気がしてならない。大会を開催する場合でもマイコップを配布したり、ゴミを拾いながら参加して頂くなど持続可能性という視点では、その要素を十分に内包しているとも考えている。そこで、持続可能性という側面からマラニックについて述べてみたい。

心と身体に優しいマラニック
 厚生労働省は、健康づくりのための運動指針として、運動の強さを表す単位「METs」を使って一定以上の身体活動量・運動量を充たすことを推奨している(上表)。
 具体的には、このMETsに実施した時間(hour)を乗じた単位(METs×時間)をEx(Exerciseの略)とし、健康維持と増進のためには23Ex/週(そのうち活発な運動を4Ex)を、またメタボリックシンドローム該当者とその予備群に対しては、10Ex/週を行うことが望ましいとしている。スロージョギングに時々歩きを交えてマラニックを行った場合、そのトータルの運動強度は4~5METs程度になると考えられる。したがって、1時間のマラニックを週に5回行った場合は、20〜25Ex/週となることから、厚生労働省が推奨する健康維持と増進のための身体運動の条件を充たしやすくなる。身体運動だけではなく、ピクニックのようにのんびり行なうマラニックは、日常の緊張感から心が解放されて自由な感覚も楽しめる。苦しいけれどずっと走り続けなくてはならないという葛藤と向かい合うこともなく、少し疲れたら休んだり歩いたりして行えるため、普段走る習慣がない人も、自分は走れないと思いこんでいる人も敷居が低くなるので実施し易い。しかも、ある程度の距離を移動するので、そこそこの達成感さえ味わえる。普段走ったことがない人が、初めてマラニックを体験すると、身体を動かすことへの嫌悪感や苦手意識から解放され、身体運動に興味を持てるようになる場面をよく目にする。きっと体験した時に抱いた充実感やその楽しさが、運動不足気味だった日常で、身体運動を行うことへの動機づけになるのであろう。
 一つ付け加えておきたいのは、マラニックは競走しないので、大会の参加者同士の敷居が低く、コミュニケーションを取りやすくなるという特色である(※競走すると仲間が出来ないという訳でもないが)。北海道で開催しているマラニック大会によく参加してくださるある経営者からこう言われた「マラニックは走る異業種交流会みたいですね」と。老若男女、多種多様な職業で、しかも走る人だけではなく走らない習慣の人までもが集い、歩いたり走ったりしながら会話して、エイドステーションでは一緒に飲み食いするという交流を通じて親しくなるのだから、確かに「歩き走りの異業種交流会」とも言えるのかもしれない。
 マラニックは、健康に関連する運動習慣への入り口としての役割に加え、人と人とが繋がり、人間関係の輪が広がることで人生をより豊かな方向へ導いてくれるツールとしての役割もあるように思う。Hendersonは、LSDとは人に優しいランニングと言っている。マラニックも少し違った切り口ながら人に優しいランニングと言えよう。

4へと続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?