親は毒あんのが普通だと思ってた

自分が機能不全家庭で育ったと気付いたのは人生のごく最近の話で、それまで僕は
自分の親を普通の親だと思っていたし、自分の家庭をごく普通の家庭だと思っていた(というか今でも思っている)。

"このぐらいはアタリマエ"

これは呪いだ。

味噌汁をうっかりこぼしたら、どやされて当たり前。僕が悪い。
せっかく用意した父の日のプレゼントを、素直な言葉で渡せなかったらどやされて当たり前。お姉ちゃんが悪い。
夕飯の時間に帰ってなければ、いくら玄関が開いた瞬間に謝ったってどやされて当たり前。お姉ちゃんが悪い。
ご飯中にトイレなんか行ったら縛られて当たり前。幼少期のお母さんが悪い。
虫歯は必ず大人から移るのだから、いくら孫と楽しく遊んでいただけと言っても紙風船を直接口で膨らませたらどやされて当たり前。お父さんが悪い。でもおじいちゃんは性根が悪じゃないからいい(よく分からない)。
お兄ちゃんがどやされてんのってそういや見たことないな。僕の記憶力に間違いは絶対ないからホントにない。お父さんと怒鳴り合ってたことだけ。かわいそうな存在だからかな? 僕がお兄ちゃんにキョーミないから覚えてないだけかな? 僕が生まれる前、お兄ちゃんがかわいそうになる前はどやされてたのかな? あんまキョーミないな。多分、何かしたらどやされてたんだろう。お兄ちゃんが悪い。


当たり前、アタリマエ。
そうすべき。
それが普通。
だって悪いことしたんだもの。
しつけするのが親の務めでしょ。
全員、悪い。
悪いことしたら、どやされる。
それが普通。


結果、僕はしつけられた風でいて、社会規範を守る人間には全く育たず、果ては犯罪者となった。

そう育ったのも、犯罪を犯すのも、僕の意志・僕の責任だ。僕が悪い。
同じように育てられても、真っ直ぐ生きる人だっているだろう(し、そっちの方が大多数だろう普通だろう)。

だから僕が悪い。
どやされて当たり前。
アタリマエ。
当たり前なんだ。



僕は僕の心に素直に、正直に、生きていたい。
ただ、それだけなのに。

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