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暴走した勇者の弾丸|詩

クエスト発生の通知が来た

どうしてそんなに傷だらけなの
どうしてそんなに泣いているの

目の前で泣き崩れている人に
私は矢継ぎ早に問う

他人事ではないんだと
勇者の如く立ち上がり
躍起になる

どうにかして涙を止めようと
アーティスト気取りで創意工夫し
優しいフリをした正論を並べる

一方的な提案を散々撃ち放って
ミッションクリアの快感に包まれる

その報酬で得た脳内麻薬が
身体中に浸潤し
祝福のゲーム音が鳴り響く

しかし相手の顔をよく見ると
さらに心を閉ざした様子で
泣いている

私はあなたの涙を止める為に
こんなに差し出しているのに

暴走した感情移入の弾丸を装填し
涙が止まらないのは
あなたの理解力が乏しいからだと結論付けて
あなたに向けて発射する

地面に倒れたあなたに触れて
取り返しがつかないほど冷たい皮膚に驚く

身体中から
血液が流れ出ていく様を
目の当たりにして
やっと気がついた

なぜ真っ先に傷の手当をし
温かい毛布でくるんであげないのか

なぜ冷たく震えるその手に
温かい飲み物を持たせてあげないのか

なぜそばにいて
一緒に泣いてあげることができないのか

あなたの死と同時刻に
誰にも望まれない
立派な偽善者が誕生した

目の前では
あなたが創った血の海で
私の弾丸がたゆたう

誕生してすぐに絶望した私は
人助けの快楽の海で溺死し
今日を命日とする


いかがでしたか☕️
タイトル画像は、ドアップで撮影したトマトジュースです。
投稿した直後は、なぜか息荒く興奮して、とても喉が渇くのですが、粘度の高いトマトジュースは適さないことが分かり、またひとつ賢くなった自分を誇りに思います。

私は雑に文字を置き、言葉を絡ませ、ぐちゃぐちゃと、丁寧に素手で潰します。文字を噛み切ります。足で蹴り飛ばします。画面に言葉を叩きつけて、今日も、これからも、読んでくださる皆様と、ひきつった笑顔で生きていきます。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


#詩 #ポエム #言葉 #創作 #エッセイ #写真

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