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映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記番外 ~頑張れロンドン、レインダンス映画祭参戦記

ロンドンに二度目のロックダウンが…

本作がロンドンのレインダンス映画祭の
ARTY部門招待作品として
上映が決まっていた本番の直前、
イングランドには
二度目のロックダウン決定が宣言されました。
欧州全体の感染拡大を受けての厳しい発令でした。
こんなシビアな事態を迎える今、
果たして本当に上映されるのだろうか。
いや、そもそもロンドンが非常事態にある中…
映画祭そのものが開催されるのだろうか。
映画祭どころではないのではないか。
さまざまな不安と心配が頭をよぎります。

映画祭、やります


スタッフを通じて連絡がありました。
予定通り開催とのことです。

そして上映後には、
オンラインでのQ&Aトークも
開催されるとのことです。

そして幕は開いた

現地時間11月3日16時からのオンライン上映。
それが終了してからのトーク…
ということは日本時間、真夜中の3時(!)です。
当日を迎え、その時間になってドキドキしながら
Zoomで指定された場所へつないでみます。

挨拶もそこそこに、さっそくQ&Aが始まります。

「なぜDaido Moriyamaの映画を
撮ろうと思ったのか?」
「モノクロの写真と、
カラフルな街のコントラストの意図は?」
「Daido Moriyamaの撮影スタイルとは?」
「それを追いかけるときの苦労と挑戦は?」

顔も姿も見えないけれど、
国籍も場所も年齢も
性別すらも分からないけれど、
世界のどこかからこの映画をたった今
観てくれた人々がいる。
そして、同じように
名前も顔も分からない一人の日本人に
今こうして一生懸命質問をしてくれている。
とても不思議で温かい気持ちになりました。
時間にしてわずか25分のQ&Aでしたが、
僕にとっては濃密で感動的な25分間でした。

こんな時だからこそ、の映画祭だった

正直言うと、
参加が決まった当初は
あわよくばロンドンに飛んで
パブでビールでも飲みたいな…
などと思っていました。
そんな自分をこの夜
ちょっと恥ずかしく感じました。

本来ならば華やかなお祭りとしての映画祭。
しかしコロナがそれを阻もうとしている今、
映画祭はにわかに違う役割を
果たそうとしているのではないか。

こんな時だからこそ、
映画を皆で分かち合おう。
オンラインだろうが何だろうが構わない。
みんなで一本の映画を同じときに観よう。
そして語り合おう。

海外渡航は勿論、
人が集まることさえ困難な今だからこそ、
映画を通じてどこかの誰かと「つながろう」。
会えなくたって、
顔が見えなくたって、構わない。
我々は一人ではない。
そのことを
映画祭を通じて今一度思い出そう、という
…これは、そんな誇り高き戦いなのかもしれないな。
そんな風にすら思えてきました。

コロナ禍により現地に行けなかったことで、
逆に映画祭のもう一つの力を
見たような気がしました。

最後にこんな質問が来ました。

「ストリートスナップを志す
若い写真家たちにとって、
Daido Moriyamaから
学ぶべきことは何だと思いますか?」

僕は答えました。

森山大道は、
一日中
驚くほど街を歩き回り、
驚くほど街にレンズを向けていました。
カメラなんて写れば何でもいい、といって
とにかく凄まじい量を撮っていました。
量に勝る質はないんだ、
つべこべ言わずにとにかく撮るんだ、と。
50年以上、
変わらずにずっとそうしてきたそうです。

レインダンス映画祭に参加させていただけて
本当によかったな、と思います。
スタッフ・関係者の皆さん、
どうもありがとうございました。




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