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2023なでしこリーグ1部シーズンレビュー

リーグ戦終了

2023なでしこリーグ1部は、10月9日の第22節で全試合終了。最終順位は以下のようになりました。

なでしこリーグ公式サイトより

WEリーグが創設され、12チーム編成になって以降のなでしこリーグ1部優勝チームの勝ち点を見ると

2021年 伊賀FCくノ一三重 勝ち点53(17勝2分け3敗)
2022年 スフィーダ世田谷FC 勝ち点50(16勝2分け4敗)
2023年 オルカ鴨川FC 勝ち点44(12勝8分け2敗)

20節終了時点でまだ5チームに優勝の可能性があり、今年は混戦でした。
優勝した鴨川は、勝利数では12と過去2年に比べるとかなり少ないですが、負け数は2と最少で、引き分けは断トツに多い8。
混戦の中、負けにくいチームだった鴨川がシーズン終盤で再浮上し、そのまま21節で優勝決定という印象でした。
夏の中断が終わり、リーグ再開後の7試合を上位5チームに絞って見ると

鴨川 〇〇△△〇〇△
名古屋 ×△×〇△〇〇
伊賀 ×〇〇×△〇〇
世田谷 ×〇〇〇△〇〇
ニッパツ ××〇△××△

と、オルカは唯一の無敗。
勝ち点は世田谷の16に及ばなかった(鴨川は15)ものの、着実に勝ち点を積み上げました。
以下、私が応援していたオルカ鴨川FC観戦を通して、全12チームを振り返ってみたいと思います。

各チーム短評

今シーズンの試合を観戦(現地、YouTube)した私の印象です。

大和シルフィード

【12位】
3勝4分け15敗 勝ち点13
得点19/失点62 差-43
(唯一2試合とも観戦できなかったので写真なし涙)
前年は2部で3位だったが、色々あってストレート昇格。しかしその幸運を活かせず、2021年降格→2022年昇格→2023年降格と俗に言うエレベーターチームに。
なにせ失点が多過ぎた。22試合でクリーンシートが1試合だけ。勝ったのも静岡×2と大阪で、9位から上のチームとの対戦は未勝利。シーズン半分(11試合)が3失点以上と、1部リーグの攻撃に耐えられる守備ではなかったのが残念。途中までは我慢してても、2失点くらいから崩れていく印象。

静岡SSUボニータ

【11位】
4勝5分け13敗 勝ち点17
得点23/失点35 差-12

2節の鴨川戦はYouTube観戦。雨の中接戦で、静岡は内容的にも案外中位あたりまで来るかとその時は思ったが、その後は意外と苦戦。大敗はそれほど多くないが接戦を落とすことが多く、21節終了後に2部の順位確定(アカデミーが準優勝)によってようやく残留が決定。

スペランツァ大阪

【10位】
5勝3分け14敗 勝ち点18
得点25/失点39 差-14

開幕6連敗を含め、折り返しの11節終了時点で1勝10敗と最下位。6月に浜田選手ら3選手を補強、7月には大野忍コーチを招聘。14節にはニッパツに勝利するなど持ち直し10位フィニッシュ。
シーズン終了後、浜田選手やリーグの生きる伝説でもある中野選手らが引退、9選手の退団、大野コーチの2024から監督就任などを立て続けに発表。

愛媛FCレディース

【9位】
5勝7分け10敗 勝ち点22
得点24/失点36 差-12

11節(鴨川1-1愛媛)では、先制も含め終始主導権を握るなど底力のあるチーム。元々守備のチームの印象はあったが、田子選手という大器(まだ高校2年生、6得点)が順調に成長すれば、更なる順位アップが見込めそう。

バニーズ群馬FCホワイトスター

【8位】
5勝9分け8敗 勝ち点24
得点28/失点37 差-9

昨年オフの15選手退団を考えれば、急造チームに近い編成で早々に降格回避を確実にした(中断前に勝ち点15)ことは上出来。リーグ最多タイの9引き分けに象徴される粘りは最終節の鴨川戦でも後半ロスタイム同点という形で発揮された。

ASハリマアルビオン

【7位】
7勝9分け6敗 勝ち点30
得点31/失点34 差-3

昨シーズンからの9連勝は開幕戦で止まったものの、5節で鴨川に0-2で敗れるまで23戦連続得点を記録。今年得点源になったのは、ニッパツから移籍のベテラン内田選手(2位タイ、12得点)。3連勝、3連敗、3連続引き分けなどあったが、降格とは無縁の安定飛行。

日体大SMG横浜

【6位】
9勝7分け6敗 勝ち点34
得点45/失点28 差+17

22試合45得点と、平均2得点越えでリーグ最多得点を記録。特に中断明け7試合(5勝2敗)で25得点と大爆発。この勢いの中で8得点を決めた北沢選手が、通算12得点でランク2位タイに急浮上。

ニッパツ横浜FCシーガルズ

【5位】
11勝4分け7敗 勝ち点37
得点36/失点29 差+7

10節に鴨川との無敗対決に敗れるまで7勝2分けなど、ずっと優勝戦線の主役であり続けたが、中断明けに急失速。19節のアウェー鴨川戦では0-3から追い付く意地も見せたが・・・。
対戦した中で脅威だったのはFW片山選手。12得点の決定力もさることながらポストプレーはほぼ無敗。全然ボール取れねえ。

スフィーダ世田谷FC

【4位】
10勝8分け4敗 勝ち点38
得点39/失点21 差+18

序盤は6節までで2勝2分け2敗とスタートダッシュに失敗した印象だったが、終わってみれば4位。昨年のMVP大竹選手が5節にチーム復帰、FW大竹選手(10得点)とFW新堀選手(11得点)、そしてパスの供給源MF三本選手の攻撃は恐ろしかった。

伊賀FCくノ一三重

【3位】
11勝7分け4敗 勝ち点40
得点39/失点20 差+19

昨年より順位は1つ落としたものの、39得点(2位タイ)20失点(2位)と安定した戦い。
優勝を逃した大きな要因としては、シーズンの4敗が全て上位相手(名古屋×2、鴨川、ニッパツ)が厳しかったか。4月に上野で行われた伊賀vs鴨川では、決勝点となった平田選手のゴールに背を向けたままのダイレクトボレーが凄かった。今シーズン7得点の大卒新加入。まだ良くなりそう。

朝日インテック・ラブリッジ名古屋

【準優勝】
12勝5分け5敗 勝ち点41
得点37/失点25 差+12

観戦したのは豊川での試合(名古屋3-3鴨川)だけですが、とにかく攻撃が凄まじかった。
14ゴールを決め得点王となったFW神谷選手のシュート技術は凄かった。そしてそこにピンポイントでアシストできる、ほぼ上がりっぱなしSB平尾選手。平尾選手が負傷交代して出てきた橘選手のクロスも正確だったし、元長野の高島選手には先制点決められたし・・・。
優勝した鴨川が唯一負け越したチーム。もう少し守備が良くなれば、来年初優勝も狙えそう。ただ、神谷選手はWEの引き抜きがありそうな予感。

オルカ鴨川FC

【優勝】
12勝8分け2敗 勝ち点44
得点38/失点18 差+20

以前から応援していた選手が多数鴨川に在籍・加入したこともあり、2023年はオルカ鴨川FCを応援していました。

上記試合の他、名古屋で大渋滞に巻き込まれ後半途中からの観戦となったスペランツァ大阪戦(0-0)含め、22試合の内15試合(ホーム8、アウェー7)を観戦。思い出深いシーズンに最高の結果を残してくれました。

ただ、8引き分けが示すように、チームはそれほど順風満帆だった訳ではありません。むしろ試練だらけでした。
4月には名古屋と伊賀相手に連敗し(結果的に、シーズン通してこの2敗だけだった)、11節ホーム愛媛戦では先制を許す苦しい展開。12節のホーム世田谷戦では追い付かれた上にキャプテン浦島選手が負傷。15節アウェー名古屋戦は90分以降に同点被弾を含め5度のピンチを作られ、19節ホームニッパツ戦では3-0から3-3に追い付かれるなど、厳しかった試合も沢山ありました。
ただ、それと同じくらい劇的な勝ち点3も。
3節アウェー世田谷戦での0-2から逆転勝利。3試合連続引き分けの後に迎えた14節ホームハリマ戦、後半ロスタイムの決勝点。会心の出来で相手を抑え込んだ16節ホーム伊賀戦や、20節アウェー愛媛戦。そして我慢我慢で勝利を呼び込んだ21節ホーム静岡戦。色々ありました。

ここまで苦しくなったのは、ケガ人の多さ。
前述の通り12節で負傷した浦島選手は、今シーズンMF高塚選手の加入もあり守備的MFから2トップの一角(トップ下に近い)にコンバート。負傷前の11試合で4得点を決めていましたが、負傷後は欠場や途中出場が多く2得点に留まりました。加えて、ケガ前には守備的MFの頃から変わらぬプレーエリアの広さで攻守に多大な貢献をしていただけに、戦術的な影響も非常に大きく影を落としました。
また、守備陣にケガ離脱が多く、攻撃力があるSB関口選手、守備の要CB松尾菜月選手、キャプテンも務めたCB/SB児玉選手がシーズン序盤から中盤に相次いで長期離脱。守備的MFとCB兼務の山幡選手、中盤の守備を担う高塚選手も途中数試合の離脱。
その穴を埋めたのは、ベテランSB高村選手(特にバースデーブロックは見事でした)、左右のSBを務めた山田優衣選手、そして大卒新加入のCB三秋選手でした。
攻撃陣も離脱が相次ぎ(山田彩未選手は序盤からDF登録に)、兼重選手、ハンナ選手が離脱すると、メンバー表のFW登録は鈴木陽選手のみ、MF古舘選手が交代出場でCFのポジションに入るなんてこともありました。苦しい台所事情の中、野田監督はうまく遣り繰りしていたと思います。

そんな中で攻守の中心として活躍したのが、先ずは昨シーズンを全て膝のリハビリに費やしたFW鈴木陽選手。通算12ゴールを決めチーム得点王、リーグ得点ランクでも2位タイに。

もう一人は、最後尾でチームを鼓舞し続けたGK田谷選手。特にミドルから近距離までのシュートストップには驚異的な反応を見せ、最少失点での優勝に大きく貢献しました。
両選手、21試合先発出場(鈴木陽選手は途中出場1試合なので全試合出場)。ほぼシーズンフル稼働で走り抜けた点も素晴らしいと思います。

ベストイレブン・新人賞

この記事を公開した日(10月25日)午後には、なでしこリーグの表彰式が行われ、ベストイレブンも発表されます。
以下は、それより前に下忍が独断と偏見で選ぶ1部ベストイレブン。アタッカーが多過ぎてチームとしては機能しないと思いますがご了承ください笑。

GK 田谷晴海(鴨川)
DF 秦美結(伊賀)
DF 三秋祥子(鴨川)
DF 平尾愛穂(名古屋)
MF 小須田璃菜(ニッパツ)
MF 森田美紗希(日体大)
MF 新堀華波(世田谷)
MF 三本紗矢香(世田谷)
FW 北沢明未(日体大)
FW 鈴木陽(鴨川)
FW 神谷千菜(名古屋)

優勝した鴨川から3人。名古屋、世田谷、日体大から2人ずつ、伊賀とニッパツから1人ずつです。

新人賞は・・・。受賞資格があるなら、得点ランク2位タイまで上がってきたFW北沢明未選手(日体大)かなあ。大卒で言えば、ベストイレブンに入れたDF三秋選手も資格アリか。
ガチの新人で選ぶならFW田子選手(愛媛)。まだ高校2年生だもんなぁ。6得点は立派。

あとは、功労賞を特別に。中野真奈美選手(大阪)。

リーグ記録、通算365試合出場。試合数がそれほど多くないなでしこリーグでこれだけの数。この記録に挑戦できる選手は上尾野辺選手(WEリーグ新潟。多分325試合)くらいか。お疲れ様でした👏。

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