教育実践工房みやざき

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教育実践工房みやざき

Noteを始めました。教育実践工房みやざきは、宮崎に本質的新しい学校をつくりたいと活動している任意団体です。ひなた教育実践工房の事業を引き継ぎました。宮崎大学教育学部に勤務する竹内元が代表を務め、執筆も担当しています。

マガジン

  • げん先生の悩む前に質問しよう

    宮崎日日新聞に月2回ほど掲載している文章をさらに加筆修正したものです。主に、小学生や中学生の質問に回答しています。

  • 息子とパートナーと、ときどき子どもたち

    息子と歩む日常から学んだこと、宮崎県内のこどもたちから教えてもらったこと、妻から学ぶ学校づくり・授業づくりのヒントの記事を集めています。

  • 学校づくり進捗状況報告

    田野町と三股町で展開している学校法人設立に向けた活動の進捗状況を報告するとともに、ミーティングやワークショップのご案内をいたします。

最近の記事

低い音が聞こえない。この難聴とどう付き合ったらいいですか。

 4月1日付の宮崎日日新聞に掲載された「げん先生の悩む前に質問しよう」の記事である。中学校1年生からの質問だった。最後の最後まで言葉を選んだ回答になった。  左耳が生まれつき聞こえにくく、特に低い音が聞こえない。男子の声が低くて聞き取れないことが多いのですね。自分が繰り返し聞き直すのも、相手に手間をとらせて悪いと思ってしまう。あるいは、自分が聞き取れないと、やらないといけないことをやれないから、相手に申し訳ないと思ってしまう。「あれ?どうしてやってくれないんだろう?」と相

    • 息子は2年生

       息子が、2年生になった。初日は、下痢だった。昨年は、インフルエンザだった。強くなったのだと思う。    始業式の前日、息子に「明日、叶えたいことはあるの?」と願いを聴いた。すると、「上からの景色を見てみたい」という。2階にある教室で学びたいというのだ。2年生の6学級のうち、4学級だけが、2階にある。その4学級のうちのどこかのクラスに配属されたい。そういう願いだった。  「○○くんと一緒になりたい」という回答を、私は期待していた。だから、息子の回答を聴いたときは、目がテンに

      • お知らせ:教育実践工房みやざきに名称を変更します

         ひなた教育実践工房を解散し、教育実践工房みやざきとして、学校づくりを継続しています。NOTEの名称も、ひなた教育実践工房から、教育実践工房みやざきと変更しました。しばらくはご不便をおかけするかと思います。  教育実践工房みやざきの代表は、竹内が務めます。今後の活動等は、後日掲載していきます。まずは、学校づくりの核となる「学習集団づくり」について、出版が決まりました。6月には脱稿し、9月には発刊したいと考えています。  なお、このNOTEは、再編集をしていきますが、このまま

        • 宮崎市ティーンズ会議

           宮崎市ティーンズ会議だった。中学生と高校生に集まってもらい、3回のワークショップを通して、市長や宮崎市子ども・子育て会議の委員に意見表明をするものである。ファシリテーターを学生スタッフとともに務めた。  中学生や高校生の発表は、問題を自分事としてとらえられていたので、簡潔で過不足のない表現であり、多くの人にとって期待以上のものであった。子どもの意見表明権は、ことばになった意見を伝えることではなく、ものの見方・考え方を聴きとられる権利でもある。彼らのものの見方・考え方をこと

        低い音が聞こえない。この難聴とどう付き合ったらいいですか。

        マガジン

        • げん先生の悩む前に質問しよう
          5本
        • 息子とパートナーと、ときどき子どもたち
          41本
        • 学校づくり進捗状況報告
          25本

        記事

          過程重視探究発表会

           宮崎東高等学校でひらかれた過程重視探究発表会に参加した。探究の成果に対する評価をする場ではなく、探究のプロセスにおける意味づけや価値付けをする場であり、発表者も緊張はしていたのだが、聴き手の方が試される時間であった。  宮崎東高等学校定時制の生徒も、もちろん発表した。彼らの発表を聴いていると、ことばに表裏も過不足もないことに気づく。人間がそのまま差し出されるように、経験を盛ることばも、上滑りすることばもない。「嫌なことがあっても楽しくなくても、火曜日の1コマがあるから学校

          過程重視探究発表会

          社会の問題や矛盾に気づき、他者と共に変えていこうとする子どもを育てる

          『みんなのねがいでつくる学校』(川地亜弥子解説、奈良教育大学付属小学校、クリエイツかもがわ、2021年)を読む。  みんなのねがいでつくる学校は、“ことば”が大切にされている。この学校では、他者は、ノイズとして無視される対象でも、異質なものとして排除する対象でもない。そうではなくて、自己を問い直す存在として立ち現れくるような、そうした関係やちからを子どもたちに育てていきたいと考えている。そのためには、「わからないもの」をとらえようとする関係が大切であり、「わからないもの

          社会の問題や矛盾に気づき、他者と共に変えていこうとする子どもを育てる

          多様性に対して自らをひらき学んでいく場や関係性を構築していく

           次年度から担当する教育フィールド体験科目が、初年次教育となることもあって、『進化する初年次教育』(初年次教育学会編、世界思想社、2018年)を読む。  初年次教育は、「レポート・論文などの文章技法」や「図書館の利用・文献検索の方法」を教え、「プレゼンテーション」や「ディスカッション」に取り組み、「大学教育全体への動機づけ」や「論理的思考や問題解決能力の向上」が図られる。本学でも、「大学教育入門セミナー」が1年生の前期に位置付けられている。初年次教育は、大学生になることを支

          多様性に対して自らをひらき学んでいく場や関係性を構築していく

          ひらめきは縁で生まれる

           『コミュニティ・オブ・クリエイティビティ ひらめきの生まれるところ』(奥村高明、有元典文、阿部慶賀、日本文教出版、2022年)という素敵なタイトルの本を読んだ。  ひらめきを理解するには、因果ではなく、縁起という概念が必要であると本書は指摘する。因果にこだわりすぎて、要因をいくら探っても、子どものひらめきは説明できない。  教育は、できるようになってから行動するための練習機会ではなく、できないままに行える場づくりの練習機会である。教室は「やったことがないことをするのが平

          ひらめきは縁で生まれる

          「不登校」はおかしな言葉

           汐見稔幸さんが、『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出書房新書、2021年)のなかで、「不登校」はおかしな言葉だと指摘している。この言葉によって、「本当は登校しなくてはいけないのに私は登校していないから、ダメな子なのかな」などと認識して、自分はダメな人間と思い込んでしまう。ネガティブなレッテル張りの機能があるというのである。  汐見さんは、「自分で人生を見つけようとしている子」という意味で、「自己選択児」としたいと提案している。子どものポジティブな側面に目を

          「不登校」はおかしな言葉

          恋愛の難しさを感じている

          3月4日(月)に宮崎日日新聞に掲載された「げん先生の悩む前に質問しよう」は、中学校1年生の質問に応えたものである。編集より回答を要望された質問となる。  隣の席に座っている人が好きだけど、カップルになれない。自分の気持ちを直接伝えたことはないけれど、自分の行動からダダモレで、友だちからもバレバレだ。本人は、きっと私が好きだってことを知っていると思う。恋愛って、難しいという相談とも質問ともつかない中学生の声を聴いた。  告白は、心の中の好きという気持ちを言葉にして相手

          恋愛の難しさを感じている

          凛とした「知」があるか

           美術史を専攻されている石川千佳子先生が退官される。FD研修会で、これまでの講義の歩み等をお聴きした。  すでに退官された竹井茂美先生もそうだったが、石川先生は、教養人であることを体現している人だと思う。真理に真摯に向き合ってきた、懐の深さのようなものが、お話される「知」ににじみ出る。学生に話る自分が軽く感じられてしまうのである。石川先生は、私が教務委員だったときの教務長であり、数々の問題に凛として向き合ってきた姿を見てきたので、なおさらそう感じるのかもしれない。 「

          凛とした「知」があるか

          日向ひょっとこマラソン

           パパチャレンジには、二つの種類があります。  一つは、パパが出す課題に息子が取り組むものです。今は、レゴを卒業し、プラモデルをつくるという課題に取り組みつつ、新たに作文を書くという課題に取り組んでいます。    もう一つは、息子とパパが一緒に課題にチャレンジするというものです。今年の夏休みには、禁酒に取り組みましたが、今は、縄跳びやランニングに取り組まされています。どちらかというと、私が挑戦する課題になります。  本日は、日向市で行われた、日向ひょっとマラソンに出ました

          日向ひょっとこマラソン

          ぎりぎりセーフ

           「げん先生の悩む前に質問しよう」の原稿がぎりぎりだった。「恋愛の難しさを感じている」という中学1年生からの質問である。  隣の席に座っている人が好きだけど、カップルになれない。自分の気持ちを直接伝えたことはないけれど、自分の行動からダダモレで、友だちからもバレバレだ。本人は、きっと私が好きだってことを知っていると思う。恋愛って、難しいという質問とも相談もつかない吐露だった。  回答は、3月4日(月)の宮崎日日新聞に掲載される。一番伝えたかったのは、うわさや冷やかしに流

          「子どもを決して独りにしない」という学校の覚悟が家族や子どもに届いているかどうかが問われている

           「不登校支援を問い直す」勉強会で、ある家族の独り言を聴いた。  我が子が不登校になったとき、「なぜ、不登校になったのか」と問うと、家族は自分たちを責めるばかりか、学校とのつながりが難しくなる。とりわけ、担任の𠮟責など暴力的な関係に子どもが巻き込まれている場合、最初に問うべきは、「家族以外の誰が子どもの味方になれるか、たとえ、同僚を敵に回しても子どもの味方になるにはどうすればよいか」という学校からのアプローチである。暴力的な関係に巻き込まれた子どもは、傷ついている。「子ども

          「子どもを決して独りにしない」という学校の覚悟が家族や子どもに届いているかどうかが問われている

          こども食堂

          パネルディスカッション「子ども食堂のマネジメントと協働を考える」のコーディネーターを務めた。  パトカーに乗ってこども食堂に来て、子どもたちをパトカーに乗せてあげる警察官の話があった。こども食堂は、語りたくなるストーリーが立ち現れる場所なのだ。  こども食堂は、誰かが一人でも始めなければ始まらないが、一人だけでは運営できない。「思い」があれば、誰でもつくれるが、「思い」を共有する仲間が必要なのである。  宮崎には、現在90ヶ所を超えるこども食堂がある。一つ一つの場に

          学習支援

           学習支援をしている中学生の期末テストが返ってきた。社会科が、満点だった。本人と面接をした時に「どうしたい?」と聞くと、「100点をとってみたい」と、まっすぐに目を向けて答えた子どもである。    期末テストは、範囲が狭い。社会科を暗記科目ととらえている教員だったので、100点が取るための条件を整えることはそれほど難しくはない。本人が無意識に選んできた学習習慣もすぐに変えることができた。ここで言う「学習習慣」は、勉強する時間を確保しているかどうかという意味ではなく、勉強の仕方