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痩せる方法・禁煙の方法:総合診療医が行動科学の観点から解説

さて、家庭医療理論によく用いられる分野のひとつである行動科学についてお話していきましょう。

行動科学の一分野である行動変容、その理論が分かれば「痩せれないな」「禁煙出来ない」「ゲームをやめられない」など、本当は〇〇したいけど出来ない、ということを、驚くほどスムーズに実現することが出来るようになるでしょう。

行動科学とは?

行動科学

米国では医師国家試験の重要な分野であるBehavioral science(行動科学)。何故か日本の医師国家試験にはこの分野はなく、医師になるまでに行動科学を本格的に勉強する機会はほとんどありません。

この行動科学、Weblio辞書で調べてみると、

行動科学
【英】:Behavioral science

第二次世界大戦後のシカゴ大学の科学者が、自然科学と社会科学を統合した見方から行動を捉えようとした際に用いられた名称。人間の個人的・集団的行動の一般法則を客観的な観察や調査によって実証しようとする学問であり、心理学、社会学、人類学を中核として、精神医学、コミュニケーション論、情報理論などの領域を含みながら、学際的に発展してきた。
国際保健医療の分野に関連が深いのは「応用行動科学(applied behavioral science)」であろう。人間の対人行動に関する諸理論(対人関係、対人的コミュニケーション、対人的影響過程、集団内行動、リーダーシップ、グループ・ダイナミックス、組織行動など)を応用して、現場で起こっている人間関係的側面の諸問題に働きかけていくものである。アプローチとしてはアクションリサーチのサイクルが用いられる。アクションリサーチの父とされるK.Lewinは、人間関係の改善のための手法としてワークショップ形式で行われるトレーニング(training)を重視した。K.Lewinのこの発想は、彼の弟子たちによって設立された米国NTL Institute for Applied Behavioral Scienceにて、人間関係トレーニング(Human Relations Training、正式名称:ラボラトリー方式の体験学習)として、また、民主的でヒューマニスティックな組織づくりをめざした組織開発(Organization Development)として発展した。(中村和彦)

参考URL:NTL Instituteホームページ http://www.ntl.org/

という記載が参照できます。

つまり、『心理学、社会学、人類学などから、「人間の対人行動に関する諸理論(対人関係、コミュニケーション、リーダーシップなど)を上手く取り、人間関係をより良くする、というのを理論立てて行おうとする学問』とここでは捉えることにします。

「そんなの知らなくても何とかなる。」「別に勉強しなくても困ることはない」

そういう声が聞こえて来そうですね。

しかし、実際、日本では、患者さんも、「あの先生は怖いからちょっと相談しにくいな…」とか、「タバコやめろ!と言われたけど絶対にやめない!なんだあの言い方は!(怒)」とか、逆に医療者も、「あの患者さんは言うことを聞いてくれなくて困る」とか「何時間も話ししてもどうしても分かってくれない」とかいろいろな問題があると思います。医療者同士でも、「あの先生は怖いから相談しにくい」とか、「あの後輩はいつも言うことを聞いてくれない」とか、様々な問題があると思います。これは、ただ単に優しいだけでも、「あの先生は何も言わないからタバコ止めなくてもいいや。」とか、「どうせ失敗しても怒られないから(何も言われないから)いいや。」みたいな問題が起こることがあるので、必ずしも”優しい”ということが問題解決になるとも限りません。

もちろん、医療業界に限らずこういった問題はあると思いますが、命に直結することもある医療業界だからこそ、こういった問題を避けて円滑に物事を進めるということはより重要な問題となるのではないでしょうか。

こういう時、行動科学を勉強していると、「あぁ、そういう理由でタバコを止めた方が良いのですね!」とか、「あの先生にちょっと相談してみよう!」とか、物事を円滑に、より良い方向に導くことが出来る可能性が高くなります。

行動科学の重要性を分かって頂けましたでしょうか?

行動科学の中でも、タイトルのテーマにあるように、「行動変容理論」、これをお話していきましょう。これを理解すると驚くほどスムーズに痩せられたり、禁煙出来たり…自信がなかったことが実行できるようになってきます。

〇行動変容におけるステージ

行動変容のステージには、無関心期・関心期・行動期・維持期・再発期、そして確立期があります。

〇無関心期

禁煙したい!痩せたい!ということに対して「無関心」な方には、そもそも興味がないからどれだけお話しても「禁煙しよう」とか「痩せよう」とかいう気が起こりません。まずは繰り返し興味を引く工夫をすることが重要で、長く付き合っていくことが大切です。しかし、行動変容に無関心な方はそもそもこの記事を読んだりということをされていないでしょうから(?)、今回は無関心期については割愛します。

〇関心期

お待たせしました。多くの方は「痩せたい」と思っているけど痩せられない!「禁煙したい」と思っているけど禁煙できない!というところで困っていると思います。「わかっちゃいるけどやめられない。」タバコが体に悪いのは分かっているけど、、、痩せないといけないのは分かっているけど、、、という状態ですね。

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