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ニュータイプ・ララァ登場!あのときの決断は正しかったのか!?~機動戦士ガンダム 第34話「宿命の出会い」感想

ホワイトベース出港

ミライ「お帰りなさい。どうだった?」
ブライト「滞在の手続きがどうの、追い出したがっている」
ミライ「でも、ティアンム艦隊からは移動命令は出てないし、敵の待ち伏せだってあるし」
ブライト「アムロはいつ帰ってくるんだ?」
ミライ「あと2時間」
ブライト「大事な用なのか?」
ミライ「ええ。信じられるわね」
ブライト「・・・あと3時間で整備を終わらせよう。出港する」

ブライトがサイド6側の当局と交渉して帰ってきたシーンから今回は始まる。サイド6はホワイトベースを追い出したがっている。それもそのはず、ホワイトベースがいるだけでジオン軍を呼び寄せてしまい、その結果サイド6周辺が戦場になってしまう可能性が高まる。当局の思惑も当然といえば当然だ。

しかし、ホワイトベースはサイド6に修理のため立ち寄っているので、整備が終了するまではなんとか滞在したいところ。

そんな中、ブライトは3時間後の出港を決意する。

コロニーの雨

アムロ「ああっ、天気の予定表ぐらいくれりゃあいいのに」

アムロが雨の中バギーに乗ってどこかに向かっている。ブライトの言っていた「大事な用事」のために車を走らせているのだろう。果たしてその行き先は!?

コロニー内に雨が降っている。前回、アムロの父親・テムが住んでいた建物を見ると、屋根に勾配があったり、シャッター部分にひさしがあることから、コロニー内でも雨が降るということがわかる。

第33話

おそらくは地球上の気候に近づけるためだったり、草木への水やりや湿度の調節だったりと色々役割があるのだろう。

アムロの「天気の予定表」というセリフから、コロニー内の天気は完全に人為的に管理されており、予定表がコロニー内の住人には配布されていることが窺える。

ただ、一時的に滞在しているホワイトベース側にはサイド6側から天気の予定表は与えられていないようだ。単なるミスか、サイド6側の嫌がらせか。

この雨がアムロに2つの出会いをもたらすこととなる。

ララァ

アムロ「鳥だ」
ララァ「かわいそうに」
アムロ「あ」
ララァ「・・・!?」
アムロ「ご、ごめん。べ、別に脅かすつもりじゃなかった」
ララァ「・・・」
アムロ「あ、あの鳥のこと、好きだったのかい?」
ララァ「(美しいものが嫌いな人がいて?美しいものが嫌いな人がいて?美しいものが嫌いな人がいて?美しいものが・・・)美しいものが嫌いな人がいるのかしら?それが年老いて死んでいくのを見るのは悲しいことじゃなくって?」
アムロ「そ、そりゃあそうです、そうだけど、僕の聞きたいことは・・・」
ララァ「・・・止んだわ。・・・きれいな目をしているのね」
アムロ「そ、そう?」

雨宿りのため道沿いの民家に避難するアムロ。そこでアムロはララァと出会う。

ララァは不思議な雰囲気を醸している少女だ。年齢はどれくらいだろう。アムロと同じくらいか、少し上か。

アムロとララァの前を一羽の白鳥が飛んでいく。その白鳥を見てララァが「かわいそうに」とつぶやく。アムロが白鳥を目で追っていくと、その白鳥が力尽きて死んでしまう。

ララァは白鳥の死を予言していたかのようだ。アムロもそれを目の当たりにして驚嘆する。この少女はなぜ白鳥の死が分かったのだろうか。アムロがララァに話しかけてみたもののうまく話を聞き出すことができない。

そうこうしているうちに雨がやみ、ララァはどこかへ走り去ってしまった。

このララァ、いわゆるニュータイプであり未来を予測したり、他人の思考を読み取ったりできるようだ。なお、ニュータイプという言葉はまだアニメでは登場していない。この言葉が登場するのはもう少し先の話のようだが、記事を書く上で便利な言葉なので一応用いることとする。ただ、私自身ニュータイプという概念についてあまり詳しくない上に、物語でもまだ明確に描かれていないので、少しずつ物語の内容から読み取れる範囲で書いていこうと思う。

ちなみに、ララァの額にはビンディが施されている。

ビンディとは、Wikipedia情報では

原則として既婚で、なおかつ夫が存命中のヒンドゥー教徒の女性がつけるものである。

とある。この通り解釈するとすればララァは既婚者で夫がいるということになるが、ララァの推測される年齢(アムロと同年齢か、少し上?)や、ストーリー上夫らしき人物が一切登場しないことからして、ララァ既婚説はありえないだろう。

宇宙世紀では、ヒンドゥ教のビンディが一般的な化粧や装飾と同じ程度にまで世俗化していると考えた方が良さそうだ。

シャアのドズル・キシリア評

マリガン「コンスコン隊、放っておいてよろしいのですか?」
シャア「やむを得んな。ドズル中将もコンスコンも目の前の敵しか見ておらん。その点キシリア殿は違う。戦争全体の行く末を見通しておられる」
マリガン「何があるのです?サイド6に」
シャア「うん、実戦に出るのも間近い。そうしたらわかる。港に入るぞ!」

シャアのザンジバルがサイド6に入港する。先導役のサイド6の宇宙船も描写されている。よく見るとザンジバルにはホワイトベースとの交戦で受けた傷がまだ残っている。他方、ホワイトベースにもムサイとの交戦で受けた損傷が2か所描写されている。

部下のマリガンとの会話でシャアがキシリア・ドズルの評価を述べている。シャアが2人のことを話すのは初めてだ。

シャアによれば、ドズルとその部下であるコンスコンは近視眼的で目の前の敵しか見ていない。それに対してキシリアは戦争全体の行く末を見通しているという。

前回の感想記事でも軽くドズルとキシリアの関係について触れたが、シャアの見立てもほぼ同じだ。

さて、シャアはサイド6に何か用事があって来たようだがその用事とは何か。それはのちほど明らかになる。

カイ「へえっ、こりゃ驚きだぜ!」
ミライ「敵の戦艦と同じ港に入るなんて中立サイドならではの光景ね」
カイ「漫画だよ漫画。いっそのこと敵さんをここへお迎えしてパーティーでも開きますか。ね?」
スレッガー「フッ、そうだな」
ハヤト「ううっ、く・・・ゆ、許せない」
ブライト「どこへ行く?」
ハヤト「ど、どこって。リュウさんを殺した敵が目の前にいるんですよ」
ブライト「ハヤト、このサイドで戦闘を行えば我々がどうなるかわからないお前でもなかろう!」
ハヤト「でも!」
ブライト「出港まで時間がない。外出を禁止する。ホワイトベースの整備でやることが山ほどあるはずだ。全員ただちに部所につくんだ」
ハヤト「くそう!」

ホワイトベースとザンジバルが並ぶ異様な光景だ。ミライの言う通り中立サイドならではである。カイはいつものように軽口を叩いているが、一人ハヤトが「許せない!」といって走り出す。「リュウさんを殺した敵が目の前にいるんですよ」とは言うもののブライトにたしなめられ思いとどまる。

サイド6内でジオン兵といざこざを起こしてしまった場合の問題の大きさをハヤトも頭ではわかっているはずだ。居ても立っても居られないという様子からハヤトのリュウへの熱い想いが窺えるエモいシーンである。

このシーン、ハヤト1人がリュウのことをいい、それだけに他のクルーが冷酷に見えてしまうが、実際は皆ハヤトと同じ気持ちのはずだ。

アムロとテム

テム「うん、そうか。私は嬉しいよ、お前がガンダムのパイロット。夕べ渡した部品はどうだった?」
アムロ「え?」
テム「ほら、お前に渡した新型のメカだ。え?あれは絶大な効果があっただろ、ん?アムロ」
アムロ「え、ええ、そりゃもう」
テム「そうか、うまくいったか。フフフ、よし、やるぞやるぞ。じっくり新開発に打ち込むぞ、ハハハ」
アムロ「と、父さん」
テム「そうか、うまくいったか。フフフ、そうさ、私が作った物だからな、フフフ、これからが腕の・・・」
アムロ「と、父さん」

アムロの「大事な用事」は父親のことだったようだ。今回アムロがテムに会いに来たのはまだ親子の絆を信じているからであろう。

酸素欠乏症の後遺症で思考力の低下したテム、相変わらずガンダムのことで頭がいっぱいだ。その発言は見ていて痛々しい。そのテムに話を合わせることしかできないアムロ。

帰りの車内、アムロは寂しそうだ。わずかながら涙も流している。

父子の関係が稀薄だったとはいえ、連邦軍の技術士官としてバリバリ働くテムのことをアムロは誇らしく思っていたのかもしれない。

しかし、あの頃の誇らしく思えた父はもういない。父の衰えてしまった姿を目の当たりにしてアムロは喪失感でいっぱいであろう。

アムロ「(退避カプセルがなんの役に立つんです。父さんは人間よりモビルスーツの方が大切なんですか!?)」
テム「(トレーラーを出せ!)」
アムロ「(父さん!)」
テム「(お前もホワイトベースへ行くんだ!)」
アムロ「(父さん)」

アムロは涙ぐみつつサイド7での父との対立を想起する。

ザクの奇襲によって兵士のみならず民間人も次々とやられていく。そんな日常生活が一瞬で崩壊してしまった状況にあって、アムロは父親と本気で対立した。

アムロはテムに「父さんは人間よりモビルスーツの方が大切なんですか!」と問う。しかしテムはアムロの問いを無視してガンダムの搬送作業を行う。アムロには一言「ホワイトベースに行け」というだけだ。

第1話の感想記事で、この場面は「大人の論理」と「子供の感情」のすれ違いだと書いた。そしてこのすれ違いが解消されないままアムロとテムは離れ離れになってしまった。サイド6で再会を果たしたテムとアムロだが、このすれ違いは解消されただろうか。

ガンダムに乗りこむというアムロの決断をテムは認めてくれるだろうか。ガンダムのパイロットとしてホワイトベースを何度も窮地から救ったことを評価してくれるだろうか。よくやったと褒めてくれるだろうか。

アムロの決断をテムがどう考えているのか、それを確認する機会は永久に失われてしまった。

「父さんは人間よりモビルスーツの方が大切なんですか!!」との問いに対するテムの回答も今後得られることはないだろう。

アムロにしてみればなにか肩透かしをくらった感覚のはずだ。

あの行動が正しかったのか間違っていたのか、それを決めてくれる親はもういない。自分で考えるしかない。アムロにはもうそれしか残されていない。

アムロとシャア

アムロ「(父さん・・・)あっ?わあっ。うっ。しまった。こいつ。近道なんかするんじゃなかった。あ!。す、すいません!うっ!あ・・・(シャア!)」
シャア「すまんな、君。なにぶんにも運転手が未熟なものでね」
アムロ「い、いえ」
ララァ「ごめんなさい、よけられると思ったんだけど」
アムロ「あっ」
シャア「車で引かないと無理だな」
アムロ「え?」
シャア「君は?」
アムロ「ア、アムロ、アムロ・レイです」
シャア「アムロ?不思議と知っているような名前だな」
アムロ「(そ、そう、知っている。僕はあなたを知っている)お、お手伝いします」
シャア「構わんよ、済んだ」
アムロ「すいません。あ、あの、お名前は?」
シャア「シャア・アズナブル。ご覧の通り軍人だ」
アムロ「(シャア)」
シャア「ララァ、車を動かしてくれ。静かにだぞ」
ララァ「はい、大佐」
アムロ「(あれがシャアか。シャア、アズナブルといったな)」
シャア「ゆっくりだよ、いいな?ララァ。どうした?下がれアムロ君」
アムロ「(初めて会った人だというのになぜシャアだってわかったんだ?それにあの子、ララァといったな?)」
シャア「君は年はいくつだ?」
アムロ「あ・・・じ、16歳です」
シャア「そうか、若いな。目の前に敵の兵士を置いて硬くなるのはわかるが、せめて礼ぐらいは言ってほしいものだな、アムロ君」
アムロ「・・・い、いえ、その、あ、ありがとうございました。じゃ、これで僕は!」
シャア「どうしたんだ?あの少年」
ララァ「大佐の名前を知ってるからでしょ、赤い彗星のシャアって。おびえていたんですよ、きっと」

アムロとシャアの初めての対面シーンである。これまでモビルスーツでは何度も対戦してきたこの2人。生身で対面するのは初めてだ。

このシーン、非常にたくさんのことが同時に起きているので非常にややこしい。

アムロの車のタイヤがぬかるみでスタックし立往生。スタックの原因は雨のために地面がぬかるんでいたからだ。つまり、人工的に降らされた雨がアムロとシャアを引き合わせたということになる。

アムロが後続車に「すいませんっ!」と応援を頼む。すると降りてきたのはシャアだった。アムロは会ったことのないシャアを一目見てそれがシャアであると確信した。アムロ自身なぜそうなのか理解できていないが、なぜかわかってしまった。これはアムロがニュータイプとして覚醒し始めたからである。なお、アムロにはニュータイプという自覚はない。アムロはニュータイプという概念すら知らないから無理もない。

ララァと出会ったことがきっかけとなったのか、その萌芽はもっと以前からあったのかは定かではないが、アムロに不思議な力が生じていることが明示的に描かれている。

とはいうものの、こんな赤いなりをしているジオンの士官がいたら誰でも「ひょっとしてこの派手なヤツはあの赤い彗星のシャアなのではないか?」くらいは考えるであろう。その意味でアムロがニュータイプでなくても「こいつシャアじゃね?」と考えた可能性はある。まぁその辺には目を瞑ろう。

さて、ララァはニュータイプである。それは白鳥の死を予言したことからもわかる。アムロのことを見て自分と同じニュータイプだということを見抜いている様子だ。そのことは車を降りる際の「ごめんなさい、よけられると思ったんだけど」というセリフからもうかがえる。ニュータイプであるアムロなら車が泥水を跳ね飛ばすことを予知し避けると思ったので特に気にせず車を走行させたら、予想に反してアムロが避けなかった。これを受けての「避けられると思ったんだけど」というセリフである。

シャアに促され、お礼を言って足早にその場を去るアムロ。その様子を見て訝しがるシャア。ララァは「赤い彗星のシャアと知って怯えていたためだ」と説明している。しかし、それだけではないだろう。自分の不思議な力を自覚できず戸惑うアムロを見て、ララァは面白がっているのだ。おそらくララァはアムロにニュータイプという自覚がないことにも気づいている。

ニュータイプであるアムロとララァに対し、この場面ではシャアは一般人として描かれている。これまでモビルスーツの凄腕パイロット・名指揮官として完全無欠のスーパーマンのように描かれていたシャアだが、ここでは一転ただの兵士だ。

第19話「ランバ・ラル特攻!」でランバ・ラルが「まさかな。時代が変わったようだな、坊やみたいなのがパイロットとはな!」と言ったり、第26話「復活のシャア」でレビルが「すべてモビルスーツ、モビルスーツか。時代は変わったな」と言ったりしていたように、時代の移り変わりを彷彿とさせる。

アムロやララァは新しい時代の担い手だ。ではシャアはどうなのか。古い時代のエースパイロットにとどまってしまうのか、それともシャアもまた新しい時代のパイロットなのか。

今後の展開が気になるところである。

カムランの提案

カムラン「失礼します」
ブライト「ああ、お待ちしてました。どんなご用で?」
カムラン「実は、個人的に皆さんのお力になれればと」
ミライ「カムラン・・・」
ブライト「どういうことでしょう?」
カムラン「わたくし、自家用の船があります。それでこの船をお送りします。サイド6の船が盾になっていればジオンとて攻撃はできません」
ブライト「それはありがたいが・・・」
ミライ「カムラン、どういうつもりでそんなことを?」
カムラン「き、君にそういう言われ方をされるのは心外だ」
ミライ「余計なことをしないでいただきたいわ」
カムラン「・・・ミライ、君がこの船を降りないというなら、せめて僕の厚意を!」
ミライ「それが余計なことでなくてなんなの?」
カムラン「そういう言い方は侮辱じゃないか!」
ミライ「今更あたしに対して、自分が役立つ人間だと思わせたいだけなのでしょ。でも、でもあたしが一番つらかった時にしらん顔で今更」
カムラン「今なら僕にもできるから」
ミライ「結構です」

カムランが大胆な提案をする。ホワイトベースを自家用の船で先導するというのだ。

サイド6の周辺にはコンスコン隊がホワイトベースの出港を今や遅しと待ち構えている。サイド6を出れば間違いなく戦闘になるだろう。満身創痍のホワイトベースにとって非常に厳しい状況である。

そこで、カムランはサイド6の船がホワイトベースを先導していれば、ジオン軍は攻撃をしてこないのではないか、ホワイトベースを安全なところまで導いていけるのではないかと考えたわけだ。

前回カムランはパトロール艇でホワイトベースとザンジバルの間に割って入り、身を挺して戦闘行為をやめさせた。今回も基本的な発想は同じである。

前回のカムランの行動については「愛する者を守るための勇気ある行動というよりも、世間知らずのおぼっちゃんの無謀な行動と評価すべきものである。」と書いた。

では、今回の行動はどう評価すべきだろうか。

今回のカムランの行動は、その目的が前回と異なっている。前回のカムランの行動はあくまでミライを守るためだった。サイド6の領空内で戦闘が起こったためそれを止めさせるという目的もあっただろうが、それは主目的ではないだろう。

サイド6士官「・・・カムラン検察官、こんな危険を冒してまで戦いをやめさせるのはごめんですよ!」
カムラン「・・・すまん。しかし、あの連邦軍の船には私の未来の妻が乗り組んでいるんだ」

第33話

戦闘後、カムランはミライにアピールするがまったく話しがかみ合わなかった。

前回のミライとのすれ違いをカムランは必死で考えたはずだ。自分の恵まれた境遇やミライが潜り抜けてきた苦難にも思いを致したのかもしれない。そしてミライとの結婚が絶望的だということも理解した。「・・・ミライ、君がこの船を降りないというなら、せめて僕の厚意を!」というように、今回カムランはミライとの結婚をほぼ諦めていると考えてよいだろう。

しかし、結婚が叶わなくなったとしてもカムランのミライに対する気持ちが消えるわけではない。

カムランはせめて自分のいるサイド6の領空内は安全に航行できるようにと自分にできる精一杯のことを提案したのだ。ミライを含めホワイトベースへのカムランなりの最後のはからいである。

しかし、ミライはこのカムランのはからいを「余計なこと」といって拒絶する。

ミライ「今更あたしに対して、自分が役立つ人間だと思わせたいだけなのでしょ。でも、でもあたしが一番つらかった時にしらん顔で今更」
カムラン「今なら僕にもできるから」
ミライ「結構です」

セリフから明らかなように、今回何も理解できていないのはミライの方だ。

前回、ミライは「カムラン、あなたは戦争から逃げすぎて変わらな過ぎているのよ」とカムランに投げかけた。これを受けてカムランはすこしだけだが変わることができた。

しかし、ミライはその変わったカムランを理解できていない。今までののほほんとしたカムランから変わっていないと思い込んでいる。だからカムランの提案についても「自分が役立つ人間だと思わせたいだけ」と斜に構えた見方をしてしまっている。

今回のカムランの提案はそんな安っぽいものではない。それはカムランの態度やセリフからも十分うかがえる。ホワイトベースの他のクルー達もそのことには気づいている。ただ一人ミライを除いて。

スレッガーがミライをひっぱたく直前、セイラやブライト、ハヤト、カイ、フラウボウの顔が順番に映し出されるが、この場でカムランの提案の真意を理解できていないのがミライだけということを強調している。

「バカヤロウッ!!!」

スレッガー「バカヤロウッ!!!」
ミライ「あっ!?」
スレッガー「この人は本気なんだよ!!わかる!?そうでもなきゃこんな無茶が言えるか。いくらここが中立のサイドだからといったところでミサイル一発飛んでくりゃ命はないんだ、わかる!?」
スレッガー「あんたもあんただ!あんなにグダグダ言われてなぜ黙ってる!?」
カムラン「殴らなくたって話せば」
スレッガー「本気なら殴れるはずだ」
カムラン「そ、そんな野蛮な・・・」
スレッガー「そうだよ、カムランさん、気合の問題なんだ。な、少尉」
ブライト「ス、スレッガー中尉。お気持ちが変わらなければお願いできませんか?」
カムラン「は、はい。やらせてください、中尉」
スレッガー「・・・へへへへっ・・・」

スレッガーがミライを裏拳でひっぱたく。そしてガチのお説教である。

今回のカムランの提案はミライのためというよりもホワイトベース全体のためだ。ミライはそのことを理解できていない。いや、意固地になって理解しようとしていない。

ひっぱたかれたミライはこの表情。まだ納得できていない様子だ。一時のアムロを彷彿とさせる子供じみた態度だ。

冷静沈着で、聡明なキャラとして描かれていたミライだが、こと自分の色恋の話となると途端に視野狭窄に陥る。人間とはこういうものである。誰にでも思い当たる節はあるだろう。私にはある。

スレッガーの矛先はカムランにも向かった。スレッガーのようなタイプからすればカムランのようななよなよした男は見ていてイライラする存在のはずだ。

スレッガーは「本気なら殴れるはずだ」と言うが、この演出は時代のなせるわざだ。現代ではむしろ暑苦しすぎて共感を得にくいと思われる。

さて、最終的にカムランの提案どおり先導してもらうこととなったホワイトベース。果たしてうまくいくだろうか。

出港!

コンスコン「来たな」
ジオン兵A「しかし、サイド6の民間機が木馬にぴたりついています」
コンスコン「フン、物好きがいるものだ。リック・ドムの発進は?」
ジオン兵A「もうできるはずです」
ジオン兵A「木馬は進路を変えて反対方向から脱出するようです」
コンスコン「リック・ドムを発進させい!領空侵犯も構わん!どのみち戦闘は領空外だ。シャアごとき若造になめられてたまるかよ!」

ホワイトベースがカムランの船に導かれてサイド6を出港する。

サイド6の灯台のすぐ外側にはコンスコン部隊の艦隊が待ち伏せしている。リック・ドムを今回も投入するようだ。前回12機を失っていたが、今回も6機投入するらしい。いったい何機もっているんだ。

今回もコンスコンは「シャアごとき若造になめられてたまるかよ!」と自分のメンツを気にするばかり。「領空侵犯もかまわん!」と言ってしまうなど無茶苦茶である。描き方がこれ以上ないくらい小物だ。

「ありがとうカムラン、帰ってください・・・。」

ブライト「カムランさん」
カムラン「中尉」
ブライト「下がってください、我々は戦闘に入らざるを得ないでしょう」
ミライ「カムラン、ありがとう、お気持ちは十分にいただくわ。でも、でも・・・。ありがとうカムラン、帰ってください・・・。お父様お母様によろしく」
カムラン「ミ、ミライ・・・」
パイロット「引き返します」
カムラン「ああ。頼む、ブリッジを!」

サイド6の灯台付近。ドムがホワイトベースにピッタリはりつくようについてくる。戦闘は避けられない。カムランの船とて安全ではない。ミライがカムランに話しかける。

ミライ「カムラン、ありがとう、お気持ちは十分にいただくわ。でも、でも・・・。」

「でも、でも・・・。」のあと、ミライは何をカムランに伝えようとしたのだろうか。

「でも、でも・・・ホワイトベースは捨てられません。」

そんなことを言おうとして呑み込んだのではないかと私は思う。

スレッガーのガチのお説教やカムランの決死の行動を見てようやくミライはカムランの気持ちに気づいた。自分がどれほど酷いことを言ってしまったのかも理解したことだろう。

しかし、それでもホワイトベースを降りることはできないとミライは思った。ミライはホワイトベースのクルーとして生きていくことをこの瞬間に決意したのだ。

カムランの船がホワイトベースのブリッジの横を通過する。ミライ視点のカムランは何かを言っているがミライに声は届かない。カムラン視点のミライは手を挙げて応えている。

作画の問題でミライが中指を立てているようにも見えてしまい若干台無しの感もないではないが、最後の最後でコミュニケーションをとることができたカムランとミライ。戦争に翻弄された2人の物語の終焉である。

ガンダム発進!

ブライト「ハッチ開け。ガンダム発進、急げ。ガンキャノン、Gファイター、そのまま」
アムロ「行きまーす!!」
ブライト「ホワイトベース、最大戦速。対空戦闘に入る!」
ミライ「はい」
コンスコン「よーし、ドム隊、攻撃を開始しろ!」

いよいよ戦闘が始まった。が、今回はほぼホワイトベース側が優勢なまま終わってしまう。

その要因はやはりアムロだ。今回のアムロは冴えに冴えまくっている。ドムの砲弾をすいすいかわし、まったく攻撃を寄せ付けない。

攻撃方法も未来が見えているかのようだ。

静止画では分かりにくいが、ガンダムがビームライフルを3発連続で発射、ドムは1発目を横に避けてかわすが、かわしたその場所ですでに撃っていた2発目のビーム砲が来ておりそれに撃墜されてしまう。

敵兵も「まるでこ、こっちの動きを読んでるようだぜ」と驚愕しっぱなしである。アムロも「見える・・・動きが見える。見える!」と絶好調だ。

テレビ局の生中継

レポーター「ドラマではありません、これは実戦です。宇宙の片隅で連邦とジオンが戦い続けているのです」
レポーター「何度も繰り返すようですがこれは本当の戦争です。サイド6のすぐ外で行われている戦いなのです。連邦のホワイトベースは1隻でジオンの3隻に対して果敢な攻撃を行っています」

テレビ局のカメラが戦闘の一部始終を放映している。

戦争とテレビといえばベトナム戦争である。史上初めてテレビカメラが戦場に入ったと言われてるのがベトナム戦争だ。当時は軍による報道統制などはほぼ行われていなかったため、戦場から次々と送られてくる衝撃的な映像によって、当初アメリカ国内で圧倒的支持を得ていた「聖戦」にもほころびが生じ、徐々に反戦ムードが高まっていったという歴史がある。

アメリカはこの時の「失敗」を反省し、その後の湾岸戦争では徹底した情報統制をおこなうようになった。

現在ではテレビ局のみならずSNS等で個人が戦場の生の情報を拡散する時代になっている。

テレビ局のクルーが「ドラマではありません、これは実戦です!」と声高に言っても、数多くの生の情報に触れることができる我々からすればあまりインパクトは感じられない。わずか数十年で状況はかなり変わってしまったようだ。

チベ撃破!

ブライト「何があったんだ?今日のアムロは勘が冴えている」
アムロ「エネルギーがあがった。ビームライフルが使えないとなると接近戦しかない!」
コンスコン「は、話にならん!も、木馬1隻にこ、こ、こんなにてこずって、シャ、シャアが見てるんだぞ!シャアが!特攻せよ、このチベを木馬のどてっぱらにぶつけい!!」
・・・
レポーター「ムサイタイプがやられ、重巡チベが前進してきました。モビルスーツの姿はいまや1機も見えず、戦いの展開はまったくわからなくなっています」
ララァ「白いモビルスーツが勝つわ」
シャア「ん?ガンダムは映っていないぞ」
ララァ「わかるわ。その為にあたしのような女を大佐は拾ってくださったんでしょ?」
シャア「フフフ、ララァは賢いな」
ララァ「フフフフッ」
アムロ「(突撃をするぞ、あせっている証拠だ。どこが心臓だ?あそこか!)」
・・・
ララァ「ねぇ、大佐」
シャア「フフフフ」

ドム6機を撃破したガンダム。しかし、アムロの快進撃はまだまだ続く。

シャアに負けまいと意地の特攻を仕掛けるコンスコンのチベ。

アムロがチベを見ると急所が赤く光って見える。「あそこか!」といってビームサーベルを突き刺すアムロ。爆散するチベ。覚醒したアムロの前に戦艦とてもう敵ではない。

「こんな雑な分解図で役に立つんですか!?」とか言っていたころがもはや懐かしい。

シャアとララァがテレビ中継を見ている。ここでもララァはニュータイプの力を発揮し未来を予知して当てて見せる。シャアはそれを横で満足そうに見ているだけ。やはり普通の人として描かれている。

ラストシーン、アムロは「サイド6・・・」といって涙を流す。サイド6はアムロの父親の住むサイドだ。そのサイドに別れを告げ、アムロの自立のための旅が始まる。

なお、このシーン、無重力空間であるはずのコックピット内で涙が下に流れるのはおかしいが、こまけぇこたぁいいんだよ。

ちなみに無重力状態で泣いた場合の涙の挙動が知りたい方はこちらの動画をどうぞ。

涙は目元に留まり下に滴り落ちることはない。

第34話の感想

アムロとシャアの対面、ニュータイプ・ララァ、カムランとミライ、アムロの自立の旅と、今回もてんこ盛りの展開だった。

いろいろな要素がわずか20分たらずに凝縮されているため、一つ一つ読み解くのも一苦労だ。しかし、それをするだけの価値のある作品である。

ニュータイプという概念が明確に描かれた最初の回ではないかと思われるが、実際にはもっと前の回から伏線的なものが散りばめられていた可能性もある。そのあたりはこぼれ話で拾っていければと思う。

さて、いよいよ次回ティアンム艦隊が宇宙要塞ソロモンに総攻撃を仕掛ける。連邦軍の反撃が本格的に始まる。

物語も戦況もいよいよ佳境にはいってきた。

果たしてホワイトベースの運命は!?

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