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エセチャリダーとロコ Vol.01

メキシコの首都メキシコシティ、毎日毎日タコスとビール、たまにハンバーガーとフルーツジュースというナメ切った生活を送っていた。体重は増える一方、旅のバイタリティは減る一方。このままじゃダメだな〜と思っていたある日、突如自転車旅をすることになった。俗に言う、チャリダーである。
突然思い立ったということではなく、同じ宿に泊まっている人でチャリダーやバイカーが居て、バイタリティ溢れる人達の話を聞いている内に、影響されやすい私は自分でもやりたくなったのである。
しかし、メキシコでそれなりの自転車旅装備を探すのには骨が折れた。
まず、自転車で旅をする、の概念がメキシコ人に伝わりにくい。大半の人に飛行機やバスに乗るお金がないの?と不思議がられ、時には哀れみの目で見られる。

探しに探して、やっとこちらの要望に応えてくれそうな店を一軒見つけた。
ところが、「自転車に生活道具全部括り付けて、街から街へ移動するって?野宿する?強盗か野犬の餌食になるよ。」店の兄ちゃんに”ロコ”扱いされる始末。

毎日のように足繁く店へ通い、兄ちゃんも”ロコ”の本気度を理解してくれたらしく、1ヶ月程かかってようやく純メキシコ産チャリダー仕様自転車が完成した。
リアキャリアはママチャリに付けるような細い荷台を溶接して取り付けてくれたが、後ろから見ると斜めに取り付けられていて、タイヤが擦れるか擦れないかギリギリの位置。ご愛敬と受け入れる。

「一日どのくらい走るんですか?」
「大変だったことは何ですか?」
「何か危険な目に遭いましたか?」

自転車旅ならではの体験談をみんな期待するだろう。しかし、”ロコ”はそんな勇敢なエピソードを携えていない。
何故なら、道中ほとんど自転車で走っていないから。

短くも儚い”ロコ”こと私の自転車旅の幕開け。行き付けのタコス屋があって、冷えたビールを片手に、RON RINALDI "MEXICAN SUMMER"のようなご機嫌な音楽を流しながら、ヘラヘラして人生ナメたような生活ともお別れだ。


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