見出し画像

#5「ジェンダーニュートラルランゲージ」とは?

この投稿では、「ジェンダーニュートラルランゲージ」とは何か、について記します。

「ジェンダー」とは

まず、「ジェンダー」とは、英語で gender と記します。日本国連ウィメン協会によると、“ジェンダーとは、男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会、女性と男性、女児と男児の間における関係性、さらに女性間、男性間における相互関係を意味します”とあります。

また、Oxford Advanced Learners’ Dictionary(オンライン版)によると、gender とは、"the fact of being male or female, especially when considered with reference to social and cultural differences, rather than differences in biology" (特に社会的及び文化的な相違に関連した場合、生物学上における相違ではなく、男性か女性である事実)とあります。(和訳は筆者による)

端的に言うと、“文化的・社会的な性”のことと言えます。これは、私たち人間が生まれたときにアサインされた生物学・解剖学的な性とは異なります。生物学・解剖学的に女性として生まれれば、文化的・社会的な性も女性である、というのがこれまで広く一般的な常識とされてきました。しかし、それは社会が決めたことであり、実は生物学・解剖学的な性と、文化的・社会的な性が必ずしも一致しているとは限りません。つまり、出生時に割り当てられた性(sex)と自認の性(gender)は一致しない場合もあるのです。
 

「ニュートラル」とは

次に、「ニュートラル」とは、英語で neutral と記します。これは「中立の」という和訳があてられています。「どちらでもない」とも言えます。

これらの二つを合わせた「ジェンダーニュートラル」は、「中性」と訳されることが多いです。しかし、「中性」と一言にしてしまうと、いまいち掴みどころがなく、誤解を生んでしまうかもしれません。文化的・社会的な性が女性というくくり、もしくは男性というくくりの両方に属さない人々が存在します。多様なジェンダーが存在するのです。ジェンダーの多様性について語る場合は、色の「グラデーション」で表すと分かりやすいです。

英語の neutral にも「中間色」という意味があります。例えば、赤でもないし、青でもない。その中間のどこかではあるが、決まった濃淡の地点があるわけでもない。まさに、ジェンダーは、社会的な性のグラデーションであるのです。

ジェンダーはグラデーション


「ジェンダーニュートラルランゲージ」とは

そして、「ジェンダーニュートラルランゲージ」は、ジェンダーを限定しない言語です。

「ジェンダーを限定しない言語」と言えば、20世紀のウーマン・リブの流れを汲む言語改革では、女性と男性、という二つのジェンダーの差を埋めることに焦点が当たっていました。例えば、

「警察官」policeman → police officer
「消防士」fireman → firefighter

policeman 「警察官」という仕事は、かつては男性の職業であるという常識でした。それが、女性の社会進出にともない女性警察官が登場するにつれ、「男性」を表すman が語尾についていることに異論を唱える声があがりました。そこでpolice womanと女性であることを明記していたこともありました。それから、police officer という新しいことばが生まれ、定着しました。「消防士」を表すfireman も同様に、firefighter という新しい単語が取って代わりました。このような言語改革で生まれた言葉には、例の他にもchair person, flight attendant, serverなどたくさんあります。 

これに対して、21世紀以降は、女性と男性という伝統的な2つの性だけがあることを前提とせず、多様な性の在り方を前提とした考え方が浸透しつつあります。つまり、まさにジェンダーはグラデーションである時代となったのです。

ジェンダーがグラデーションであれば、ことばの中にも、女性と男性という伝統的な2つの性以外の、つまりジェンダーニュートラルランゲージを使う必要性が生まれています。

結び

私たちのワークショップでは、日本人が真のグローバル人材として世界で協働できるようになるために知っておくべき新時代の素養をお伝えし、言語を切り口として多様性理解を深めていただきます。同時に、参加者の皆さんがご自身のジェンダーアイデンティティについても考察していただく機会を提供しています。

文責:小田


引用

国連ウィメン日本協会

Longman Learners’ Dictionary 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?