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1019_オールフィクション

自分が何を信じるか、によって人生が変わってくる。認知能力を発達させたホモ・サピエンスは、フィクションを信じることのできる特殊能力を使って、他の種を圧倒して劇的に繁栄し、地球の支配者になった。

しかし、それには思わぬ副作用があった。人類の種としての繁栄と引き換えに、このフィクションによって個人の人生が良きにもつけ悪きにつけ左右されることなってしまった。このフィクションを信じるという特殊能力は、この種の能力につきものといえる諸刃の剣であるようだ。

フィクションを使って大勢のサピエンスを統率し、作戦を立て、思想や行動をある一つの方向にコントロールすることによって、自分たち以外の他の種を駆逐することができた。さらに、土地を耕し農業を発展させることによって、食料を安定的に供給できるようになった。

一箇所にとどまるようになると、町ができ、やがて国ができるようになった。加速度的に増大する莫大な人口を維持するために、あらゆるフォーマットを定める必要があった。社会や規範、ルールのほかに宗教や思想から、資本主義や貨幣経済など、あらゆるフィクションをサピエンスは創造し続けた。

その結果、個人としてのホモ・サピエンスは自らの作り出したフィクションそのものに苦しむことになった。フィクションの副作用とは、実体のない虚構に意識がとらわれて、前後不覚に陥ってしまうこと。人間が生きていく道には、迷妄と幻想の深く濃い霧に覆われてしまった。

母親は宗教を信じていて、人類の平和と安寧を願っている。
父は資本主義経済を信じて、株式投資の未来を見ている。
娘はシャネルのバッグを信じて、彼女を取り巻くコミュニティ内やInstagramの中でそれがどれだけ重要かにとらわれている。
息子はポケモンを信じていて、ポケモンバトルに負けることは彼の心の死を意味する。

何を信じるかによって、どんな人生を歩むかが変わる。何を信じるか、信じないかもあなた次第。

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