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629_Shuren the Fire「my words laugh behind the mask」

ジブリか新海誠の最新作の映画を見た夢を見たような気がした。

なぜか主人公は職場の後輩の女の子だった。確かに彼女は、帰国子女で仕事も優秀で何事にも前向きでしかも可愛いという、主人公感抜群の属性を持った子だった。

話の筋は確かこう。主人公は女子高生のこの女の子は、クラスの突拍子もないほどのIQの高い物理の天才だけど社会性のない男の子だ(これは間違いなく僕自身の投影かもしれない。だが残念ながら物理の天才ではない)。

二人は違う世界から来た龍のような生命体を偶然発見する。周囲にバレないように、男の子の物理の法則を突破したアイデアでなんとか龍を元の世界に戻そうとする奮闘する話。文字にしてみると、なんとまあ安直なのだろうと頭を抱える。

だが我ながら、この夢を見ながらすごくワクワクしてしまった。こんな年になっても、こういうジブリと新海誠を合わせたような物語を空想の中で描いてワクワクしたいのだと言うことなんだろう。エンディングがすごくchillな日本語ラップでエモいなあと思っていた。たぶん寝る前にDJ BAKUの日本語ラップのMIXを聴いていたせいだ。

2人は龍をなんとか元の世界に送り返して、涙ながらに別れる。ラストを見終わった後、すごく感傷的な気分になって起きた。嫁が隣で寝息を立てているのを聞いて、残念ながら現実に帰ってきたかと思っては見たが、特に悪い気はしなかった。すでに早朝の6時だ、昇る朝日でも拝みながら、豆でも挽くか。

誰か、今の夢を映画化してくれないだろうかな。そうしたら僕が一番の視聴者になって、映画サイトで高評価をするのに。昔、自分で作った好きなアーティストのプレイリストを聴きながら寝落ちしたら、そのアーティストが出るフェスに行ってめちゃくちゃ楽しかった夢を見て、起きた後に「誰か、こんなフェス開催してくれないかな」と思っていたのに似ている。

だが、世の中には自分が見た夢だとかを本当に映画化した人がいる。他でもない、その映画を作った監督だ。

よし、コーヒーでも飲みながら、今見た夢の話をもっとプロットを詰めていこう。これまでは宮崎駿とか村上春樹とか誰かが作ったワクワクする物語ができるのをずっと僕は待っていただけだ。だが今は違う。なにしろ、僕は自分で物語を創作することができる立場にある。

例えば、こんな風にワクワクするような夢を見て起きたことは、確か今まで数え切れないほどあったはずだ。でも残念ながら、自分はそこから特に何もしてこなかった。毎日学校や職場で繰り返す退屈で単調な作業の中で、あるやなしやの創造性を消耗し食い潰し続けてきただけだ。

自分が見た夢から着想を得て作品を生み出すなんていわゆる中二病真っ青だが、たぶん宮崎駿も新海誠も村上春樹も相当な中二病患者であったろうに。(今でもそうかもしれないとさえ思う)自分をモデルにした主人公にクラスの憧れの女の子をヒロインに仕立て上げて、空前絶後の冒険活劇を頭の中でずっと妄想し続けること。(たまにエロを味つけることも忘れない)僕は残念ながら自分が現実世界の主人公ではないことを早々に気付いてしまったので、そこから降りてしまった。

だが創作することは自分が主人公になることだと気付いた。自己啓発本的に言えば、創作活動は自己肯定感を生み出すことができる最高のメソッドなのかもしれない。筋トレ、スピリチュアルや仕事や音楽。なんとか自分で主人公になろうと模索し猛烈に没頭してきた。もうすぐ40も近いのに今だに人生の主人公になっている気がしない事情はもうこの際、テーブルの端にでも置いておこう。

物語を書き続けていけば、いつかはこういう夢に見たような話を自分でも生み出せるかもしれない。世の中ではAIが超進化して創造的な仕事さえ人間から奪っていくのではないかと言われているというのに。時代と人生を逆行して、いまだにこんなバカらしいくらいに思春期の夢見がちな淡い期待を抱きながら、僕はカウンターキッチンの前に置かれたノートPCの蓋を開く。

見つめられると
俯く君は
俺の手を取り
静かに笑う
あなたと2人
宇宙で迷子
あなたが好きだ
宇宙で一番


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