妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「廃山寺の対決…」

その手に掴つかみし女子おなごを放せ！
この化け入道め！

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ここは人里離れし
廃墟はいきょの山寺…

拙者が一夜の夜露よつゆを凌しのいで
寺の外陣げじんで寝ておると
「ズシーン！　ズシーン！」
地震の様な地響きで目が覚めた

拙者の愛刀『斬妖丸ざんようまる』が震え出しておる…

拙者は『斬妖丸』を掴むや境内けいだいへと飛び出した
拙者の驚きに見開かれた目に映うつりしは
寺の鐘楼しょうろうの屋根上より顔を覗のぞかせた
身の丈たけ二丈にじょう（約６ｍ）はあろうかという
一つ目の大入道ではないか…

なんと大きな…

む…？
化け入道が左手に掴つかみおるのは
若い女子おなごの身体ではないか…

それにヤツの口から覗のぞきしは…
人の片脚かたあしっ！

おのれ、化け入道め！
人を喰らうかっ！
許すまじ！

拙者は愛刀を抜き放った…

行くぞ、『斬妖丸』！
女子を救いヤツを滅する！

「ブッ！」
化け入道の口から
食いちぎられし人の足が
拙者に向かって吐き出された

拙者は風のような動きの
『疾風はやての舞い』で軽く躱かわすや
跳とび上がりざま
目にも止まらぬ逆袈裟斬ぎゃくけさぎりを放ち
『斬妖丸』で女子を掴みしヤツの左手首を
斬り落とした

そして若き女子おなごの身体を
落下寸前に抱き止め
化け入道から飛び退すさる

この間…　瞬まばたききする間まに過ぎず

「ぐぎゃおおうっ！」
一つ目入道は
右手で失った左手首を押さえて
雷の様な声で喚わめき散らす

拙者は生きている女子を
寺の外陣げじんの畳たたみに寝かしつけ
『斬妖丸』を構え直して
境内に跳び降りた

見ると、化け入道は残った右手に
太さ一尺余り（約30cm）…
長さが二丈半余り（約7.5m）もある八角棒を
握りしめていた

化け入道め…
いつの間にあんな八角棒を…？
この寺の何処いずこかに隠しておったか…

あの棒で殴られれば
拙者と言えど
一撃で撲殺ぼくさつされるのは免まぬがれん…

よし…
『斬妖丸』よ…
『疾風はやての舞い』にて八角棒を躱かわし
跳躍ちょうやくざまの一文字水平斬りにて
一気にヤツの首を斬り落とすぞ

罪深き人喰い化け入道よ！
拙者が今から
貴様を退治てくれようぞっ！

いざっ、参るっ！