見出し画像

これからの現代文学習について ~『無敵の現代文記述攻略メソッド』活用のヒント~

読むことから書くことへ、そして読むことへ

 2020年2月、拙著『無敵の現代文記述攻略メソッド』かんき出版より刊行されました。なんと発売数日で重版出来! お読みくださった方々、本当にありがとうございます!

 本書は「記述」対策を前面に押し出したものとなっていますが、それは単に、「記述問題の克服」をのみ意図してのことではありません。むしろ、

記述問題を解くためには本文の正確な読解が不可欠。そして、本文を正確に読解するためには、記述の訓練が有効。すなわち、〈読むことと書くこと〉はお互いに補完し合う関係であり、その双方を同時に鍛えることが大切!

というコンセプトを軸として書かれた一冊になります。
 とりわけこだわったのは、

 ☆本文の内容をメモしながら読む!

ことと、

 意味調べノートを作成しながら読む!

ということ。
 特に前者は、〈文章全体の論の展開を整理する〉という、現代文読解の要となる力の養成に直結する作業になります。僕は自分の授業で実際にこのような作業を宿題として課しているのですが、これをコツコツ継続していった生徒たちは、驚くほどに成績を伸ばすんですね。以下にかつての生徒たちの作成したノートを貼っておきますので、ぜひご参照ください。最初のほうに載せたのは、高校一年生のもの、最後のほうは受験生のものです。なお、掲載については本人の許可を得ています。

予習ノート01

予習ノート02

予習ノート03

予習ノート04A

予習ノート04C

予習ノート05

 より詳しい〈本文メモ〉の作成法については、拙著『無敵の現代文記述攻略メソッド』をご参照ください。一文ずつ丁寧に分析し、それをどのようにメモにしていくかということを徹底的に解説した、これまでにはなかった参考書であると自負しています……宣伝すみません!

より発展的な学習へ

 ところで『無敵の現代文記述攻略メソッド』をお読みになった皆さんの多くは、「あれ? 収録されている問題数が少ないな…」と感じられたかもしれません。〈本文メモ〉作成のための課題文は全部で3本しかありませんし、入試問題の引用も2本、しかも設問を一つに絞った短いものとなっています。演習量という点では、確かに物足りない内容であるかもしれません。
 実はこの収録問題数の少なさには、理由があります。
 一つは、一文ごとに丁寧な解説を施すという本書の理念上、多くの問題を載せることは難しかったという点があります。これは単純に、物理的な制約です。
 そしてもう一つは―—もちろんこちらのほうがより本質的な理由なのですが――僕がこの本で皆さんにお届けしたかったのは、

☆これから現代文をどのように学んでいくか、その具体的な学習法☆

だったのですね。つまりは、本書でマスターした学習法すなわち現代文学習の「メソッド」を――もちろんそれは〈本文メモ〉の作成であり、「意味調べノート」の作成であるわけですが――本書以外での勉強にもおおいに活用していただきたい。本書は、それを可能にするために、紙幅の許す限り具体的かつ詳細にわたって、その「メソッド」の解説に字数を費やしたわけです。
 つまりは、本書はあくまで現代文学習における入り口に過ぎないんですね。ここで学んだことをいかにこれからの学習で実践することができるか。より具体的に言うなら、

日々の"読書"でどれだけ「メソッド」を実践することができるか

ということが大切になるわけです。
 要するに拙著『無敵の現代文記述攻略メソッド』は、〈現代文の読解力・記述力を鍛えるための"読書術"〉を意図して著したものなのです……!

 本書section3「必ずできる無敵の自己採点」の[5]表現力を鍛えるために②受験勉強と読書、でも紹介していますが、例えば、

◆「よりみちパン!セ」シリーズ(新曜社)
 :評論文を苦手とする中高生の、最良の入門書

「岩波ジュニア新書」シリーズ(岩波書店)
「ちくまプリマ―新書」シリーズ(筑摩書房)
 :アカデミックな文章への入り口として

「ブルーバックス」シリーズ(講談社)
 :理系・医系の読み物として

「日本史リブレット」/「世界史リブレット」シリーズ(山川出版社)
 :評論文の読解力を鍛え、同時に歴史的な知識を手に入れられる小冊子

あたりから自分の興味関心、あるいは志望する学部に即した一冊を選び、拙著『無敵の現代文記述攻略メソッド』で紹介する「メソッド」を実践してみてください。
 もちろん、一冊の本のすべてを〈本文メモ〉にすることは難しいかもしれません。その際は、自分にとって興味深い章やページ、あるいは難解でうまく理解できないような箇所だけに絞って作成してみましょう。
 非受験学年の高校一年生、二年生も、そして受験学年の皆さんも、受験学年の夏休みに入るまでは、日々コツコツとここに紹介する作業を継続するとよいですよ。ここで読解力と記述力を鍛えることができたなら、受験学年の後半から始めるべき過去問演習を、より有意義かつ効果的に実践することができますから!
 以下に、普段の授業で配布している「読書案内」を添付しておきます。こちらもぜひぜひ参考にしてください。

スクリーンショット (16)

スクリーンショット (17)

 noteの以下のシリーズも、幸いにしてご好評をちょうだいしております。ご一読、よろしくお願いいたします!

新しい大学入試に向けて

 2020年度より実施される大学入学共通テストで記述問題が中止になったことは記憶に新しいと思いますが、しかしながら現状、では実際にどのような出題になるのかはまだ確定されていません。が、おそらく、複数の文章や資料を参照する形式や、そして実用文(いわゆる契約書や法律文、新聞など)は出題されることになると思います。
 あるいは、国公立や私立の現代文でも、これまでにはあまり見られなかったような形式の新傾向の出題が、ちらほら目立つようになってきました。
 皆さんは、こうした現状に対して、さぞ不安を覚えていることと思います。そんな皆さん向け、最後に、拙著『無敵の現代文記述攻略メソッド』の結びの文章の一節を引用しておきたいと思います。

 もちろん、新しい形式に慣れることは必要です。
 見たこともない問題に相対した時、人は往々にして実力や能力のいかんにかかわらず、手が止まってしまうものですから。
 しかし、僕は断言したい。
 本質的な学習をしていれば、どんなイレギュラーな出題にも対応できる!
したがって、
 形式の新奇性などは、表面的な問題にすぎない!
と。
 本質的な学習を積み重ねていけば、たとえどんな珍妙な問題であったとしても、類題をいくつかこなせばすぐに対処できるようになります。
 だから、世の中が「新傾向」に一気に流れていくこんな状況であるからこそ、逆に、
 王道の本質的な学習
の重要性を僕は訴え続けていきたいのです。
     (『無敵の現代文記述攻略メソッド』「おわりに」p252~253)

 焦らず、やるべきことをきちんとこなしていけば、何がどうなろうとも不安を覚える必要はありません。願わくはこの一冊が、悩める皆さんにとっての一筋の光明とならんことを…! 〈了〉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?