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気になることば【0026】

今更のように民子の美しく可愛らしさに気がついた。

〜伊藤左千夫『野菊の墓』より〜

「美しく」という語は、「可愛らしさ」とペアになって使われているはずです。でも僕たちは、この「美しく可愛らしさ」という言い回しに違和感を覚えますよね。つまり、現代日本語の感覚から言うなら、この文は、

今更のように民子の美しく可愛らしいことに気がついた。

などと表現されるべきなんです。
この場合、「美しく可愛らしいこと」の「こと」は、「美しく」にも「可愛らしい」にも接続すると読み取れます。つまり、

・美しい + こと
・可愛らしい + こと

この2つのフレーズが、

・美しく可愛らしいこと

と一つにまとめられた、と。
となると、もし、「野菊の墓」中の「美しく可愛らしさ」という言い方が当時には普通に使われていたものであったなら、昔の日本語では、

・美しい + さ → 美しさ
・可愛らしい + さ → 可愛らしさ

の2つのフレーズを、

・美しく可愛らしさ

と、一つにまとめることができた、ということになりますよね。
実のところがどうなのか僕にはわかりませんが、こういうことを、なけなしの知識であれこれと考えてみるのは、本当に楽しいです😊


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