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【本の紹介】吉田裕『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』 (中公新書)

□難度【★★★☆☆】
いたずらに難解ではないし、新書にふさわしい、入門書と言える誠実な書き方になっている。ただし、歴史的な資料も数多く引用されており、それを読むためには古文漢文の知識は必要。もちろん、資料を飛ばして読むだけでも、十分な価値を持つ一冊である。

□内容、感想など
戦争をめぐるロマンティシズムというものは、やはり、僕たちの社会に否定し難く存在する。戦争を描く小説や漫画やアニメ、あるいは映画やドラマなどに、"物語としてのおもしろさ"や、"ドラマティックな筋書や描写"の見られることは、決して少なくないだろう。けれども、戦争を知る、あるいは戦争を研究する人たちの多くは、そこで起きたこと、そこで実際にあった死について、それらが物語性やドラマ性の対極にあったことを証言する。本書『日本軍兵士』において、膨大な資料・史料に基づいて紹介される"戦地での死"もまた、そうした無残な死ばかりである。本書のような著作を読むことによって、おそらくは自身の中にもあるであろう戦争へのロマンティシズムを相対化することは、僕たちにとって、計り知れないほどに大切なことだと思う。

□こんな人にオススメ
・本書を読むことのできる日本語読解力を持つ、すべての人。
・開いたページを拾い読みするだけでもいい。


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