*21 四の五の言わず
一を聞いて十を知るが如くある程度の事は察し良く熟せるという自負のある私であったが、事勉学となると、ましてや我が人生に直結した物ともなれば、ドイツ語で見聞きした物を察したのみで満足して進むわけにはいかず、学んだ事を慎重に頭の中に詰め込んで、それを今度は落とさないようにこれまた慎重に歩みを進めていると、かつて要領良く仕事をしていた私が嘘のように思われ、またいくら私の歩みが遅くなろうとも当時と等しい速度で過ぎていく時間に否応無く焦燥感を抱かされるのである。まったく一筋縄ではいかず