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新システム設計プロセス MBD|トヨタ流開発ノウハウ 第15回


第14回の記事で、システム設計組織の在り方を紹介しました。システム設計組織が構築することができ、連携方法が明確になった時点で、着手しなければならないのが、新たな設計プロセスの構築です。第14回のおさらいを簡単にしましょう。

重要なのは、以前のようにメカ設計後、エレキ設計、ソフト設計のようにバトンタッチにて設計を進めていくのではなく、ソフト設計が先頭には立つものの、構想設計内容をエレキ設計、メカ設計にインプットし、コンカレントに設計を進めていくことです。

このような設計組織で情報を連携していきながら、開発を進めていくためには、適切なプロセスがなければ難しいでしょう。コンカレントといっても情報の連携無しに互いに同時に設計を進めていくと、設計がある程度完了した時点でそれぞれの設計内容を組み合わせた時にエラーが発生してしまう可能性が高いのです。

Model-Based Development (MDB)とは

それではどのようなプロセスを構築していくべきなのでしょうか。それがMBDです。

MBDは「Model-Based Development」の頭文字を取ったものです。今自動車メーカーを中心にMBDを普及させるための「MBD推進センター」が2022年に発足されました。MBDの最終目的は、モデルのみで開発を行うことで、試作レスを狙うためのものです。

自動車の試作を作るためには多くの時間がかかると共に、試作車は非常に高価です(通常販売される量産車の約10倍以上かかります)。試作レスにより、開発費が大幅に低減することができると共に開発時のリードタイムの短縮も可能になります。

MBDによる設計プロセス

このような目的を元にまずはプロセスを考えていきましょう。
モデルを活用し、効果を最もはっきできる段階が工程の上流側となります。

1)研究開発(技術要素研究)段階
 CAEモデルを実機に限りなく近づけていきます。モデルを用いて素早く、多岐に渡ったアイデアの検証を行っていきます。新技術の中でも既存技術の組み合わせの割合が多い≒既存モデルの組み合わせでMBDが実現可能になります。

2)構想設計段階
(1) 車両全体構想モデルを構築します。その車両の目標、達成シナリオ、機能分担をモデルで検討し、全体最適を実現します。今までの開発プロセスだと、機能設計部門毎(エンジン、シャシー、ボディーなど)に設計をすることにより、すり合わせに時間がかかり、またそのすり合わせ段階で車両全体の最適化が出来ずに、力の強い機能設計組織が中心となった車両になってしまいます。
(2) サプライヤーにおいて、ニーズとシーズのやり取りが容易となり、モデルで自動車メーカーと連携することが可能となります。

3)詳細設計段階
詳細モデルで各ユニットの諸元を決定していきます。全ての設計のモデルを構築することで、派生車両製品の開発がモデルでの組み合わせで設計開発が完了することができるようになります(試作車レス)。

これらのプロセスを分かりやすくプロセスで描くと次のようになります。

この物理モデルと制御モデルを構築し、設計と評価を同時に実施することができるようになることが大きなメリットになります。
それぞれのモデルを構築していくためには情報連携が必須となりますし、それぞれの設計への制約条件を情報として共有しなければなりません。このようなプロセスを構築することによりシステム設計を精度高く実現できるようになります。

MBD推進センターのメリット

また、MBDはもう1つのメリットがあります。
冒頭に解説したMBD推進センターでモデルを管理・運用することにより、さまざまなメーカーで開発したモデルを普及させていくことが可能になります。
いちから作成したモデルを使用するのではなく、モデルの流用設計を実現させることにより、日本の自動車メーカーの強みである「すり合わせ設計」をリードタイムの短縮を行いながら、高い次元で成立させることが可能になります。

CAEはいちからモデルを作成しようとすると多くの時間がかかりますし、さらに物理モデルと制御モデルを連携させようとすると多くのノウハウをモデルに投入しなければなりません。そのため、モデルの流用設計を実現させなければ、MBDの成功はありません。


皆さんいかがでしょうか。モジュラー設計の考え方をCAEで実現し、MBDを成功させることができれば、多くの工数削減だけではなく、設計のノウハウの蓄積(モデルへの蓄積)も実現できるようになります。また、削減した工数を付加価値の高い製品への設計に注力することができるようになり、企業競争力も高まっていくでしょう。
これから労働力が減少していく中で、いままでの商品数を減らさずに、業務量を減少させるような設計改革を行いってください。


講師プロフィール

中山 聡史 |株式会社A&Mコンサルト 取締役専務 経営コンサルタント
2003年、関西大学 機械システム工学科卒、トヨタ自動車においてエンジン設計、開発、品質管理、環境対応業務等に従事。ほぼ全てのエンジンシステムに関わり、海外でのエンジン走行テストも経験。2011年、株式会社A&Mコンサルトに入社。製造業を中心に自動車メーカーの問題解決の考え方を指導。2015年、同社取締役に就任
主なコンサルティングテーマ
設計業務改善/生産管理・製造仕組改善/品質改善/売上拡大活動/財務・資金繰り
主なセミナーテーマ
トヨタ流改善研修/トヨタ流未然防止活動研修/開発リードタイム短縮の為の設計、製造改善など
※2023年9月現在の情報です

近著





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