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ソーシャルビジネスの成功と失敗を分けるもの

GEMSTONEパートナーで、事業デザイナーの今尾江美子です。GEMSTONE参画前の3年間ほど、JICAという国際協力機関で、ソーシャルビジネス支援をしていました。具体的には、途上国でソーシャルビジネス(BOPビジネス/SDGsビジネス)を立ち上げる日本企業に対して、資金支援・非資金支援をするというもので、組織としては累計で110件以上の支援(退職当時)、私自身も常時20~30件の支援をしていました。

今回は、そうした多くの事例を見てきた中で感じた、「ソーシャルビジネスの成功と失敗を分けるもの」について書いてみたいと思います。

よくある失敗例

まずはじめに、成功率は(定義にもよりますが)そもそも高くありません。途上国のソーシャルビジネスは、ざっと考えても、3重の難しさがあります。①途上国という難しさ、②新規事業をつくるという難しさ、③社会課題の解決とビジネスを両立させる難しさ。1つずつでも難しいものが3つも重なっているので、そう簡単に成功するものではありません。

では、失敗はどんなふうに起こるのか。実際の例から、思いつくかぎりですが挙げてみます。

・「モノ」(商品や技術)はあるが、それを事業化する「仕組み」がない
・協力してくれる現地パートナーがいても、「ビジネス」パートナーになっていない(途上国ビジネスに現地パートナーはほぼ不可欠)
・その事業に対して、組織レベルでコミットしていない
・なぜこの事業をやっていくのか?という目的がいつの間にか見失われている
・JICAの支援を受けることが「手段」から「目的」に変わってしまっている

成功の共通点

では反対に、成功する場合の共通点にはどんなものがあるでしょうか。失敗の裏返しになりますが、こちらも思いつくかぎりで挙げてみます。

現地のニーズに立脚している
・現地にそのビジネスを主体的に運営する体制がある
・製品やサービスだけではない「ビジネスモデル」全体が描けている
「なぜそれをやるのか」が明確になっている(社会的意義とビジネスの両面で)
経営層がその事業にコミットしている

成功と失敗を分けるもの

ここまでに挙げたことは、実際に、成功と失敗を見たときに、そこに現れていたことでした。でも、なぜこうした違いが現れるのだろうか?何がこの違いを引き起こしているのだろうか?

それを考えていると、一つのことに思い当たりました。成功例と言われるものに共通していて、そして、他の要因にも影響していると思われるもの。

それは「その事業を絶対に諦めない人がいる」ということ。

スティーブ・ジョブズは、とあるインタビューでこのように語っています。

成功と失敗の一番の違いは、途中で諦めるかどうか。失敗する人は途中で諦めてしまう。(筆者訳)

途上国のソーシャルビジネスは、成功といわれるまでに、特に長い時間を必要とします。その間、ありとあらゆるトラブルや困難が降りかかります。本当に苦労の連続です(だからそのチャレンジをする人を本当に尊敬します)。やめる理由を探せば、いくらでも簡単に見つかる。そのどこかで諦めた時点で、それは「失敗」となってしまうのです。

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諦めない人がいる

失敗、つまり諦めるきっかけはいくつかありますが、「担当者が異動になった」というのは、よくある一つです。部署が変わったから離れる、というのはつまり、チャレンジが人ではなくポジションについていた状態、と言えます。(一般的にはごく自然なことだと思います。)たまたまそのポジションに配属されたのでやっている(いた)、異動になれば続ける理由はなくなる、ということ。

一方で、「諦めない人がいる」と、部署が変わろうと組織が変わろうと、諦めずにやり続ける。そのチャレンジが、ずっとその人(もしくは人たち)についています。諦めないので失敗しない。成功するまで、かたちを変えてでも続いていく。それがはじめは小さくても結果を生んでいく。

人と仕事が結びくこと

そう考えていくと、ソーシャルビジネスの成否を分けるものは、それが、それをやる「人」としっかりと結びついていること、その人のBeing(あり方や存在)と繋がっていることなのではないか。これが、途上国でのソーシャルビジネス支援の経験を経た、私なりの一端の結論です。

今月スタートするオンラインプログラム「EMERGE」も、そんな考えのもと、その人のBeingとつながる仕事をつくることを大事にしています。それが結局は、ソーシャルビジネスをつくることに繋がっていくと思っているからです。

(文:今尾江美子)

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