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御社の「業務プロセス改善」はなぜ頓挫したのか?~第2回 納得できる業務プロセス改善の進め方①~やってしまいがちな失敗~

業務プロセス改善に限らず、世の中に出回る話の大半は成功例です。
しかし、成功例の陰にはたくさんの失敗が潜んでいるのです。
今回は、著者自身が見てきた、プロジェクトが頓挫する“共通する失敗のポイント”を反面教師として紹介しようと思います。

問題①:「見える化」しない

「今は何が問題なんですか?」
「なぜ、業務プロセス改善が必要なんですか?」

業務プロセス改善に取り組もうとしている企業に対して、このような質問をした際に、何かしらの問題や目的を「見える形」で説明できる企業は実に少ないです。
説明できたとしても口頭であることがほとんどです。
目的を「見える化」することのメリットは、メンバー間の認識共有、目的意識、関係者の把握など、プロジェクトを進める上で欠かせないコミュニケーションの軸が作られることです。
取り分け、実際に作業をするメンバーが、その作業が必要である理由を明確にすることがプロジェクト推進の要と言えるでしょう。

『3人のレンガ職人の話』をご存じでしょうか?
中世のヨーロッパで旅人が3人のレンガ職人に会い

「何をしているのですか?」

と尋ねると、1人目の職人は

『親方の命令でレンガを積んでいるんだよ』

と面倒くさそうに答え、2人目の職人は

『レンガを積んで壁を造っているんだ。大変だが賃金がいいからやっているんだ』

と答え、3人目の職人は

『完成まで100年以上かかる教会の大聖堂を造ってるんだ』

と答えた、という話です。

3人のレンガ職人

これを現実の従業員に当てはめてみましょう。
1人目は退職もしくは役に立たない作業をしてプロジェクト推進の足を引っ張り、2人目は目先のお金のためだけに仕事を選び別の会社に転職してプロジェクトを頓挫させ、3人目はしっかりと目的を達成する、となるのではないでしょうか。

従業員に3人目のレンガ職人になってもらうためには、目的の理解、目的のために必要な作業の意味、全体の中での自分の役割、などがイメージできている必要があります。
そのためには、メンバー全員が目的を共有し、全体の課題を把握し、自ら担当する仕事の位置づけを知り、さらにメンバー同士の認識を共有する必要があり、そのための「見える化」が必要なのです。
「見える化」は、プロジェクトを成功に導くために非常に重要な基礎を築く手段だ、ということを忘れてはなりません。

問題②:関連業務・関係者の考慮不足

業務プロセスは繋がっています。
これはごく当たり前のことですが、実は組織の中で業務プロセス改善を行うと、業務の始まりと終わりが切れているように考えてしまうことが往々にしてあります。
自分、自分の部署、自分の会社など、業務プロセスの範囲を限定的に捉えてしまうのです。
業務プロセス改善を進めるためには、対象となる一連の業務プロセスの目的をしっかり把握することと、一連の業務の関係者を把握することが必要です。
つまり、何の業務のプロセス改善で、誰の業務が変わるのかを知るということです。
関連業務・関係者の考慮が不足すると、業務プロセス改善が進み始めてから

「そのやり方を変えたらこっちのやり方も変えないと!」
「そっちはラクになるけど、こっちはひと手間増える!」

などのクレームが生じ、遅々として進まなくなります。
こうなると、結果的に

「結局はお互いの領域で少ししか改善できない」

最悪の場合は、

「結局今のままがバランス取れていていいよね!」

という結論になってしまいます。
この原因は、セクショナリズムや担当者の視野の狭さだと思いがちですが、実はそれは間違いです。
本当の原因は“現状の実務に詳しい現場の担当者に任せる”からダメなのです。
第一回でも述べたように、現場の担当者は他部署を巻き込んだ業務プロセス変更をする権限はありません。
にもかかわらず、

「現場に考えてもらったけど結局は今が一番いい」

など担当者へ責任転嫁している場面がよくあります。
本来は、プロセスを変える権限を持つ役職者が業務の目的を理解し、そのために必要なプロセスを再設計しなければならないのに、です。
関連業務・関係者の考慮不足というのは、別の言い方をすれば、経営者自身が業務変更を通達する相手や範囲を理解できていないということなのです。

問題③:抵抗モンスターの放置

業務プロセス改善に関わらず、何か新しいことを始めようとしたり、何かを変えようとしたりすると抵抗を示す人が頭に浮かぶかもしれません。
ただし、これは“現状維持バイアス”という人間の本能でもあることをまず理解しないといけないでしょう。
しかし抵抗モンスターはそれだけではありません。
ここでは“現状維持バイアス”とは異なるモンスターをいくつかご紹介します。

  • ネガティブキャンペーンモンスター
    「どうせうまくいかないよ!」と吹聴するモンスター。
    メンバーをネガティブ思考にさせる。

  • 他人事モンスター
    「これは本来の仕事ではない」「自分はそう言ってない」など、当事者意識がないモンスター。
    メンバーとして役に立たない。

  • 評論家モンスター
    「この改善方法はリスクがある」「昔やったけどダメだった」などと、“できない理由”だけを探して発言するモンスター。
    いつまでも行動を起こさない。

  • 定量的効果追及モンスター
    「何時間短縮した?」「コストはどのくらい削減できた?」など定量的な効果を短期で求めてくるモンスター。
    長期的な効果より短期的な小さい効果に縮こまらせてしまう。

  • 後出しモンスター
    会議などのみんながいる前では発言せず、後でこっそり権限を持つ人に「実はこう思うんです」と伝えるモンスター。
    会議の権威を失わせると同時に、結論を翻されたメンバーのモチベーションを失わせる。

抵抗モンスター

いかがでしょうか?
長期的に見ればこうしたモンスターたちは間違いなく業務プロセス改革の足を引っ張ります。
もし、このようなモンスターがメンバー内に現れた場合、注意を促したり、最悪の場合はメンバーから外れてもらうなど、適切な対処を心掛けたいものです。

ここで紹介したような失敗は後を絶ちませんが、いずれもコミュニケーション能力やリーダーシップなどの「ソフトスキル」と呼ばれる個人的な習慣や特性の問題であり、学習可能なものだと考えています。
今一度、社内のコミュニケーションの在り方を見直してみるのも良いかもしれません。

次回は、業務プロセス改善で活用できるフレームワークに関して、事例を交えて紹介していきます。

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