初夏の風、色

好きな人の目に映る光が眩しくて、光源を辿ったらそこは窓で。「暑いね」みたいな適当な理由をつけて、その窓を全開にして横たわっていたら、いつも見ていた窓越しの空と全然違う色で。


私がその色に名前をつけるなら、もどかしい藍色。
今まで窓を全開にするのが怖かったから、今回が初めて部屋から窓のない空を見たんだけれど、目から鱗だった。そんなに絶妙な色をしていたんだね。
この街に来て1年。僑居してるわけでなく、ここに根ざして生活しているんだって実感した。

きっと、文学的なメタファーだとしたら「他者を通じて先入観を払拭する、視野を広げて新たな価値観を宿す」みたいな陳腐なものになっちゃうんだろうな。綺麗だなで終われたら幸せだろうに。

心の隙間をさすっていく、軽やかな5月の風があいさつに来た。彼も私の顔を覗きこんでそばに寝転ぶ。絡まり合う髪に、もどかしい藍色が映る。

「そういえば、大学の帰りにアイスを買ってきたよ。爽かスーパーカップどっちがいい?」

「どっちもバニラ?」

「もちろん」


2019.5.16 月の彼と


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