夜根 恋

よるねれん。恋バナしましょ。

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最近の記事

檸檬の人

 檸檬の人   金木犀の薫る夜に、私は道端で五体投地をする羽目になった。スーパーに寄った帰り、両手に米や二Lの水を抱え、明後日のデートでどうやって彼を喰ってやろうかと考えていたら、両足から転んだのだ。きっとこれは彼に手を出してはいけないというお告げだったのかもしれない。けれど、久しぶりに見た血がなんだかやけに面白くて、変なホルモンか何かが出て痛みなど感じずに、スキップしながら家に帰った。  どうやら私は彼に対する恋愛感情というよりも、彼の記憶に残りたいという気持ちが大きい

    • 星映る川沿いの短編集

      「ここの地名、川に星がきれいに映っていたから星川っていうんだよ。比喩でもなんでもなくって。犯人がたくさん泳いでいるわけじゃもちろんないし、川が干されたわけでもない。現にこの川はきらめいている」 2019.5.21 7限が終わって21時。帰るのがなんだか惜しくって。駅の近くの川沿いをふたりでぼんやり歩いていた。川の流れていく先を見ながら、すこし勇気を出して、「死ぬなら入水かな」って告白をした。彼は「それは文学的だから?」と尋ねた。 「まあそれもある、でも、1番は誰にも死ん

      • 初夏の風、色

        好きな人の目に映る光が眩しくて、光源を辿ったらそこは窓で。「暑いね」みたいな適当な理由をつけて、その窓を全開にして横たわっていたら、いつも見ていた窓越しの空と全然違う色で。 私がその色に名前をつけるなら、もどかしい藍色。 今まで窓を全開にするのが怖かったから、今回が初めて部屋から窓のない空を見たんだけれど、目から鱗だった。そんなに絶妙な色をしていたんだね。 この街に来て1年。僑居してるわけでなく、ここに根ざして生活しているんだって実感した。 きっと、文学的なメタファーだと