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不遇という存在を勝手に信じない

ネットニュースを読みあさり、芦田愛菜さんが「信じる」ことについて語る聡明な言葉を目にし、ただただ尊敬の念を抱きながらポーっとしていた昼休み。いつものように隙だらけの私が、(自分にとっての)一大ニュースの発表に気がついたのは、そんな時だった。

パパーン!

宝塚歌劇団の雪組、時期トップスターに彩風咲奈さん、トップ娘役に朝月希和さんが就任することに決まったそうです!パチパチパチパチ!!

心の底からお祝い申し上げます!!嬉しい!!!!

実は私、隠れているつもりはないのですが、宝塚歌劇が大好きです。

大好きと言っても、何度も公演に通ったり、入り待ち出待ちをしたことのない、いわゆるにわかファン。なのでこの文章も、ファン目線というよりは、同じ時代を生きている一人の人間として、その唯一無二の仕事を勤めている彼女たちを通し、感じた事を書いています。

(とりわけ、時期トップ娘役でいらっしゃる朝月希和さんについてのお話になります。何と言っても、数多の宝塚ファンを驚かせた、超ド級のウルトラ逆転人事なのですから)。


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宝塚歌劇といえば男役!という世界中を探してもそこにしかない仕事をしている方々に、まず注目がいきますね。女性が男性を演じるというものすごい事をやってのけているのだから、当然のこと。

そこで娘役とは、そんな素敵過ぎる男役に寄り添う(という表現が一番妥当かな)、可憐で上品なのに力強さも持ち合わせた、この世のものとは思えないほど美しい存在。女性を演じるからといって簡単なものではなく(見ているだけで難しさをビシバシ感じる)、彼女たちも男役をより素敵に見せるために、ありとあらゆる努力をしている。

しかし、ここは芸の世界。努力が必ず報われるとは限らない

もちろんそれは男役も同じだけれど、「トップ娘役人事は水物」と言われているほど、何が起こるか分からないのだ。新人公演(若手のみで本公演と同じ演目を行う一夜限りの公演)や別箱公演(大劇場公演以外の少人数での公演)でヒロインを勤め、ピンスポットを浴びて多くの称賛を集めても、トップの座に着くことなく、惜しまれながら去って行く娘役がたくさんいらっしゃる。

さてそんな娘役人事ですが、ここからは朝月希和さんのお話
彼女は96期生として入団し、現在11年目。まず何よりも驚くことは、就任時には12年目になるというこの学年!あくまでも私が生まれてからの宝塚歌劇史でいうと、だいたい男役ならば12年目〜17年目、娘役は4年目〜7年目に就任することが多い。

そう、彼女はかなりの下積みを経ての就任になるのです。最近では、明日海りおさんの3人目の相手役を勤めた仙名彩世さんも遅咲きと言われたけれど、彼女は就任時9年目。朝月希和さんはそこからさらに3学年経ての就任になるので、さすがに誰も予想していない展開でした!(もっと細かいことを言うと、彼女は最近雪組から花組に組替えしたばかりだし、同期生から既にトップ娘役が3人出ていて、もうみんな退団してるし・・・)

そもそも、これから引き継ぐ雪組トップ娘役、現在圧倒的な歌唱力でその座に就く真彩希帆さんは2学年下の98期生。朝月希和さんは、その前任にあたる咲妃みゆさんと同期なのです!(なんとかしてこのウルトラびっくり人事の凄みを宝塚ファン以外の人に伝えたい私)

どんなに実力があって美しくても、その時トップの座に就くスターとの相性や様々な情勢によって、トップ娘役になるタイミングを逃す。そんな何人もの娘役たちを見て、私はこれまでに何度も報われて欲しい、せめて良い役がつきますように・・・、なんて身勝手にも思ってきた。

きっと、私自身の満足いかない日常を彼女たちに重ねて、自分が上手くいかないことを社会のせいにし、仕方のないことだと決めつけていたのだ。

まさに、だいたいの人間が不遇であることが世の摂理なのだと信じていた

しかし朝月希和さんにチャンスが巡ってきたのは、彼女がこれまでに置かれた場所で結果を出し続け、何よりも努力を怠らずに歩んできた結果だ。大抜擢だろうとピンチヒッターだろうと、どんな大ラッキーでも、それまでの努力がなければお鉢は回ってこない。いくらタイミングや運だと言っても、まずはそれを引き寄せる力がないといけないのだ。(彼女、いつ見てもどんな役でも本当に素敵です)

彼女のこれまでの苦労や心の内は、私には想像し得ないことだし、あくまでも遠い存在なのは変わらない。けれどなんだか今日ばかりは、愛する宝塚歌劇団に「努力を怠るな」とピシャリと背中を叩かれた気持ちです。

宝塚歌劇、その長い歴史には、圧倒的なビジュアルや才能はもちろん、運や若さやお金が渦巻き、「努力(だけで)は必ずしも報われない」ということを突きつけられるような事例がたくさんある。それでも時々びっくりするような人事によって、ファンである多くの女性たち(男性ファンも同じかな?)を勇気付けているようにも感じられるから不思議だ。

これが100年続くエンタメか〜」と、ちょっとした感動すら覚える。芦田愛菜さん論で言うと私は今日、宝塚歌劇の新たな一面を見た気分だ。

「周りが自分を裏切るだろう」「自分は誰かのせいで不遇である」と勝手に信じる前に、自分の力を信じて生きるべきだ。それを「信じる」ことは難しいことだけど、言葉にするのは簡単だから、とりあえず私は今の気持ちを「人に言う」ことから始めてみようと思った。

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もちろん、宝塚歌劇はトップスター、トップ娘役が全てではありません!
舞台で輝く全てのタカラジェンヌさんたちを隅から隅まで見ていたくて、いつだって目が足りない私です。どうか皆様に幸多からんことを、心から願います。

彩風咲奈さん、朝月希和さん、本当に本当におめでとうございます!
これからも舞台を楽しみに、応援し続けます!!

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