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青春哲学

迷い羊はつきあかりに】より
冒頭群読テキスト


汽笛に背を押されるがまま、
背をとおる一筋は焦りなのだろうか。
抜けていく緑、
いつもの青くささが遥かに遠のいていく。

未知の希望が叩きつける。
車内を煽る生ぬるい風が額を掠めてまた、
知らず故郷の匂いを削ぎ取るのだった。

長い暗転を抜ければ煌めきの街、
歪む蜃気楼は見慣れたものとは違い
騒がしさを映し上げては人々を誑し込んでいた。
さんざめくビルの狭間、
照りつく陽の威嚇に気圧されて
目を伏せることも叶わないままに
往来はいく。


巡る。
秋冬の乾ききった風も、
この街では、平凡の一部である。
春の華やかさすらもきっと、
ただの日常に、
成り果てているだろうか。


魂の煌めきというものがあるのだとしたら、
きっとそれは憧憬の中にある。
陽光の如くにこの胸を刺して痛みを伴うものだろう。
ある種の気怠さや暢気さだとかも、
この街の忙しなさを殺すのに一役買っている。
きっとひとつの才能であるのだろう。


他愛のない言葉たちの中にも感じる異物を飲み下しながら、
どこかであの青くささを求めてしまうのは罪なのだろうか。

向いてない、
その言葉が幻のようにじりじりと、
真夏の日差しが、
棘のようにこの胸をどうにも突き刺してならなかった。



劇団ロオル派生プロジェクト
LORE.p 2nd Project
迷い羊はつきあかりに
小劇場楽園
2023年8月16日(水)~20日(日)

◎チケットご予約◎
https://ticket.corich.jp/apply/270203/


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