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【ある宴会】

ホテルの〈葵の間〉では、100名程の規模の宴会が賑々しく開かれていた。

それは、ある大学の医学部の学生が主催する忘年会であった。

お酒が回ってきた頃合いを見計らって、司会者が〈し物〉の説明をし始める。

「は~いっ❗️皆さんご歓談中のところ失礼しま~す❗️・・えぇ~・・では、いよいよお待ちかねの〈演し物〉の発表タイムがやって参りましたぁ~っ❗️」

すると、会場からは大きな歓声が上がる。

「うおぉ~~~~~っ❗️」

「・・はいっ❗️はいっ❗️・・では只今から、恒例❗️年末、班別対抗演劇合戦を開催致しま~す❗️」

「待ってましたぁ~っ❗️」

「今年は俺らが優勝するぞぉ❗️」

「わあぁ~~~っ❗️」

〈演し物〉が出る前から、会場は物凄い盛り上がりようなのだ。

・・・・・・・

やがて最初の〈演し物〉が演じ始められる。

するとどうだろう、ステージには、実にリアルな〈チ■■の張りぼて〉を被った「チ■■君」と、これまた生々しい〈おマ●●の張りぼて〉をまとった「マ●●ちゃん」が出てきて、卑猥な言葉を連発しながら、まるで神楽のように絡み始めたのだ。

「キャ~~~ッ❗️もっとやってぇ~っ❗️」

「お~~いっ❗️そんなんじゃイカねえぞぉ~っ❗️」

場内は女子学生も男子学生も猛烈に盛り上がっている。

結局、出てくる〈演し物〉の総てが「リアルな下ネタコント」ばかりなのであった。

実は、彼等は「泌尿器科」の医学生たちなのだ。

日々「泌尿器」ばかりの勉強をさせられて、さぞやウンザリしているのかと思いきや、それは大間違いであった。

・・・・・・・

そうして、どの班も〈チ■マ●寸劇〉で暴れ捲った結果、しまいにはステージの奥に立て掛けてある、ホテルの大切な備品の金屏風に「バリ~ッ❗️」っと大穴まで開けるというオチまで付けて、やっと宴会が終了したのであった。

金屏風の件は完全に弁償ものだが、弁償したのかしなかったのかは、僕は知らない。

〈そうかぁ・・彼等は心底「泌尿器」が好きで、「泌尿器科」の勉強をしてるんだな・・逆に言えば、あれくらい興味を持っていないと、いい泌尿器科の専門医にはなれないだろうし・・寧ろ天晴れだと思ってやろうじゃないか❗️医学生さんたち、頑張れ❗️〉

僕はそう思うことにした。

・・・・・・・

もう、随分むかしの話である。

(☆〈葵の間〉の名称は架空のものです)


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