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【グリグリ】
半年に1回の、大腸癌手術後の経過検診にやって来た。5年間続いた経過検診の今日が最終日である。
でもチョッと憂鬱なのだ。なぜならまた内視鏡検査を受けなければならないからだ。内視鏡検査というと聞こえはいいが、要するに肛門から内視鏡カメラを突っ込んで大腸の中を直に診るという検査なのだ。
診るからには、腸の中に〈ウ●コ〉があっては何かと支障を来すので、下剤を飲んで腸内を洗浄しなければならない。
そこで1リッターもの腸内洗浄剤を飲まされることになる。それから約2時間、何度もトイレに通い続けなければならないのだ。
そして排便をする度に看護師さんを呼んでは、〈ウ●コ〉が黄色い透明な水状態になるまでチェックが続くのである。
そうして、やっとのことで看護師さんから合格を貰うのだ。
・・・・・・・
合格を貰うと、今度は更衣室に行ってズボンとパンツを脱ぎ、使い捨ての、お尻側に穴の開いた紙トランクスと、同じく使い捨ての紙ガウンに着替えて、ようやく内視鏡検査が始まる。
案内された検査室でベッドに横になって待っていると、すぐに担当の先生がやって来た。
「担当の■■です。よろしくお願いします」
壁のモニター側に向いて横になっていた僕には声だけが聞こえる。女性の声だ。
「あっ、よろしくお願いします」
首だけ振り向いて挨拶をしながらチラッと顔を見てみたら、なんと40歳にはまだ届いていないような、そんな感じの若い女の先生なのだった。髪を覆うネットとマスクの隙間から見える瞳がなんとも魅力的な美人じゃないか・・
かくして、美人先生の診察が始まった。
「はい、お尻に麻酔薬を塗りますよぉ」
先生は指で肛門に軟膏のようなものを塗りつける。
「はい、カメラを入れますよぉ」
先生は淡々と作業を進めていく。
モニター画面に僕の大腸内の映像が映し出された。
ここから、大腸の一番奥までカメラを入れていかなければならない。先生は右手に持ったホース状のカメラをグリグリグリグリし始めた。
今まで数回の内視鏡検査を経験しているが、今日のグリグリは強烈である。還暦過ぎたジジイの肛門をグリグリしたって面白くもなんともないだろうに、それでもあまりにグリグリの仕方が激しいので僕は思ったのだ。
〈わっ❗️興奮したらどうしよう❗️〉
けれどもそんな心配なんかすぐに吹っ飛んでしまった。
内視鏡検査では腸を膨らませて中を見え易くするためなのか、前に進み易くするためなのか、シュッシュッ!っと腸内にガスを注入する。だから大腸がパンパンに張って苦しくなるのだ。興奮している暇なんてある訳がない。
先生がサラッと言う。
「大丈夫ですか❓️オナラが出そうになったら出してくださいね」
〈出せる訳ないわ❗️ジジイでも恥ずかしいんだぞ・・〉
こうして最初から最後までグリグリグリグリされ続けて20分は経過しただろうか、検査はやっと終了した。
最後に先生が言った。
「肛門から少し出血してますけど、すぐに止まりますから心配いりませんよ」
〈えっ❗️肛門から出血❓️そう言えば、さっき肛門からカメラが出る寸前にモニターに映った赤くなった直腸・・あれは血だったのかぁ・・それにしても血が出る程にグリグリされたのは初めてだなぁ・・ま、美人の先生だから許す❗️〉
・・・・・・・
検査後、グリグリ先生から結果報告があった。
「ポリープもなんにもなくて大丈夫でしたよ。手術で腸を繋いだところも異常ありませんから安心して下さいね」
5年間の大腸癌との付き合いが終った瞬間であった、
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